齋藤孝の“頭の回転速度がUPする速音読”

明治大学教授・齋藤孝さんが長年にわたる音読指導の中で見出した「速音読(そくおんどく」。高齢者の認知症予防などに効果が期待できるとして話題を呼んだ第1弾、第2弾に続いて刊行された『国語の力がグングン伸びる1分間速音読ドリル』が、小学校の朝礼で全クラスに導入されるなど、反響を呼んでいる。脳トレの第一人者・川島隆太さんもその効果を認める「速音読」とは、どのような音読法なのだろうか?

速音読で、頭がスッキリし、元気になる

「速音読」とは、私が体験の中から見出した音読法で、頭の回転を速くしたり、認知症防止や心身を健康にしたいと願う方には特にお勧めです。

16年前に『声に出して読みたい日本語』を発刊して以来、私は、音読の素晴らしさを一人でも多くの方にご理解いただきたいと考え、普及に尽力してきました。

その中で多くの方々からいただくのが、「速めに読むほうが気持ちがいい」という感想で、これは長年音読の実践を続けてきた私自身の実感でもあります。

講演会などでも、参加者の皆さんと一緒に名文を速い速度でテンポよく読むと、会場はたちまち熱気に包まれ、やり終えた後はどなたも異口同音に、「気持ちよかった」「スッキリした」「元気になった」と清々しい笑顔でおっしゃいます。

速い速度でテンポよく音読すると、一息で読む文章の量がより多くなり、自ずと息が長く、強くなります。これは、私が長年研究してきた呼吸法の観点からも理に適っています。

呼吸法の一つに丹田呼吸法というものがあります。臍から指3本分くらい下の奥にある丹田を意識しながら、吐く息を主体に深い呼吸を繰り返すもので、お釈迦様が悟りを開いた時の呼吸法ともいわれています。

イライラしたり、怒りがこみ上げている時は、過呼吸気味になって交感神経が優位になり、心身が興奮状態になっています。その時に、息をフーッと長く緩く吐く丹田呼吸法を繰り返すと、副交感神経が優位になって心が落ち着き、冷静になって我を取り戻せます。速音読は、こうした心身によい効果をもたらす優れた呼吸法を、意識しなくても実践できるのです。

科学的にも実証されている速音読の効果

速音読の効果は、科学的にも実証されています。東北大学の川島隆太先生は、音読が脳の機能を高め、認知症の予防と改善に「劇薬」ともいえるほど効果があることを明らかにされています。

そして、速く音読することで頭の回転速度が上がり、毎日実践することで脳がつくり変えられるともおっしゃっているのです。

速音読の最中は、書かれている文章を口から発声しながら、目は少し先の文章を追わなければなりません。さらに棒読みにならないよう、抑揚をつけてリズミカルに読むために、書かれている内容を頭の中で絵としてイメージしなくてはなりません。

いくつもの作業を同時に行い、頭はフル回転することになります。これを長い呼吸とともに行うため、頭は鋭く働きながらも体はゆったりと落ち着き、心身がバランスよく整えられた状態になるのです。

武道の達人は、呼吸を整え臍下丹田に気を静めることで、体はリラックスしているけれども、心は集中し、気が漲っている状態、よい意味での自然体で相手と向き合います。

速音読は、こうした武道の達人と同じような状態を意図的につくり出すことができます。次々と飛び込んでくる文字を、ミスなく速い速度で読み上げていくことは、斬りかかってくる大勢の敵を次々となぎ倒していくチャンバラ劇のようで実に壮快です。速音読を実践することは、意識を油断なく活性化させ続けることでもあるのです。

(※本記事は『致知』2017年4月号の記事の一部を抜粋したものです)

◇齋藤孝(さいとう・たかし)

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昭和35年静岡県生まれ。東京大学法学部卒業。同大学院教育学研究科博士課程を経て、現在明治大学文学部教授。著書に『子どもと声に出して読みたい「実語教」』『楽しみながら1分で脳を鍛える速音読』『楽しみながら日本人の教養が身につく速音読』『国語の力がグングン伸びる1分間速音読ドリル』(いずれも致知出版社)などがある。

 

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