【第19回】佐藤勝人 快刀乱麻を断つ 仕事と人生に役立つ実践的問答 ——「巨人ファンの私は阿部監督問題から学ぶ」

栃木県内に商圏を絞り、「地域一番化戦略」で圧倒的シェアを誇るサトーカメラ。同社副社長の佐藤勝人さんはビジネス書作家として12作目を出し、商業経営コンサルタント、Youtube公式チャンネル「サトーカメラch」「佐藤勝人」と情報発信を含め、全国各地の商工会議所で講演やセミナー、さらに企業や商店の現場へ出向いて個別支援をし、経営者育成塾「勝人塾」も主宰されています。

本連載ではそんな佐藤さんに、現代ビジネスマンから寄せられた悩みや胸の内の葛藤、さらには社会情勢までも「勝人節」でズバッと答えていただきます。

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組織の問題は経営者の問題

この出来事を単なる個人の問題として捉えるのではなく、「なぜ組織はそのような管理職を生み出してしまうのか?」という視点で考えてみました。

私は大の巨人ファンです。だからこそ、今回の出来事は非常に残念でした。しかし同時に、「成果を出せる人」と「人を育てられる人」は違うという組織運営の難しさを改めて考えさせられました。

多くの会社では、「売上を上げた、成果を出した、実績がある」という理由で人を昇進させます。確かに成果を出せる人材は貴重です。しかし、ここで大きな勘違いが起きます。それは、「優秀なプレーヤー」と「優秀な管理職」は全く別の能力だということ。

現場で成果を出せる人が、必ずしも人を育てられるとは限りません。営業成績トップだった人が、部下を育てられるとは限りません。それはプロ野球の世界でも同じです。名選手が必ずしも名監督になるわけではありません。

では、管理職に求められる能力とは何でしょうか。 私は次の4つだと思っています。

第一に、人を育てる力。
第二に、人を活かす力。
第三に、自分の感情をコントロールする力。
第四に、倫理観と公平性。

管理職は自分が活躍する立場ではありません。部下が活躍できる環境を整える立場です。ところが成果だけを基準に昇進させると、「自分の成功体験を押し付ける人」 「自分と同じやり方を求める人」「感情で部下を動かそうとする人」が管理職になってしまうことがあります。すると、組織は徐々に疲弊していきます。部下は考えなくなり、挑戦しなくなり、失敗を恐れるようになります。結果として組織全体の成長が止まってしまうのです。

実は私自身も長い間、この失敗を繰り返していました。成果を出す人を管理職にし、任せてうまくいかない。そして同じことを繰り返す。その原因は管理職にあったのではありません。管理職を育てる仕組みを持たず、任せっぱなしにしていた経営者である私自身にありました。

だから本来、管理職を評価する基準は、「何を達成したか」だけでは不十分です。 むしろ重要なのは、「どのように達成したのか」です。

「部下との関わり方はどうだったのか」「周囲から信頼されているのか」「後継者を育てているのか」「チームで成果を出せているのか」「協働する力があるのか」。こうした視点を持たなければなりません。

数字だけを見ていると、本当の問題は見えなくなります。さらに、多くの企業が見落としていることがあります。それは管理職に昇進させた後の育成です。

一度管理職になると、「後は任せた」となりやすい。しかし実際には、管理職こそ継続的な教育が必要なのです。なぜなら権限を持つほど、自分の欠点に気づきにくくなるからです。だから私は1on1ミーティングを通じて定期的な振り返りを重視しています。

管理職自身が、自分では気づけないズレを修正する仕組みが必要なのです。 どれだけ優秀な人でも、自分一人では自分を客観視できません。だから検証の場が必要になります。

そしてもう一つ大切なことがあります。それは問題行動を見逃さないことです。「成果を出しているから」「昔からああいう人だから」「結果が出ているから仕方ない」。そんな理由で目をつぶってしまう。しかし、沈黙は容認になります。

組織が何も言わなければ、「その行為は許されている」というメッセージになってしまうのです。小さな違和感を放置すると、やがて大きな問題へ発展します。
だから経営者や上司には勇気が必要です。成果だけで判断しない勇気。問題を指摘する勇気。そして育て続ける勇気です。私は長年経営をしてきて確信したことがあります。それは、組織は管理職のレベル以上には成長しないということです。

現場を変えたければ管理職を変える。管理職を変えたければ教育を変える。 教育を変えたければ経営者が変わる。結局、組織の問題は経営者の問題なのです。
だからこそ私は、成果を出せる人ではなく、人を活かして成果を出せる人を育てたい。それが組織づくりの本質だと思っています。今回は巨人ファンの私としては寂しい出来事でした。しかし経営者として改めて自分自身を振り返る機会になりました。

その責任は管理職ではなく経営者にあります。人を活かして成果を出せる人を育てる。それこそが経営者の最も重要な仕事なのだと改めて気づかされました。The way forward.


◇佐藤勝人(さとう・かつひと)
サトーカメラ代表取締役副社長。日本販売促進研究所.商業経営コンサルタント。想道美留(上海)有限公司チーフコンサルタント。作新学院大学客員教授。宇都宮メディア.アーツ専門学校特別講師。商業経営者育成「勝人塾」塾長。(公式サイト)
栃木県宇都宮市生まれ。1988年、23歳で家業のカメラ店を地域密着型のカメラ写真専門店に業態転換し社員ゼロから兄弟でスタート。「想い出をキレイに一生残すために」という企業理念のもと、栃木県エリアに絞り込み専門分野に集中特化することで独自の経営スタイルを確立しながら自身4度目となるビジネスモデルの変革に挑戦中。栃木県民のカメラ・レンズ年間消費量を全国平均の3倍以上に押し上げ圧倒的1位を獲得(総務省調べ)。2015年キヤノン中国と業務提携しサトーカメラ宇都宮本店をモデルにしたアジア№1の上海ショールームを開設。中国のカメラ業界のコンサルティングにも携わっている。また商業経営コンサルタントとしても全国15ヶ所で経営者育成塾「勝人塾」を主宰。実務家歴39年目にして商業経営コンサルタント歴22年目と二足の草鞋を履き続ける実践的育成法で唯一無二の指導者となる。年商1000万〜1兆円企業と支援先は広がり、規模・業態・業種・業界を問わず、あらゆる企業から評価を得ている。最新刊に『地域密着店がリアル×ネットで全国繁盛店になる方法』(同文館出版)がある。Youtube公式チャンネル「サトーカメラch」「佐藤勝人」でも情報発信中。 

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