いまの家庭には「生活」がない——月刊誌『あなたと健康』45年、東城百合子さんを突き動かしたもの

身の闘病体験をきっかけに自然食を中心とする健康運動を立ち上げ、生涯を人々の健康のために尽くした東城百合子さん(令和2年2月22日、94歳で逝去)。『あなたと健康』の発刊や料理教室の開催などの実践にも並々ならぬ情熱を傾けた東城さんへ生前に行ったインタビューをご紹介します。

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いまの人に伝えなきゃいけないことがある

〈東城〉
『あなたと健康』をたった一人で創刊したのが昭和48年でしたから、もう今年(平成30年当時)で45年ですよ。それ以外にも毎週料理教室をやっているし、いまは息子に譲ったけど、少し前まで年に40回ほど講演もやっていました。 

昔の人は、栄養が足りなくて体を壊したものだけど、戦後は経済成長で、皆食べ過ぎてがんになっているでしょう。そもそもいまの人はまともにお料理もしないで、添加物だらけのものを買ってきては食べているから、体をおかしくしているんです。

昔の人が丹精込めてやっていた掃除、洗濯、料理を、戦後は能力のない人がやるものだと言って皆捨てたからそうなったんです。大学を出たって包丁の使い方一つ知らない。うちには、結局それで体を壊して困ってしまった人が多いんですよ。末期がんの人だって、ここへ勉強しに来ます。

だからやっぱり伝えていかなきゃいけない。私はそう思ってこの健康運動を続けているんです。

いま出ている『あなたと健康』は年に一度の特集号で、毎年10万部刷ってタダで配っているんです。

――特集号を、タダで10万部も配布なさるのですか。

読者が応援して配ってくれるんです。宣伝じゃないのね。いまの人にどうしても伝えなきゃいけないことがある。そう思って自分に気合をかけていますよ、いまだに(笑)。

――とても92歳とは思えない意気込みですね。

元気そうに見えるかもしれないけど、実はいま脚が痛いんです。きょうの取材だってどうしよかと思ったけど、とにかく歩いてここまで来ました。

この間料理教室をやってる時に、転んで立てなくなって「助けてっ!」って叫んだら、大騒ぎになっちゃったんです(笑)。東城先生って口が達者でいつも喋りまくっているし、とにかく元気だから、まさかって生徒さんたちが皆驚いてね(笑)。気合をかけてやってるけど、本当は背骨は曲がってるし、骨盤はズレているし、脚に力が入らない。転んだら一人で起きられないから助けられて立ち上がる、とんでもない体なんですよ。

それでも講演になると、立ってお話しするんです。自分のことを忘れて夢中で喋っている時は、脚が痛いのも忘れるし、皆も一所懸命聴いてくれますよ。すると、脚も丈夫になる。

日本人が失った生活を取り戻す

――改めて、いまの家庭はどんなところが問題だとお考えですか。

〈東城〉
生活がないんです。食事にしても、いまは添加物もあるし、チンする機械もあるし、手を抜こうと思えばいくらでも抜けます。けれどもそのために、食べるものを通じて命を見るってことがないでしょう。命とか心とか魂とか、そういう人間の根っこが分からない。だからお互いに挨拶もしない。

子供たちはそれを見て育つから、人を平気で殺すでしょう。この間も、人を刺したらどうなるかと思ったといって、見知らぬ女性を刺した少年がいましたね。生活がないと命が分からなくて、ただの物としか見ない。恐ろしいですよ、いまの日本って。

――確かにおっしゃるとおりです。

日本人は本来、お天道様を仰いで生きてきました。食べ物を捨てたら、お天道様が見てると言って親は愛を込めて叱れたんです。いまはそういう教育がないから、命を見ると言われたって、何のことか分からない。

食事の時に箸を使うのは、お天道様(命の源で太陽も育てた命の原点)が育てた米麦、野菜、魚や海藻など、宇宙のエネルギーを抱き込んだ尊い食物を大切にいただくためです。だからお天道様はただの太陽じゃない。宇宙のすべてを育てた命の本が日本のお天道様なんですよ。

いまの人はそういうことを教わらないで、頭の勉強ばかりやって、理屈ばかり強くなっているから、何が本当か分からないんです。お金儲けに夢中で家のことを放っぽり投げて、食べるものといったらその辺で買ってきたものばかり。

昔の人は旬のものを大切に調理していただいてきたけど、いまはお腹がいっぱいになれば何だっていい。日本はもうすっかり変わってしまったんですよ。

――東城さんには、まだまだ頑張っていただかなければなりませんね。

要するに教育ですよ。教育しなきゃ変わらない。昔は、お天道様が見てるって、親も体で納得して子供に伝えていったんです。いまはそれがない。親が教えないから挨拶だって分からないし、礼儀作法だって分からない。一番大事な命だって分からない。

ですから私は、これまでやってきた健康運動にもっと力を入れて、日本人から失われた生活を取り戻したいと願っているんです。


(本記事は月刊『致知』2018年3月号 連載「生涯現役」より一部抜粋・編集したものです)

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◇東城 百合子

(とうじょう・ゆりこ)
大正14年岩手県生まれ。24歳で重度の肺結核を患うも、玄米自然食によって克服。以来自然食を中心とする健康運動に邁進。昭和48年より月刊誌『あなたと健康』の出版とともに、自然食料理教室、栄養教室、講演活動などに尽力してきた。著書に『家庭でできる自然療法』(あなたと健康社)『お天道さま、ありがとう。』(サンマーク出版)など多数。令和2年逝去。

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