チアダンス全米5連覇に導いたJETS顧問・五十嵐裕子さんの指導力

 

チアダンスに魅せられ、全くの未経験ながら全米チアダンス選手権大会優勝という目標を掲げ、新たに赴任した福井県立福井商業高等学校のバトン部をチアリーダー部へと変革した体育教師、五十嵐裕子さん。その奇跡的な歩みは『チア☆ダン』という映画にもなり、大きな反響を呼びました。どんな挫折に屈することなく「夢は叶う」「人は変われる」という信念を貫いてこられた歩みをお話しいただきました。

自分もドラマや映画に出てくるような大人になりたい

もともとは教師を目指されていた五十嵐さん。それもきっかけとなったのは、当時流行っていたテレビ番組でした。

「(私が教師を志したのは)『三年B組金八先生』とか『スクール・ウォーズ』といったテレビドラマの影響です。

私は物心ついた頃から、大人たちの影響で子供たちが成長していく話がとても好きだったんです。それもただ好きというだけでなく、自分もドラマや映画に出てくるような大人になれたらいいな、という思いもありました。『夢は叶う』『人は変われる』というのが私の信念でした」

ところが、新米教師として赴任した先で、五十嵐さんは打ちのめされます。

「行儀が悪くて、ルールも全然守らない。中には犯罪を行うような生徒もいて、そういった姿を見ていると、『あなたたちの人生はもう墜落ですよ』としか思えませんでした。

若さもあったと思います。人として未熟だったことに加えて、教育というものに関して考え方が狭過ぎました。そのせいで大勢の生徒が傷ついたと思います。自分も傷つきましたけど、生徒指導において自分が正しいと思ったことは、失敗してでもやらなければ気が済まなかったんです。そのくせそれが重荷になって、教師である自分まで不登校になりかけました。

この角を曲がらないと学校に行けないのに、どうしても曲がることができない。そんなことが何回かあって、実際に学校を休んだこともありました」

孤軍奮闘すること11年、遂に五十嵐さんは異動願を出して、いまいる環境から変えようと決意されたのでした。

誰が反対しても自分はやる、という覚悟

五十嵐さんとチアダンスとの出合いは、次の赴任先が決まるまでのごくわずかな期間にありました。

「異動願を出したのが2004年1月のことで、赴任先が決まったのはその翌月でした。ですから、その辞令待ちの時でしたね、たまたまつけたテレビを観て、私が衝撃を受けたのは。

神奈川県立厚木高等学校ダンスドリル部IMPISHが、全米チアダンス選手権大会で日本人初の優勝を決めたことを取り上げたニュースでした。

私が衝撃を受けたのは、そこに映し出された生徒たちの姿でした。というのも、そこには私が見てきたような生徒とは真逆で、爽やかで活気に溢れ、全身からエネルギーが満ち溢れているのが伝わってきたんです。こんな素晴らしい女子高校生が世の中にはいるんだと。それも県立高校に。その瞬間でしたね、次の赴任先でチアダンスをやると決めたのは(笑)」

チアダンスの経験もなければ、そもそもチアダンスを観たのも、そのテレビが初めてだったという五十嵐さん。そこから全米チアダンス選手権大会で5連覇を果たすまでの道のりは険しいものでしたが、どんな時でもご自身の支えになったものがあったといいます。

「『天使にラブ・ソングを2』という映画があるんですけど、主演女優のウーピー扮するデロリスが、コンクールで優勝を決めてトロフィーを高々と掲げるラストシーンがあるんですよ。私、毎週のようにその場面を観ては、いつか生徒たちとアメリカでトロフィーを掴むんだっていうイメージトレーニングをしていました。

しかもそれを繰り返していくうちにどんどんイメージが膨らんで、生徒たちはもちろん、地域や福井県の人たちみんなが喜んでくれる姿が目に浮かぶようにまでなりました。そうなると、これはもう誰が反対しても、世のため人のためにやる価値は絶対にあると思うようになりましたね」

「夢は叶う」「人は変われる」という信念を持ち続けることで、夢を現実のものへと引き寄せた五十嵐さんの歩みは、私たちに夢と希望を与えてくれます。

(本記事は『致知』2018年8月号 特集「変革する」より一部抜粋したものです。最新号の詳細はこちら

◇五十嵐 裕子(いがらし・ゆうこ)

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昭和43年福井県生まれ。福井大学卒業後、教職の道に進む。16年福井県立福井商業高等学校に赴任。18年チアリーダー部「JETS」を立ち上げる。21年フロリダ開催の全米チアダンス選手権大会のチームパフォーマンス部門で初優勝。同大会の優勝は通算7回で、25年から5連覇。30年ラスベガス開催の全米チアダンス選手権大会のバラエティー部門で初優勝。全日本チアダンス選手権大会のチアダンス部門(高校生編成)の優勝回数は6回。

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