~社内木鶏全国大会への道~ 社員と心をぶつけ合い、誠意を持って大地を耕す——井上誠耕園 園主・井上智博

瀬戸内海に浮かぶ小豆島で、井上さんのお祖父様が開墾した井上誠耕園のオリーブ畑にて(提供:井上誠耕園)

『致知』をテキストにした勉強会「社内木鶏会」。学びの輪は全国1200社にまで広がり、「社風がよくなった」「業績が上がった」など嬉しい声が続々と寄せられています。その成功事例を発表する「社内木鶏全国大会」が来年で第10回の節目を迎えるあたり、出場する5社の取り組みをご紹介していきます。今回は、井上誠耕園(香川県)三代目園主・井上智博さんのお話を紹介いたします。

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年齢や職責の壁を越え、心の内をぶつけ合う

「自分の心を高めるためにも、ぜひともこの本を読むといいですよ」

介護シューズで有名な徳武産業(とくたけさんぎょう/香川県)の十河孝男社長(そごう たかお/現・会長)から『致知』を薦められたのは8年前でした。

私は、地元小豆島で祖父が創業したオリーブ園・井上誠耕園の三代目園主です。

創業来手掛けてきたオリーブの栽培加工をベースに、通信販売や飲食店など、新しい事業にも積極的に挑戦し、おかげさまで園は大きな発展を遂げることができました。

しかし、組織の急拡大により、以前に比べて社内の意思疎通が図りにくくなっているのを痛感。社員の心を一つにするよい手立てはないかと模索していた折に紹介されたのが『致知』であり、『致知』を活用した勉強会「社内木鶏会」だったのです。

早速見学させていただいたところ、美点凝視というルールの下で『致知』の感想文を発表し合い、お互いの理解を深め合う。会場を包む明るく和気藹々とした雰囲気に感動し、私は導入を即決しました。2012年10月のことです。

ありがたいことに、当初から100人近くの大人数で開催したものの、大きな混乱もなく実にスムーズに導入することができました。成功の要因は、私と一緒に見学した若手社員が「自分たちもぜひやりたい」と立ち上げを主導し、会を盛り上げてくれたことです。

『致知』を通じて様々な苦難を乗り越えた方々の体験に触れることは、一人ひとりの心を高める貴重な機会になっています。そしてそれを分かち合う社内木鶏会によって、社内の意思疎通も格段によくなりました。

以前から開催している全体朝礼が、幹部からの一方的な意思伝達になりがちであるのに対し、社内木鶏会では、年齢や職責の壁を越え互いに心の内を率直にぶつけ合うことができます。

私自身も社員の隠れた面を発見して、皆ここまで真摯に人生を考えているのか、と毎回感動をいただいています。

「農は国の基(もと)なり」祖父の志を継いで

当園は、来年(2021年)開催予定の社内木鶏全国大会に出場します。

致知出版社から最初に出場を打診された時は、当園に出場する資格はあるだろうかという迷いがありました。まだ他社様の模範となる完璧な会はできていないという思いがあったからです。

しかし前述の十河社長に相談したところ、「だからこそ出るべきです」と強く勧められました。確かに、全国の実施企業様が注目する舞台に立つこと、そのために皆で一所懸命準備を重ねることは、当園のまたとない成長の機会になります。社員からも「ぜひ出場しましょう」という声が挙がり、肚を決めたのです。

私は、「農は国の基なり」という理念のもと、農業の産地化で地元小豆島の活性化を目指した祖父、それを受けた父親の志を継いで当園の経営に携わっています。若い頃は疎ましく思ったこの故郷への思い、祖父と父の志への共感が年と共に募り、家業を継いだのです。

井上誠耕園という名前には、自然と大地の恵みに感謝を込め、誠意を持って大地を耕す園でありたいという思いが込められています。

この思いを真に実現していくためにも、社内木鶏会と来年の全国大会への出場を通じて社員と共に心を高め、世のため人のために貢献できる園を目指していく考えです。


◉法人プロフィール
社名/井上誠耕園
事業内容/オリーブ及び柑橘類の栽培、加工、販売等
創業/1940年3月28日
所在地/香川県小豆郡小豆島町池田2352番地
社員数/172名 ※2020年7月1日時点

本記事は『致知』2020年8月号 連載「社内木鶏会で我が社はこう変わった」から一部抜粋・編集したものです)

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