リーダーは“狂”になれ! サントリーHD社長・新浪剛史の原点

苦境にあったローソンの経営を立て直し、11期連続増収増益を実現、現在はサントリーで挑戦を続ける新浪剛史さん。日本を代表するプロ経営者である新浪さんに、リーダーとしての基礎を培った貴重な原点を語っていただきました。対談のお相手は、ウシオ電機会長(掲載当時)・牛尾治朗さんです。

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逃げない、嘘を言わない、ニュースをつくらない

〈牛尾〉
きょうはこうして親しくお話をさせていただいていますが、新浪さんとのお付き合いも、もう随分になりますね。

〈新浪〉
私がローソンの社長になってすぐに、牛尾さんを囲む勉強会に入れていただいてからですから、もう10年以上になります。

〈牛尾〉
そうそう。あなたは現場主義だから、当時から現場をよく回って、サンドイッチやおにぎりの開発を先頭に立って指揮されていたのを覚えています。あの時分から本当によく働いていましたね。

〈新浪〉
会社が潰れそうと言ってもよい状況でしたから、もうやるしかないって肚を括っていました。社長になったのがまだ43歳でしたから、もし失敗しても自分の人生が終わるわけじゃないと。

当然土日はありませんでしたし、全国を回ってスーパーバイザーの人たちからいろんな意見を聞いていましたから、毎晩3時間くらいしか寝ていませんでした。若かったからできたんじゃないでしょうか。いま同じことはたぶんできないですね。

〈牛尾〉
ローソンは初めダイエーのグループでしたね。

〈新浪〉
はい。ダイエーが経営不振に陥ったために、三菱商事が引き継いで私が社長になったんです。

経営がとても混乱していた時期でしたので、最初からトラブルばかりでした。社長に就任した直後に、情報セキュリティや品質問題など、もう次々と問題が起こり、その対応に追われる毎日でした。

〈牛尾〉
大変な船出でしたね。落ち着くまでどのくらいかかりましたか。

〈新浪〉
3年くらいでしょうか。

その時重要だと思ったのは、逃げないこと、嘘を言わないこと、そしてニュースをつくらないことでした。

何があってもトップである自分が決断し、分かっていることは必ずオープンにしました。噓を言って隠していると、見つかった時にニュースになりますから、それは絶対に避けなければなりません。そして分からないことは分からないと、正直に言わないといけない。

そのことでたとえ批判されたとしても、トップのそういう真摯な後ろ姿を社員は誇りに思ってくれる、このリーダーについて行こうと思ってくれるということを学びました。

〈牛尾〉
まさしく堅忍不抜の精神で乗り切った3年間でしたね。

リーダーはブレてはならない

〈新浪〉
そういう逆境を乗り越える力は、その前に経営していた給食会社で養われたものだと思います。私のすべての原点はこの給食会社の時代にあると思っているんです。

〈牛尾〉
確か、病院給食の会社を立ち上げられたのでしたね。それはおいくつの時でした?

〈新浪〉
31歳でした。大学を出て入社した三菱商事で、会社をつくりたいと希望して、フランスの会社とのジョイント・ベンチャーを立ち上げたんです。

あの時も随分苦労しました。まずはコックさんたちとの戦いに直面したんです。三菱商事の時のように横文字ばかり喋っていても全然伝わらなくて、みんなにそっぽを向かれてしまうんです。

自分に共鳴をしてもらって一緒に動いてもらうには、いかに分かりやすく、相手の立場に立って肚に落ちるように喋るか、言葉の力というものの重要性を思い知らされました。

結局リーダーというのは、いかに単純でも、同じことを、信念を持って言い続けることができるかだと思うんです。

極端な話、〝狂〟になるくらい、自分の信じることを繰り返すこと。リーダーがブレないというのは、いつ何時も同じことを言い続けることだと学びました。これは今後、海外で事業を展開していく上でもおそらく一緒だろうと思うんです。

〈牛尾〉
そのとおりです。

〈新浪〉
おかげさまで20人くらいで立ち上げたその給食会社は、10億円だった売上高が6年経って100億円くらいになりました。

〔中略〕

きょうのテーマは「堅忍不抜」だそうですが、これは辛いけれどもそれを我慢して耐えるということ。いまは耐えても耐えても、簡単に出口は見えないように思われる時代かもしれません。

しかし我慢して耐え続けているうちに必ず光は見えてくることを、この言葉は示唆していると思います。ですから、ここで逃げてはダメなんです。

〈新浪〉
悩まない人は成長しないということでしょうね。ですから物事をイージーに考える人はリーダーの役割は果たせないと思います。そして、最終的にはやっぱり徳がなければならない。リーダーは徳をどれだけ積むかが大事だと私は思います。

そのためにはおそらく、難しい問題から逃げずに考え抜くこと、悩み抜かなければならないのではないでしょうか。まさしく堅忍不抜の精神が必要で、イージーな方法論では決して徳は積めないと私は思います。

「やってみなはれ」精神で挑戦を続ける

〈牛尾〉

サントリーへ移られたのは、どういういきさつだったのですか。

〈新浪〉

現在の佐治信忠会長とは、私がローソンの社長になってから公私にわたってずっとお付き合いをさせていただいていました。その中で、サントリーって面白い会社だなと好感を抱いていたんです。

とりわけ「やってみなはれ」という会社の精神には共感を覚えました。考えてみればローソンも、私自身も「やってみなはれ」の精神でやってきたんだよなと。もちろん失敗する可能性もたくさんあるけれども、まずはやってみなければ何も始まらないと考えて、デフレの中でも果敢に挑戦を続けてきました。

サントリーはそれ以上に創業以来の長い間、そういう挑戦の歴史を積み重ねてきた会社で、とても魅力を感じていたところに、佐治現会長から、ぜひ社長にと打診をいただいたんです。

サントリーという会社は、これまで創業家を中心に、「やってみなはれ」と果敢に挑戦しながら、創業者の利益三分主義に基づく社会との共生を大切にする会社を創り上げてこられましたから、これが世界に羽ばたけばきっとアメリカ式のグローバリズムとは違った素晴らしいものができるんじゃないか、なんだか面白そうだなと気持ちが傾いてきたんです。

ちょうどローソンの後継者も育って、私自身もビジネスマンとしての最後をどう飾ろうかと考えていた時期でもありましたので、承ることにしたのです。

まぁ何やかや言っても、結局は佐治現会長のパッション、これに惚れたんですね。私のような若手に対して真摯に、ぜひ来てほしいと言ってくださった。これも縁だと思って決断したんです。

そうしてすべての準備を整えて佐治会長に伝えると、「じゃあ8月1日からよろしく」と言われましてね。7月31日までローソンにいて、次の日にはもうサントリーのバッジをつけていました。

〈牛尾〉

それは鮮やかでしたね。

〈新浪〉

ひと月ぐらい休めばよかったのかもしれませんが(笑)、やっぱり決めたら有無を言わさずすぐにやる。いまは一刻も早くやってよかったと思っています。


(本記事は『致知』2015年1月号 特集「堅忍不抜」より一部を抜粋・編集したものです)


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致知出版社編集部ブログ

 ◇新浪剛史(にいなみ・たけし)
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昭和34年神奈川県生まれ。56年三菱商事入社。平成3年ハーバード大学経営大学院修了。MBA取得。7年ソルデックスコーポレーション社長。三菱商事ローソンプロジェクト統括室長、ローソン顧問等を経て、13年ローソン社長。26年サントリーホールディングス社長。

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