セブン-イレブンのシステムを、わずか半年で創り上げた男のスピード仕事術

若くして日本初のITコンサルティング会社を立ち上げた気鋭のITベンチャーにして、国の規制改革でも手腕を振るうフューチャー会長兼社長の金丸恭文さん。時代をリードする変革者の一人と謳われる金丸さんが、世に出るきっかけとなったエピソードには、ビジネスに求められる“中身とスピード”の重要性が示唆されています。

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31歳のITベンチャー、巨象セブン-イレブンにたった一人で挑む

【牛尾】
金丸さんは、上場する前から大変活躍をされていたけれども、一躍その名が知られるようになったのは、やっぱりセブン-イレブンの情報システムを手掛けた時からでしょう。

【金丸】
あれはロジック・システムズ・インターナショナルに在籍していた31歳の時でしたけれども、あの仕事をやり遂げていなければいまはないし、その前にTKCで16ビットパソコンの開発を手掛けていなければ、あの仕事はできていなかったと思います。いま振り返ってみると、すべての道が繋がっていたことを実感します。

その頃は、せっかく手掛けていた16ビットのパソコンの能力を十分に活用してもらえる企業が少なかったんですが、先進的なシステムを導入しているセブン-イレブンならきっと扱ってもらえると考えました。ただ、セブン-イレブンのシステムは大企業が担っていて、なかなか我われベンチャーには入り込む隙がなかったんです。

【牛尾】
どうやって売り込んでいかれたのですか。

【金丸】
中身とスピードです。キーマンは非常に厳しい名物役員の方で、どこの会社も手を焼いていたんですが、その人の懐に飛び込んでいきましてね。普通は提案書を却下されたらつくり直すのに一週間くらいかかるものですが、私は3時間後に持っていくんです。

【牛尾】
それはすごいですね。

【金丸】
セブン-イレブン本社のビルに入っているファミレスにずっと居座っていて、そこですぐに書き直して「これならどうでしょう?」ってアポも取らずにまた上がっていくんです(笑)。

「また来たのか!」って驚かれましたけど、そうやって先方が漠然と思い描いているものを、私がどんどん具体化していくものだから、ひょっとしたらこいつはできるかもしれないと思ってもらったようでしてね。大手は開発に一年半かかると言うけれども、すぐほしいんだと。半年でできないかと打診されたんです。

最初は無理だと思いましたが、いったん持ち帰って若いチームに「これをやり遂げたら皆ビックリするだろうけど、どうかな?」と聞いてみたんです。新聞にはきっとこんな見出しで報じられて大騒ぎになるぞって、レイアウトまで書いて(笑)。そうしたら、「こうやればできるかもしれませんね」ってアイデアが次々と上がって、それじゃあやってみるかという話になったんです。

おかげで夜も眠れない厳しい日が続きましたが、何とか半年でやり遂げることができたんです。

【牛尾】
運の強い人は、やっぱりそういう時に成功するんですよ。
これが勝負所だというのは、その時は分からないものです。けれども、努力を続けていると、そういうチャンスは必ず訪れるものです。

(本記事は2018年8月号特集「変革する」を一部抜粋・編集したものです。)

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◇金丸恭文(かねまる・やすふみ)
昭和29年大阪府生まれ。53年神戸大学工学部卒業。TKCに入社。60年NTTPCコミュニケーションズ取締役。63年インフォネクス常勤取締役。平成元年フューチャーシステムコンサルティング(現・フューチャー)設立、社長に就任。現在は同社会長兼社長グループCEOの他、経済同友会副代表幹事、内閣府規制改革推進会議議長代理なども務める。

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