【北尾吉孝×北康利】 “海賊”と呼ばれた男・出光佐三からいま学ぶべきこと(前編)

出光興産百年企業の礎を築いた、日本が生んだ稀代の実業家・出光佐三。その出光佐三の生き方と経営哲学から何を学ぶかというテーマで、SBIホールディングス社長・北尾吉孝さんと、作家・北康利さんに縦横に語りあっていただきました。

人間尊重の精神を築いた教え

(北) 

出光さんの言葉で感動したのは敗戦後、焼失してしまった社員名簿を新たに作らせた時に「これが僕の財産目録か」とおっしゃったことです。出光さんは「人こそ資本である」と言い続けましたが、要するに人間をつくることが事業であって、石油はその手段でしかないと。

これは出光さんに限りません。武田信玄の「人は城、人は石垣、人は堀」であり、松下幸之助さんも松下電器はどういう会社かと聞かれたら、「松下電器は人をつくる会社です。併せて電気製品もつくっています」と答えなさいとおっしゃった。

(北尾) 

やはりあらゆる組織は人間によって成り立つわけで、とりわけトップの倫理的価値観が全組織に息吹くんですね。

「人間尊重、自己尊重、他人尊重」、この3つが出光さんのバックボーンになっていると思います。人間に対する深い愛情とか敬う心がない経営者は部下から信頼されることも、愛されることもないですよ。

ですから、出光さんは人間尊重の精神を深くお持ちで、おそらくその根本は彼の両親から来ているところが大きいと思います。

出光さんの父親は福岡県の宗像で染め物業を営み、「働け。そして質素にせよ。ぜいたくをするな」というのが口癖だったそうです。しかし、化学染料の台頭で藍玉が売れなくなり、倒産してしまう。それでも一所懸命に働き、僅かな稼ぎの中から彼に学費を仕送りし続けている。そういう親の愛情を一身に受けたことがその後の人生に繋がっていくんだと思います。

(北) 

出光さんは最初に酒井商会という小さな店に丁稚奉公に行きますよね。その主人である酒井賀一郎さんに感謝をして、後年、酒井さんが亡くなってからも、出光の神戸支店へ行く前に必ず酒井商店に寄って、酒井さんの遺影に頭を下げるのが習慣だった。その部屋は謝恩の間と呼ばれていたと。

(北尾) 

受けた恩を忘れない。

(北) 

驚いたのは、家を建てる時に、親の家より高い所には建てず低い所に建てた。お墓の大きさも、先祖の墓が一番大きくて、次が両親の墓で、自分の墓は一番小さい墓にしたこと。親を含め、受けた恩を忘れない。これは優秀な人に共通した生き方のベースです。

〇後編「民族的特性を見つめなおし、新しい日本を築く」は6月19日午後12時に公開します。ぜしご覧ください。

(本記事は月刊『致知』2014年3月号「自分の城は自分で守る」の記事より一部抜粋・編集したものです。月刊『致知』には仕事力・人間力を高めるヒントが満載です!詳細はこちらから

★北尾吉孝さんの『致知』推薦コメント★

我われは「人間いかに生くべきか」「人間いかに死すべきか」という問題に必ず直面します。これらの問題の答えを探し続け、自己の修養に努める時、『致知』は多くの先哲の知恵を提供してくれる稀有な雑誌であります。

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◇北尾吉孝(きたお・よしたか)

昭和26年兵庫県生まれ。49年慶應義塾大学経済学部卒業、野村證券入社。53年英国ケンブリッジ大学経済学部卒業。平成4年野村證券事業法人三部長。7年ソフトバンク入社、常務取締役。11年ソフトバンク・インベストメント(現・SBIホールディングス)社長。著書は『何のために働くのか』『森信三に学ぶ人間力』(ともに致知出版社)など多数。最新刊に『出光佐三の日本人にかえれ』(あさ出版)がある。

◇北康利(きた・やすとし)

昭和35年愛知県生まれ。東京大学法学部卒業後、富士銀行入行。富士証券投資戦略部長、みずほ証券業務企画部長等を歴任。平成20年みずほ証券を退職し、本格的に作家活動に入る。『白洲次郎 占領を背負った男』(講談社)で第14回山本七平賞受賞。著書は『日本を創った男たち』(致知出版社)『西郷隆盛 命もいらず名もいらず』(ワック)など多数。最新刊に『叛骨の宰相 岸信介』(中経出版)がある。

 

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