2026年05月19日
~本記事は月刊誌『致知』2026年6月号 特集「人間を磨く」に掲載の対談(経営の道は果てなし)の取材手記です~
外食産業を牽引する一流経営者が相まみえる
日本初のファミリーレストラン「すかいらーく」を兄弟4人で開業。かつて業界の底辺と目されていた外食を産業にまで発展させ、米寿を迎えたいまなお東京近辺を中心に約40店舗展開する「高倉町珈琲」の陣頭指揮を執る横川竟氏。
15回以上の転職を重ねた末、ラーメン屋という天職に邂逅。裸一貫で立ち上げた僅か5坪の小さなラーメン屋を、熱烈中華食堂「日高屋」として首都圏を中心に約470店舗展開する一大中華料理チェーンに育て上げた神田正氏。
共に80の坂を上りながらも、経営の第一線を走り続けている外食産業の雄です。
すかいらーくも日高屋も、その名を聞いたことがない人はいないでしょう。しかし、それぞれの会社がどのような思いで創業されたのか、かつては閑古鳥が鳴く状態だったところからいかにして今日の発展を遂げたのか、創業者はどのような考え方で経営してきたのか、意外と知られていないかもしれません。
30年以上にわたり親交を深めてきた両氏が語り合う、あらゆる試練を越えてきた挑戦の軌跡、人生と経営を繁栄させる要諦とは――。
月刊『致知』最新号(2026年6月号)特集「人間を磨く」の締め括りに、横川竟さんと神田正さんの対談記事が掲載されています。対談のタイトルは「経営の道は果てなし」です。
連載「二十代をどう生きるか」のご縁に紡がれて
企画の発端は、今年1月末に弊誌連載「20代をどう生きるか」で横川さんを取材させていただいた時のこと。
修業時代やすかいらーく創業期の歩みといまの若い世代へのメッセージについて素晴らしいお話を賜り、横川さんの若々しい立ち居振る舞いや熱い語り口に圧倒され、「いずれまたご登場いただきたい」と強く感じました。
ひと通りお話を伺った後、雑談の中で何気なく「懇意にしている経営者はいらっしゃいますか」と尋ねると、「日高屋の神田さんは定期的に情報交換をさせてもらっています」と即答されたのです。
実は、神田さんも2024年11月号の同連載にご登場。好々爺然としていらっしゃりながら、バイタリティーに満ち溢れているお姿にすっかり心を打たれていました。
外食産業を代表する経営者が語り合う人間学談義に、ぜひ耳を傾けたい。そう思い至り取材依頼をすると、すぐに快諾のお返事をいただき、対談が実現する運びとなりました。
対談取材は4月上旬、都内ホテルにて行われました。取材時間は2時間に及び、その内容を凝縮して誌面10ページの記事にまとめました。
お二方は30年以上の親交がありますが、これほど踏み込んで濃密な経営談義に花を咲かせたのは初めてのこと。幾多の艱難辛苦を乗り越え、自己と組織を磨き高めてきた足跡を通して、一人ひとりの人生もまた経営であり、繁栄へと導くヒントを教えられます。
↓対談内容はこちら!
◇「俺はいつも1,000円ぐらいの食事をするんだ」
◇人間形成の根幹になった貧しい幼少期の経験
◇「おまえの人生なんだから、好きな仕事をしたほうがいい」
◇商売の基本を教わった築地での修業時代
◇失敗は神様からのエール
◇日本一の秘訣は人がやらないことをやる
◇夢は見るものではなく語るもの
◇かくしてジョナサンの再建を成し遂げた
◇熱烈中華食堂「日高屋」誕生秘話
◇理想を追い求めて 75歳からの再出発
◇無私の心で世のため、人のために働けるか
3人の師から教わった世のため、人のために尽くす大切さ
お二人の共通点は、戦後の貧しい幼少期の経験や32歳でグループ一号店を開店したことをはじめ、枚挙に遑がありません。中でも筆者が心を動かされたのは、世のため、人のために尽くしてこられたことです。ここでは、お二人のお話の中でとりわけ心に響いた言葉を紹介します。
まずは横川さん。
「僕には3人の師がいて、1人目が開拓団を率いて国のために命を懸けた親父。2人目が、『嘘をつくな』『人のために尽くせ』『国からもらった利益は国に返せ』という商売人の3つの条件を教えてくれた伯父さん。そして3人目が、商売の師である築地の親父さんです。言葉は違えど、世のため、人のために尽くす大切さを説いていて、それが僕の指針になっています」
ここで挙げられている3人の人物から大きな影響を受けたといいますが、「築地時代に商売とはどういうことなのか、商売のイロハを一から徹底的に叩き込まれました」と振り返っているように、築地の師匠から学んだことが横川さんの経営者としての原点だといいます。
横川さんは中学卒業後に近所の方の縁で日本一の木製冷蔵庫メーカーに就職するも、過労が祟って体を壊してしまい、2年で退職。将来について考えるうちに、食べ物にありつけず苦しんだ幼少期の記憶が蘇り、築地の卸問屋「伊勢龍」に住み込みで修業を始めました。
「商売は嘘をつくな。いい物を売れ、余分に儲けるな」
これが、築地の師匠の口癖でした。実際、店では良質な商品を取り揃え、当時30店近くの卸問屋が鎬を削る築地の中で、売り上げ1位を誇っていたのです。ただ、修業時代には師の教えの価値に気づいていなかったと述懐されています。
〈横川〉
他にも、「仕事は準備が8割」「物は大切にしろ」としつこく叱られましたけど、当時はその価値に気づいていませんでした。本当の意味で親父さんの教えを理解したのは、自分の店を持ってからですね。
修業を始めて丸4年が経った頃、お客様からスカウトされ、新宿の小売店で雇われ店長に着任しました。いざ商売を始めると、何の特徴もない店であまり売れない。だから、築地で売れていた商品に入れ替え、親父さんの教えを実践したところ、数か月後には売り上げが3倍になったんです。
〈神田〉
それはすごい。
〈横川〉
この時に「親父さんが言っていたのはそういうことか」と、初めて腑に落ちました。商売もスポーツも同じで、基本をきちっと身につけた人と基本を蔑ろにした人は、ゆくゆく大きな差となって表れてくる。修業時代に商売の基本をすべて教わったことは、感謝してもし切れません。
独立後に師匠の教えを実践することで、「世のため、人のために尽くすことが、商売の基本」だと確信された横川さん。この信念に基づき、経営に向き合ってきた横川さんは、いかにして「すかいらーく」「ジョナサン」といったレストランを有名ブランドに育て上げたのでしょうか。その全貌は本誌に掲載されています。
〝新・経営の神様〟稲盛和夫に学んだこと
次に神田さん。
「大成する人には私利私欲がないような気がします。無私の心で世のため、人のために働けるか。これがいまの時代に求められるリーダーの資質です」
この言葉通り、神田さん専用の社用車はなく、取材当日も大宮から東京まで在来線を利用して来られました。自分に使うお金があったら、少しでも社会や従業員に還元したいと考え、利益をお客様や地域社会、共に働く従業員へ還元する「分かち合う資本主義」を実践。2018年に私の保有株約15万株、2023年には約4億5,000万円に相当する約20万株を従業員へ贈与されたのもその一環です。
神田さんがこうした経営を貫く背景には、ある名経営者の存在がありました。最後に、紙幅の関係で割愛せざるを得なかったエピソードをご紹介します。
〈神田〉
実は、社員の物心両面の幸福を追求する経営方針は、京セラ創業者の稲盛和夫さんからも影響を受けています。
のちに上場の牽引役となる「ラーメン館」を開店した1994年、盛和塾での講演を依頼されましてね。その講演後、「6~10店舗くらい、まとめてM&Aしたいと考えています。メリット、デメリットなどを教えていただきたい」と、塾長の稲盛さんに尋ねたんです。
すると稲盛さんは、「私はいまのままで成功間違いないと思います。M&Aをしてまで拡張する必要は、さらさらありません」と。さらに続けて、こう付け加えられました。
「あなたはこれまで、施設の子どもさん、不幸な境遇の方々を助けてあげ、戦力にされて、社会に対して非常に善きことをやっておられます。ところがこれから50店舗ということになると、これまでにこまやかな目配りでつくってこられたいい人間関係が少し冷たいものになります。
素晴らしい団結を築くためには、従業員を裏切らない。信義に厚い心で迎えてあげることです。その心が、素晴らしい人間関係をつくっていくわけです。
人間というのは、心がたいへんなウエイトを占めます。ですから、心をどういう風に持って人間関係をつくっていくか、これが最大の問題です」
この言葉を聞いて、「ああ、これまでやってきたことを続けていけばいいんだ」と納得しました。それでM&Aはせず、自力で店舗を増やしていき、今日に至ったんです。やはり、従業員の幸せを追求することが大事なのでしょうね。
横川さんと神田さんが挑戦を続ける過程で掴んだ「人生と経営の真髄」には、私たちの日常の仕事や人生に活かせるヒントが満載です。ぜひ本誌の対談記事をお読みください。
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