2016年06月01日
女性初のエベレスト登頂者で、
世界初の七大大陸最高峰登頂者でもある
田部井淳子さん。
大病を克服され、
76歳のいまも登山家として活躍中です。
その田部井さんの原点となるお話を
紹介します。
────────[今日の注目の人]───
★平常心で日々を生ききる★
田部井 淳子(登山家)
※『致知』2016年7月号【最新号】
※連載「致知随想」
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七十六歳になったいまでも
忘れられない出来事があります。
それは小学校四年生の夏休み、
担任の先生に連れられて
栃木県の那須に山登りに
行ったことです。
生まれ育った福島県の三春町から
出たことのなかった私は、
山には緑が覆い茂っているものだと
思っていました。
しかしそこは
火山で木も草もなく、
川の水は高温でした。
辺り一面に硫黄の臭いが漂い、
山頂付近は夏なのに寒い。
こんな場所があるのかと
強い衝撃を受けたのです。
体が弱く全く運動ができない私に、
「山登りはゆっくりでいいんだよ」
と先生が声を掛けてくださったのも
印象に残っています。
登山は競争ではなく、
どんなに辛くても自分が登らない限り
頂上には立てないという
明快なルールにとても納得しました。
初めて登頂した時に見た景色と
達成感は鮮明に覚えています。
学校で机に座っているだけでは
学べなかった、
自分の足で歩き、
目で見て肌で感じたその経験は
とても強烈で、
私の登山家としての原点となりました。
※田部井さんの山への憬れは膨らみ、
就職した年には山岳会に入り、
山登りに没頭していかれます。
田部井さんはある時、
南極越冬隊隊長・
西堀栄三郎さんと出会い
一つの言葉をプレゼントされます。
その言葉がその後の田部井さんの
登山人生を支えることになるのです。