いなばのしろうさぎ

注目の書籍

本日は、読み継がれる致知出版社の名著
『新釈古事記伝』全7巻のご紹介です。

* *

敗戦とともに長らく絶版となっていた
阿部國治先生の『古事記』に関する著作。

阿部先生は、教壇で、
「『古事記』と『万葉集』の解釈については、
日本中の誰にも引けを取らない自信がある」
と教え子たちに語ったと言います。

その遺志を継ぎ、門下の栗山要氏が平成11年より編纂。
10年もの歳月をかけて私費出版されたのが
『新釈古事記伝』全7巻です。
栗山氏の記事は、『致知』2012年5月号で紹介され、
大変大きな反響を呼びました。

その後、『新釈古事記伝』を購入したいとの
お問い合わせをたくさんの方からいただきましたが、
発行元に在庫が少なく、実際に手にすることができたのは
ごく僅かの方だけだったようです。

皆様からのたくさんのご要望をいただき、
2年の月日を経て、2014年4月に復刻されました。

『新釈古事記伝』とは、
一体どのような内容なのでしょうか?

第1章「稲羽の白兎(いなばのしろうさぎ)」の一部を
お届けします。

この美しい日本語をぜひ堪能してください。

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おためし読み『新釈古事記伝』

「稲羽の白兎(いなばのしろうさぎ)」

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隠岐の島に、兎が一匹生まれました。
これを稲羽の白兎と申します。

この兎さんは、生まれてから、だんだんと大きくなりました。
そして、ある日、海岸に出て見て、海の広いのに驚きました。
それから、ときおり海岸に出ては、
海辺の気持ちよさを味わっておりました。

ところが、また、ある日の朝、海岸にまいりました。
その日は、雲もなく風もない日本晴れのよい天気でした。

兎さんはたいへんよい気持ちで、
あちこち歩きまわっておりましたが、

ふと海上はるかに東のほうを見てびっくりしました。

兎さんは生まれて初めて、そこに本州を見たのです。

高い山も、大きな川も、広い野原もありそうな本州を見て、

兎さんは、

〈自分たちがいるこの島は、狭い狭い土地で、
どこに行っても兎同士ぶつかってしまう。
せっかく兎に生まれても、じゅうぶんに飛んだり跳ねたり
することもできないような小さな島だ。

できることなら、なんとかして、あの大きな島に渡っていって、
思うざま飛んだり跳ねたりしたい〉

と思いました。

しかし、今日のように飛行機はないし、船はないし、
泳いで渡ることもできませんので、兎さんは胸のうちに
希望の心のおどるにまかせて、じっと考えておりました。

そのとき、ワニが一匹泳いできました。
ワニも天気のよい日なので、
気持ちよく泳ぎまわっていたのでしょう。

兎さんはそれを見て

「ワニさん、ワニさん、
私の向こうの陸地に連れて行ってくれませんか」

と、頼もうと思いましたが、じっと何かを考えて、
目を白黒させてから、ワニに話しかけました。

「ワニさん、ワニさん、よいお天気ですね。散歩ですか」

ワニは答えました。

「よいお天気ですね。あなたも散歩ですか」

これで、両方の挨拶がすみました。
そのとき、兎さんは言いました。

「ときに、ワニさん。
君が住んでいる海というところは、ずいぶん広いようですが、
その広いところにいる君の一族は、さぞたくさんでしょうね」

すると、ワニはたいそう得意になって答えました。

「はい、そうです。

君は小さい身体で、小さい島にいるから、
何も知らないでしょうが、
僕の住んでいるところは日本海というのですが、
この向こうには太平洋や大西洋というところもあるし、
海はとても広いものです。

だから、その海にいる僕たちワニの仲間は、
ずいぶん多いですよ」

と、こんなことを言ったのでしょう。

そうすると、兎さんはもっともらしい顔をして

「そうでしょうね。
しかし、あなた方、ワニ仲間は、
一年に何度、子どもを生みますか」

ワニは

「よく知らないが、一度らしいね」

と答えました。
すると、兎さんは

「そうですか。
僕の仲間は一年に三~四回子どもを生むことができます。

そうすると、ワニさん、あなたは先刻、
ワニ仲間は広い海に住んでいるから、
とても多そうなことを言ったけれども、
子どもを生む回数から考えると、小さな身体で、
小さい島にいる私たち兎仲間のほうが、
ずっと多いと思いますがね。

あなたは知らないでしょうが、
この島にはどこに行っても兎仲間で満ち満ちておりますよ」

と、こんなふうに言ったものとみえます。

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◆ 『新釈古事記伝』をおすすめします ◆
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「日本人にとって『古事記』は
外国人の『聖書』にもあたるもの」――

『古事記』は
大和民族のやまとごころそのものを表しています。

阿部國治先生の解釈からは、
目の前の出来事の善悪、失敗 成功、嫉妬、憎しみ、
男女愛、罪、罰だけではない
「罪を憎んでもひとを憎まず」のような、
本来の魂のままに清く、明るく、邪のない心で
生きる私達が建国以来共有してきた
「やまとごころ」を確認させられました。

それを誰にでも分かるように読み解き
「あ~そうだったのか」とうなずかせ、
私達の目をいま一度洗ってくださったのが本書です。

7年前から皆さんと『新釈古事記伝』の読書会を始め、
現在は全国30か所にまで広がっています。

 

アイテラス社長 今野華都子様

一年間、仲間たちと全7巻の読書会をしていました。

一読し、なんて美しい日本語だろうと思いました。
私は国文科でしたが、こんな解釈の
『古事記』に出合ったことがありません。

単なる直訳ではなく、そこに込められた
“行間”を表現してくださっているからでしょう。
戦前教育の美しさの一片を見るような、
それに触れるような思いがします。
毎月の読書会は、私にとって豊饒な、至福のひとときでした。

少し前の女性がお嫁に行くときには
『源氏物語』全巻を持って行ったといわれるように、
あるいは、少し前の家庭には百科事典が置かれていたように、
この全7巻は、一家に一式ずつあるといいと思う位の、
日本の財産のようなものに思えてなりません。

 

コア・クリエーションズ代表
大江亞紀香様

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永久保存版。幻の名著

『新釈古事記伝』全7巻

 

阿部國治(著)/ 栗山要(編纂)

定価=本体12,000円+税

https://www.chichi.co.jp/special/yamatonokokoro/