メンタルが強い人の「7つの習慣」——外資系産業医が教えるストレス対策

日々最高のパフォーマンスを発揮するためには、知識や技術が優れているだけではいけません。心がしっかり整っていなければ、せっかく持っている知識やスキルを活かすことはできないでしょう。このコロナ禍で生活や仕事の環境が大きく変わり、ストレスを感じている人が多いはず。外資系企業産業医として通算1万人以上と面談してきた武神健之さんに、「メンタルが強い人」に共通する習慣を教えていただきました。

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メンタルが強い人の共通点

〈武神〉
私が診てきた限り、ストレスに強い人たちは総じて原因探しをしたり、対象を憎んだりせず、淡々と対処をしています。彼らのストレスに対する捉え方をまとめるなら、ストレス=「強度×持続時間」という式で表せるでしょう。

それぞれ簡単に説明すれば、強度とはインパクトの強さ、つまり事前にある程度予想できていたことは、実際に起きてもそれほどショックにならない。持続期間というのは、ストレスがいつまで続くか、終わりが見えていればある程度耐えられるということです。

この観点からすれば、新型コロナウイルスは予想もしなかった規模で蔓延し、いつまで続くか分からないために、人々の大きなストレスになっていると言えます。

いま皆様に知っていただきたいのは、メンタルが強い人の習慣を実践することで、ストレス耐性は身につけられるという事実です。これは私が診てきたクライアントさんの例からも明らかです。ここからは、私が過去一万人の面談を通じて気づいた「7つの習慣」について、詳しく見ていきます。

1.好きなことをする

クライアントさんの中には、メンタル疾患が原因で休職を余儀なくされる人がいます。そういう人たちに「趣味は何ですか?」と訊くと、高い確率で「ないです」という答えが返ってきます。逆に、多忙にも拘らず元気な人に理由を尋ねると、「本当に忙しいですよ。月に一回トライアスロンもやってますし」などという驚きの返答もあります。よく言われることですが、好きなことをしている人は、やはりストレスに強いのです。

好きなことをしている時、人は誰でもそれに集中します。それが気分転換になり、ほどよい疲れが出るため睡眠にも好影響が出ます。趣味がない、もしくはコロナ禍を理由にそれを諦めている人は、一度自分の趣味を箇条書きにして、可視化してみると意外な発見があるでしょう。大切なのは、楽しい時間を自らつくっていく姿勢です。

2.構える

既に述べた通り、人は想定外の出来事に強いストレスを感じます。ですから、日頃から「最悪のシナリオ」を描き、不測の事態に構えておくことが重要です。あらゆる状況を想定する必要はありません。

考えたくないかもしれませんが、「もし自分が新型コロナウイルスに感染したら」「もし自分の会社が倒産したら」等いくつかの場合について、それが現実化した時をシミュレーションする。そうすればいざという時のショックが和らぎ、立ち上がりが早くなります。

また同時に、仕事でこうなったら最高に嬉しい、という「ベストシナリオ」もあるとよいでしょう。最悪と最高、理論上はこの二つの間にすべての出来事が含まれますから、多少問題が起きても頭が真っ白になる事態は避けられます。

3.区切る

ストレスを感情に置き換えれば、「緊張感」だと言えます。緊張が続くほど心は擦り減ります。在宅勤務で生活空間と仕事の区別がなくなってきた方も多いでしょう。その中で緊張をどう区切るかは喫緊の課題です。ここではその「区切り方」を三つご紹介します。

時間を区切る 人間の集中力は無限には続きません。学生の頃、休み時間は当たり前にありましたが、社会人はそれを意識して取る必要があります。また米国では、一定程度の長い休みを控えた人は、その休みの八週間前から幸福度が高まるという研究結果も出ています。私が診ている方の中でも、やはり予め休みを決めている人のほうが充実しているように思えます。時間を区切ることで、高いパフォーマンスが維持できるようです。

空間を区切る 在宅勤務の弊害の一つは、これまで別々だった職場と生活空間が一緒になり、仕事が終わったら勝手に気分が変わるということがなくなる点です。感染対策に気を配った上で、週末に出掛けるのもよいですが、単に散歩へ出掛けたり、身近にある高い所(ビル、展望台など)に上ってみるのもよいでしょう。日常から切り離される感覚を味わうだけで、気分は楽になるものです。

五感を区切る 人間の感情は五感に大きく影響を受けています。アロマを焚く、絵画を観る、音楽を聴く。方法は何でもよいです。五感への刺激が気分を変え、リラックスするきっかけになります。

マラソン選手は疲れてから休むのではなく、無事に走り切れるよう、予め給水地点を決めています。ストレスも同じで、意識的に休み、区切りを入れることがよいパフォーマンスを維持する秘訣なのです。

4.捨てる

勘違いしやすいですが、不満をいくら解消しても、マイナスの感情が一時的にゼロに近づくだけで、幸せになれるわけではありません。ストレスに上手に対処している人は、どうにもならない悩みを解決しようとせず、その時間をもっと幸せになれる何かに使うことを意識しています。ネガティブな感情を減らそうと躍起になるより、ポジティブな感情を増やすほうが幸せになれると知っているのです。

捨てるとは「選ぶ」ことでもあります。休日に仕事の悩みで悶々とし続けても状況は変わりません。家にいる時は家族との会話を最優先するなど、あなたにとって何が大切かを考え、適宜気持ちを切り替えることをお勧めします。

5.体を使う

心が緊張している時、筋肉は収縮し、体は硬くなります。対処の上手な人たちはその都度、体を使うことで緊張を緩和しています。その例がジョギングやエアロビクスといった有酸素運動です。一定のリズムを伴うこれらの運動をすると、幸せホルモンと呼ばれるセロトニンが多く分泌され、多幸感が得られると言われています。

時には100メートルダッシュや腕立て伏せなど強めの運動を取り入れてもよいでしょう。運動の最中は悩みを忘れますし、主に就寝中、筋肉修復のため分泌される成長ホルモンには抗ストレス効果があり、健康な体と心の維持に役立ちます。

また、辛い時は顔を上に向けてみましょう。これだけでも俯いているより気分が楽になるはずです。

6.書く・話す・読む

いつも漠とした不安に悩んでいるという方に薦めているのが、その要因を箇条書きするワークです。例えば会社をクビになるのが怖いなら、なぜそれが怖いのか。収入減の不安が原因なら、一体いくらあれば足りるのか、今後どのように貯めていったらよいのか……という要領で、心のわだかまりを明瞭にしていくのです。

自分で書いた内容を一か月後に見返してみましょう。大半の方が、不安の8~9割が、現実には起こらなかったことに気がつくはずです。悩みを親しい人に話す、小説や自己啓発書を読むこともまた、心を鎮めることに繋がります。

7.新しい出会いを求める

ストレス耐性を高める上で、新しい知識や趣味、人間関係を持つ心があるかどうかは重要です。

会社勤めの人は自宅との往復が続き、それ以外の人間関係が希薄になりがちです。その何が問題かと言えば、仕事で失敗し評価が下がった際、それが世間全体からの評価と勘違いする恐れがあるのです。積極的に新たなコミュニティへ参加することで、メンタルの健康が保たれる可能性が高まります。


(本記事は月刊『致知』2020年12月号 連載「大自然と体心」より一部抜粋・編集したものです)

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◇武神健之(たけがみ・けんじ)
昭和48年東京都生まれ。神戸大学医学部卒業、東京大学医学部大学院修了。外資系の金融業・コンサルティング業・IT業などを中心に20社以上のグローバル企業で、年間1,000件、通算1万件以上の健康相談やストレス・メンタルヘルス相談を実施。平成26年一般社団法人日本ストレスチェック協会設立。著書に『職場のストレスが消える コミュニケーションの教科書』(きずな出版)『メンタルが強い人の習慣』(PHP研究所)などがある。

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