あるスポーツ選手と
そのお母さんの実話。
そこには、人間の生きる意味が
シンプルに描かれています。
「人間というものは、
何か人のために
尽くすことによって、
大いなる力を得ていく
ものなのでしょう」
円覚寺館長・横田南嶺さんの
言葉がすっと入ってきます。
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思いやりの心が人を生かす
※『致知』2016年3月号P18
? ? 特集「願いに生きる」
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とりわけ印象深いのが、
盛岡で農業をされている
あるご婦人から毎年届く新米です。
ご婦人とは5、6年前、
円覚寺の坐禅会に参加して
くださったのがご縁でした。
日帰りの会ならともかく、
泊まり込みの坐禅会となると
なかなか修行も厳しく、
女性の参加は珍しいので
何かご事情でもあるのかと思い、
ある時お話をお聞きしたのです。
ご婦人がおっしゃるには、
あるスポーツの選手だった息子さんが
大きな大会で事故を起こして首の骨を折り、
首から下がほとんど動かない
状態になってしまわれた。
絶望した息子さんは、
電動車イスで病院の屋上まで上がり、
飛び降り自殺を図ろうとしたけれども、
体が思うように動かず思い止まったのだと。
しかし、お話を聞いていて驚きました。
その息子さんはそこから大学に復帰し、
さらに一人暮らしを始めたというのです。
ご婦人は
?
「私はあの子が転んでも
絶対に起こしてあげないんです」
とおっしゃいました。
体が不自由な子が転べば、
すぐにでも手を差し伸べたいのが
親というものでしょう。
しかし、ご婦人は自分が先に亡くなった時、
息子さんが一人で生きていかなくて
はいけないことを分かっておられたのです。
息子さんにもその思いが伝わったのか、
?
「自分は母のために生きるんだ。
自分が暗くなれば、
お母さんがいつまでも
辛い思いをしてしまう。
だから、頑張って生きるんだ」。
そう言っていたそうです。
その言葉のとおり、彼は一所懸命
勉強して運転免許を取得し、
いま地方公務員として
立派に自立しておられます。
ご婦人は私にこう言われました。
?
「管長さん、私はいろいろ
苦しんで悲しんで、
泣くだけ泣きました。
でも私が子供にできる
ことはたった一つ。
?
一日一日を明るく生きること。
それだけです。
?
もし私が辛い顔をしていたら、
息子は母が悲しむのは
自分のせいだと自分を責めてしまう。
だからこれからも明るく生きていくの」
もし、お二人が自分のこと
ばかりを考えていたら心は
折れていたかもしれません。
しかし、息子さんは母のために生きよう、
ご婦人は息子に辛い思いを
させたくないために明るく生きようと、
それぞれに思いを貫いて生きておられます。
人間というものは、
何か人のために尽くすことによって、
大いなる力を得ていくものなのでしょう。
私は菩提心の発現ともいえる、
この母子の姿からそのことを
教わる思いでした。
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『致知』3月号のテーマは
「願いに生きる」
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「信念を抱いて願うことは必ず実現する」
渡邊直人(王将フードサービス社長)
福地茂雄(アサヒビール社友)
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しかし、その後も同社の経営は揺らぐことなく、
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渡邊氏の取り組みと、
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