伝説の教師・森信三の名言に学ぶ「逆境の処し方」

国民教育の師父にして、20世紀最後の哲人といわれる森信三先生。生前、マスコミには滅多に姿を見せなかった在野の哲人でありながら、全国各地の学校を行脚し、また、数々の著作の執筆を通じて、「人間いかに生きるべきか」を説き続けました。代表的著作である『修身教授録』は教育界のみならず、SBIホールディングス社長の北尾吉孝氏、小宮コンサルタンツ社長の小宮一慶氏など、愛読書として挙げる経営者やビジネスマンも数知れません。森信三先生とは、一体いかなる人生を辿った人物なのか――。生き方に見える人生訓を学びます。

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逆境は神の恩寵的試錬なり

森信三は明治29(1896)年9月23日、愛知県知多郡の端山家に生まれました。端山家は地元の名家で、祖父の端山忠左衛門は第1回国会議員になった名士でした。しかし、父親の代に家運が傾き始め、両親の離婚により、3人兄弟の末っ子の信三は数え2歳にして、貧しい小作農であった森家に養子に出されました。

生家の端山家と養家の森家の間には縁もゆかりもありませんでしたが、養父母は実直な方たちで、信三を非常に大事に育ててくれました。そんな養父母に巡り合えたことは幸いでした。信三は終生、養父母に感謝し続けて、その話をする時には涙を流すほどでした。

とはいえ森家は経済的に貧しく、そのため小学校一の秀才でありながら信三は中学進学を断念し、学費が免除される師範学校へ進むことになりました。愛知第一師範に入学し、卒業後は三河の横須賀尋常小学校へ赴任。その後、周囲のすすめもあって広島高等師範に進学し、さらに京都大学哲学科に入学しますが、その時すでに信三は28歳になっていました。

大学院に進み、卒業したのが36歳の時。成績は抜群でしたが、京都には就職先が見つからず、大阪の天王寺師範に専任教師としての職を得ました。ここで13年の時を過ごした後、昭和14年に満洲の建国大学に赴任しますが、日本は昭和20年に敗戦、命からがら帰国します。

戦後は教えを乞う人たちの求めに応じて全国津々浦々に足を運び、旅の日々を送ります。同時に執筆感動に勤しみ、雑誌の発行も始めました。しかしこれによって結果的に多額の借金を抱え込み、ついには家屋敷を手放して返済に充てることになりました。

森信三先生のご子息である森迪彦さんは、月刊『致知』2018年6月号の中でこのように語っています。

「父は数々の逆境を乗り越える中で人間としての器量を磨き高めていきました。〝逆境は神の恩寵的試錬なり〟という言葉は父の体験を通じて生まれたものです」

代表的名著『修身教授録』とは

どこかで阻まれないと、その人の真の力量は出ない

その後、篠山農大の英語講師を経て、58歳の時に神戸大学教育学部の教授に就任。65歳で大学を退任した後、76歳の時に、42歳の長男を亡くし、尼崎で独居自炊生活を始めます。

そこから86歳で脳血栓により倒れ右半身不随となるまで、教育行脚と執筆に明け暮れ、『全一学』5部作の執筆、『全集続篇』8巻の刊行に没頭しました。その後も、97歳で亡くなられるまで、ハガキを通じて志を同じくする全国の人たちを励まし続けたのです。

迪彦さんは言います。

「どこからそういうエネルギーが生まれるのかと考えてみますと、父が〝人間というものは、どうも何処かで阻まれないと、その人の真の力量は出ないもののようです〟と言っているように、やはり長男との死別によってどん底に落ち、堰き止められたことが大きな原動力になったのでしょう」

愛する子供が自分よりも先に他界してしまったり、生死を彷徨うような大病を患ったりすると、普通の人であれば、生きる気力を失ってしまうでしょう。

しかし、森信三先生は「人生二度なし」という信条のもと、一度きりの人生の中でいかに「いま、ここ」を大切にするかを追求し続けたことで、逆境をバネにしてさらに燃え上がるような人生を歩むことができたのです。

森信三先生の生涯は逆境の連続でした。しかし、これは裏を返せば、身を以て様々な逆境を体験してきたからこそ、その言葉には独特の余韻があり、読む人の心に深く沁み入るのだと思います。

私たちも森信三先生の生き方に学び、逆境を飛躍の糧にしていきたいものです。


(本記事は月刊『致知』2018年6月号 特集「父と子」に掲載の鼎談「父が照らした光」をもとに再編集したものです)

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