日本一熱い男・松岡修造が錦織圭に言い続けたこと

日本を代表するプロテニスプレーヤー・錦織圭選手。長年世界を舞台に大活躍を続けている錦織選手ですが、その活躍の根底にはジュニア時代に受けた松岡修造さんの教えがありました。一人の天才ジュニア選手を世界へ羽ばたかせた言葉とは――。日本一熱い男・松岡さんに、和食の神様・道場六三郎さんとの対談の中で振り返っていただきました。

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世界に行きたいならやるしかない

〈松岡〉
僕はジュニア選手の指導をする際、7秒ルールというのをつくっているんですよ。7秒間の中で叱る。それ以上長い間叱ると、子供たちはその場を凌いでいる感覚になってしまって、もう聞いていない。僕は、根拠や理論に基づかない根性論が嫌いなので、具体的になぜいけなかったのかを伝えたいわけです。だから、7秒で言って、また何か聞いてくれば7秒で返してというのを繰り返すように努力しています。

〈道場〉 
そうやって錦織圭選手をはじめ、世界に通用するテニスプレーヤーを育ててきたわけですね。

〈松岡〉 
いいえ、僕は育ててはいないんですよ。確かに錦織選手は11歳で修造チャレンジのトップジュニアキャンプに参加しましたが、その時、僕は彼にテニスを教えてはいけないと思いました。僕の想像を遥かに超えるプレーをしていたからです。彼は天才だと。

ただ、人前で自分が思ったことをうまくアピールできないという弱い面もありました。英語なんかひと言も喋れない。でも、世界と戦うには海外で年間10か月の間、ホテルを探したり、練習相手を探したり、すべて自分でしないといけません。

自ら行動する。これは日本人が不得意とするところです。僕はそこを変えない限り、テニスはうまくならないと言い続けました。言われる度に彼はよく泣いていましたが、答えは一つ。世界に行きたいんだったらやるしかないよねって。

その後、彼は13歳で渡米する時に僕のところへ来て、「修造さん、僕は一番苦手な表現力を絶対つけて、アメリカで頑張ります」と言ったんです。

そして、錦織選手は18歳で初めて国際選手権に優勝しました。その時の優勝スピーチは堂々たるもので、もう別人のようでした。僕はその優勝スピーチと11歳の時のスピーチをいつもトップジュニアキャンプで選手に見せるんですね。

錦織選手の姿から、努力さえすれば人はこれだけ変わるんだってことを感じてもらえたらなと。

〈道場〉
希望と勇気を与えることができるでしょうね。

(本記事は『致知』2018年7月号特集「人間の花」より一部抜粋・編集したものです)

【道場さんと松岡さんも『致知』を愛読しています】
 ◇道場六三郎さんのメッセージ◇ 
父の想い出の中に、いつも枕元に修養書が有りました。今、私の枕元には『致知』が有ります。『致知』のおかげで安心して日送りが出来ます。私は店の者にも子供にも、『致知』は「人生航路の羅針盤」、また、どこへ流れて居るのか不安な時の「凧の糸」とも伝えています。風の流れ、世の流れ、何処に流れるのか、糸を手操れば足元に帰ります。料理の世界も同じ事。世界で泳ぎ基本に帰る。温故知新。人間の常識本、それが『致知』です。

 ◇松岡修造さんのメッセージ◇
僕と『致知』との出会いは1995年、ウィンブルドンベスト8に入った年だ。『致知』は僕に世界で戦うために必要な“精神”を教えてくれた。そして今『致知』から学んだことを応援という形でたくさんの人達の心に響く言葉として、これからも伝え続けたい。

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◇道場六三郎(みちば・ろくさぶろう)
昭和6年石川県生まれ。25年単身上京し、銀座の日本料理店「くろかべ」で料理人としての第一歩を踏み出す。その後、神戸「六甲花壇」、金沢「白雲楼」でそれぞれ修業を重ね、34年「赤坂常盤家」でチーフとなる。46年銀座「ろくさん亭」を開店。平成5年より放送を開始したフジテレビ「料理の鉄人」では、初代「和の鉄人」として27勝3敗1引き分けの輝かしい成績を収める。12年銀座に「懐食みちば」を開店。17年厚生労働省より卓越技能賞「現代の名工」受賞。19年旭日小綬章受章。著書に『「一本立ちできる男」はここが違う』(新講社)など多数。

◇松岡修造(まつおか・しゅうぞう)
昭和42年東京都生まれ。10歳から本格的にテニスを始め、慶應義塾高等学校2年生の時にテニスの名門校である福岡県の柳川高等学校に編入。その後、単身フロリダ州へ渡り、61年プロに転向。怪我に苦しみながらも、平成4年6月にはシングルス世界ランキング46位(自己最高)に。7年にはウィンブルドンで日本人男子として62年ぶりとなるベスト8に進出。10年現役を卒業。現在はジュニアの育成とテニス界の発展のために力を尽くす一方、スポーツキャスターなど、メディアでも幅広く活躍している。著書に『挫折を愛する』(角川書店)など多数。

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