2026年05月07日
~本記事は月刊誌『致知』2026年6月号 特集「人間を磨く」に掲載のインタビュー(志を得た時、子供たちの命は輝く)の取材手記です~
大人顔負けの木鶏会
将来、日本を背負って立つ子供たちのためのリーダー育成塾が静岡県菊川市にあると聞いて訪ねました。希動学園と名づけられたこの塾は2013年に創設。現在、地元・菊川市の小学生を中心に小中学生30名が通っています。
穏やかな陽気に包まれたこの日、最寄りの菊川駅に到着すると、出迎えてくれたのは三島から新幹線を使って通ってくるという小学4年生の男児。同学園代表の植松崇さんの車で駅から学園に向かい、塾に入った途端子供たちは皆元気な声で歓迎してくれました。
創設者である植松友乃さん(崇さん、友乃さんはご夫婦です)のインタビュー取材を前に、塾で行われている教育の様子を見学させていただきました。我々取材班の他にも、地域の方数人が参加されており、子供たちは輪読やダンスを取り入れた独自の「朝礼」を披露した後、小グループに分かれて『致知』を使った勉強会(木鶏会)を行いました。
木鶏会のテキストとして用いたのは『致知』2026年2月号「先達に学ぶ」。数学者の藤原正彦さんと京都大学名誉教授の中西輝政さんの対談「明治を創ったリーダーたち~日本甦りへの道~」について学びました。対談記事を一人一段落ずつ読み上げていくのですが、驚いたのは小学生の塾生たちがルビ(読み仮名)も振らずにスラスラと読むことでした。子供たちが手にする『致知』に目を向けると、そこにはいくつもマーカーが引いてあります。さらに驚いたのは、塾生たちは読んだ記事のポイントについて、ごく当たり前のように語り合っていたことです。
リーダーの小学生が『荘子』の故事をもとに木鶏のいわれを説明したり、この対談記事に関連し、小学校の外国語の授業数の推移についてパワーポイントを用いて解説する姿も衝撃的でした。
この木鶏会の取り組みについて創設者の植松さんは次のように語られます。
(木鶏会の)進め方としては、リーダーが木鶏会の意義を説明した後、『致知』の記事を、一人一段落ずつ読んでいきます。入塾間もない園児、低学年の子はまだ読めませんので、同じ班のメンバーの動きを見ながら文章を指でなぞります。
続くグループワークでは分からない言葉に丸をつけ、参加された地域の皆さんに教わります。電子機器ではなく「生身の大人に意味を教わる」とても贅沢な時間です。
小学2年生の子が「祖国って何?」と訊き、大人が「あなたの祖国はどこ?」と訊き返す。このような温かな会話のやり取りは一生覚えているものです。その後、心に残る言葉に波線を引き、「今日からの実践」を各班でまとめて発表し合う。ここまでが木鶏会の流れです。
植松さんはさらに言葉を続けます。
当塾では小学校卒業までに人生で必要な読み・書きを習得してもらうため、国語は中学2年生レベル、漢字検定は準2級を目指して学習しています。
入塾して3年も経つと新聞や『致知』を素読できるようになります。幼稚園の頃からの塾生は小学2年生ともなれば、「被疑者の身柄が検察官に送られ……」などと普通に読めるようになるわけです。
リーダー育成塾をなぜ立ち上げたのか
植松さんは、静岡のテレビ局で営業・番組制作の仕事をした後、産業カウンセラー、キャリアカウンセラーなどのキャリアを積み、社員教育やリーダー研修などに数多く携わってこられました。その実績を認められ、2011年、37歳の時、経営難に陥った菊川南陵高校に外部登用の校長として赴任し、見事に経営を立て直されるのです。
そんな植松さんにとって、子供たちのためのリーダー育成塾を立ち上げるのは、長年の夢でした。植松さんは20年前、栃木県にある日本最古の学校・足利学校を訪れた時、大きな衝撃を受けます。600年前の子供たちは領主・上杉憲実が寄進した教科書を書写して自分の教科書をつくり、自らの学びや講義で教わった解釈を書き込んでいた事実を知ったからです。
「年齢・学年に関係なく学び合ったという足利学校の志操に感銘を受け、自分でもこういう塾を立ち上げたいと強く思った」と植松さんは話されます。
ご主人の崇さんと共に温め続けてきた小中学生を対象としたリーダー育成塾・希動学園を設立されたのは2013年のことでした。
ユニークな希動学園の教育
植松さんには一貫した信念があります。それは良書に触れることがリーダーには欠かせない人間形成のベースであるということです。そのため同学園では読み書きの徹底に力を入れています。その結果、語彙力が上がって学校の教科書が簡単に理解できるようになり、成績もグンと伸びるといいます。
成績向上に加えて注目すべき成果として次のようなことが挙げられます。
・ 小学4年生2人が秘書検定3級に史上最年少で合格
・ 漫才コンクールM―1グランプリで塾生がこれまでに3回入賞
・ 静岡県倫理法人会主催の朝礼コンテストでは塾として会長賞(優勝)受賞
他にも、不登校児だった女子が中学1年生で入塾し、小学2年生の漢字から学び直した結果、目覚ましい成長を遂げ、この春見事に県立高校に合格。将来教師になって不登校児を減らすという志に向かって頑張っている感動的な事例も誌面で紹介されています。
希動学園の取材を通して見聞したことは、目を見張るものばかりでしたが、植松さんの次の言葉には大いに肯かされるものがあります。
「人間の能力は無限大なので、あまり周囲の大人が限界を決めないほうがいい。私はこのリーダー塾を通して、世の中の先入観を打ち破り、子供たちがどれだけの可能性を秘めているかを世の中に示したいんです」
植松さんのこのインタビュー記事には、以下の内容が紹介されています。
◇大人顔負けの読解力、プレゼン力
◇経営難に陥った高校を立て直す
◇秘書検定三級に合格した小学生
◇大人は子供たちの限界を決めてはならない
希動学園の驚くべき教育については、インタビュー記事に詳述されています。その内容は現在の学校教育のあり方に一石を投じるものでもあります。ぜひご一読ください。
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