【追悼】被爆、両親との死別、3回の流産──103歳・吉村光子さんが遺した日本人へのメッセージ

『致知』を心の師と仰ぎ、長年ご愛読くださっていた長崎県在住の吉村光子さんが、9月7日にお亡くなりになりました。103歳でした。10代の若さで両親と死別、22歳の時に長崎で被爆、3回の流産を経験するなど、吉村さんの人生はまさに、悲愁を越えて歩み来た人生でした。生前のご厚情に感謝を込めて、吉村さんが伝えようとしたメッセージをお届けします。
(本記事は『致知』2023年8月号 トップインタビュー「悲愁を越えて歩み来た百年」より一部を抜粋・編集したものです)

日本の行く末を考えると夜も寝られない

——先日吉村さんからいただいた手紙に感動しまして、本誌6月号「わが人生の詩」の特集総リードでも紹介させていただきました。

<吉村>
思いもかけないことでびっくりしまして、私の拙い文章をまさかあんな一面に載せていただけるとは、夢にも思っていませんでした。読みながらもう目が霞み、涙がどーっと溢れて、あぁ何と言って感謝すればよいのだろうと。

——いえいえ、感謝するのはこちらのほうです。

<吉村>
しばらく気を静めて頁を捲ると、加地先生と數土先生の対談「孔子の歩いた道、遺した言葉」があり、感動を以て拝読しました。孔子や『論語』に関してはいろいろな本を通じて多少なりとも存じていましたが、これほど分かりやすい実録はありません。

毎号の『致知』には学識豊かな方々が登場されていて、本当に人生の道標だと感じています。この本を若い人から大人まで年齢を問わず、日本中の人たち皆に読んでもらいたいと心から思いますね。そうすれば目の前が開け、幸福な人生を歩めると信じています。

日本は2,683年もの間、万世一系の天皇さまをずっといただいてきた世界に類のない国じゃないですか。戦後、焼け野が原からこれだけ経済的に栄えてきたのはいいことかもしれませんけど、人の心は荒廃しているでしょう。

——物質的な豊かさを追求するあまり、心が荒んでしまっている。

<吉村>
昔は学校の先生から「お父さんお母さんを大切に」「お友達とは仲良く」って言われて、自分より勉学の遅れているお友達がいたら手助けして、教えて、一緒に勉強する。だから、喧嘩はありませんでした。ましてや殺人事件なんてニュースで聞いたことがなかったですものね。それが70、80年の間に様変わりしてしまった。そのことが一番辛いですね。

いまの子供さんの様子を見ていると、ほとんどスマートフォンとかゲームをやっているでしょう。私が通っているデイサービス施設に近所の幼稚園児がたまに来ます。無邪気で可愛いんですけど、躾はなっていないし、好き勝手にやりたい放題。先生も全然注意しない。

一方、外に目を向ければ、アメリカはどんどん衰退していくばかりで、最大の脅威は中国でしょう。そういうことを考えて、国をしっかり守っていかないと危ないですよ。だから、人の心にもっと重点を置いて、政治でも教育でも取り組んでいってほしい。日本の行く末を考えると夜も寝られません。

——やり切れない思いが伝わってきます。

<吉村
私はこの年になっても選挙には必ず行くんです。絶対に棄権はしません。投票しながら拝むんです。「いまのままでは日本は滅びます。どうか30年、50年先を考えてください」って。もう祈るような気持ちですよ。

だから、子供を甘やかしたり贅沢させたりするだけではダメって言うんです。もっと本を読んで、自分で字を書かなきゃ。そういうことを役場の教育会にも言っているんです。いまは高校まで授業料を無償にするとか学校で子供たちに掃除をさせないとか、飴をしゃぶらせる動きばかり広がっているでしょう。

そんな甘えた考えで子供は育たん。子供は親の背中を見て育つんです。だから、『致知』の本をもっと多くの人に読んでもらって、教育のあり方を変えていかなきゃならん。そう思います。

昔は国の世話になること、国に何かをしてもらうのではなくて、国のために何ができるかを考えるのが当たり前の風潮でした。

——権利を主張する前に義務を果たすと。

<吉村>
私も若い時から本当にお国のために一筋でした。「欲しがりません、勝つまでは」が日常の合言葉でしたから。お国のためなら命も要らんって一所懸命生きてきた。それはね、兵隊さんだけじゃないんですよ。銃後の女、子供、老人まで、どれだけ国を想って辛抱しながら努めてきたか。いまの時代の人たちにも知ってほしいとつくづく感じています。


【本記事の内容】
◆自分のことは自分でやる
◆本は人生の鑑『致知』は一番の師
◆日本の行く末を考えると夜も寝られない
◆10代の若さで両親と死別
◆22歳で被爆地獄のような極限状態
◆3回の流産・死産身を粉にして働いた日々
◆15年の闘病を支え最期を看取る
◆人生の誓い5か条

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◇吉村光子(よしむら・みつこ)
大正12年東京生まれ。生後間もなく関東大震災で被災。女学校を卒業後、父親の転勤により上海へ移住するも、16歳で父親と、17歳で母親と死別する。その後、長崎の叔母の家に預けられる。昭和20年8月9日、三菱兵器製作所に勤務中に被爆し、九死に一生を得る。22年に見合い結婚、仕事をしながら家計を支える。2回の流産と1回の死産を経験。平成19年には60年連れ添った夫が病死。以後、現在まで1人暮らしの生活を続けている。

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