「人間の発展は、まず最初に仕事のなかで、仕事を通じて行なわれる」——ドラッカーに学ぶ発展の法則

経営学を始め、様々な分野に多大な影響を与えたピーター・F・ドラッカー。その言葉や教えはいまなお力強い説得力を持ち、私たちの仕事や人生の指針となっています。月刊『致知』では、ドラッカー公認の唯一の学術団体であるドラッカー学会の共同代表理事を務める佐藤等さんの連載を掲載しています。本日はその連載の中から、「客観的な仕事にいかに取り組むか」を説いていただいた内容をご紹介します。
(本記事は『致知』2024年2月号 連載「仕事と人生に生かすドラッカーの教え」より一部を抜粋・編集したものです)

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仕事に取り組む己の姿勢が問われる

「この床は松だな」。家具製作、店舗プロデュースを仕事にする知人と古い建物を何棟か見て回っているときの体験です。

「この梁は杉」など次々に教えてくれますが、「木」としてしか目の前のモノを知覚できず、無知な己の存在を強く意識するしかありませんでした。人は、同じモノを見ていても経験の違いによって異なる現実を見ているのです。

私とその知人とのモノの見方の違いは、まさに仕事を通して培われたものの差で生じていました。自生する松や杉を見れば識別できますが、建材としての松や杉を見た経験が私にはなかったのです。

モノの差異を認識する力は、たとえば、ワインソムリエが味の差異を識別し、表現する力などに典型的に現れています。

ドラッカーは「仕事は客観的な存在」であるといいます。仕事は自分という存在の外に在るものです。事業の一部を構成し、顧客に満足を届けるために仕事はあります。客観的な存在は基本的に分析可能です。たとえば、仕事は作業に分解することができます。

同じ仕事をしている複数人に一つの仕事をいくつの作業で出来ているかを書き出してもらうとある人は7つといい、ある人は12といいます。差異を認識する力が異なるからです。

「依頼をうけた仕事、要求されたもの、他人から受ける管理、職務上で出会う好機とか危機とかいったものが、人を発展させる」と冒頭の言葉は続きます。いずれも仕事の外部性を示す言葉です。

仕事の本質は、自分の意志とは切り離されたところに存在する顧客のために「なすべきこと」です。一方、人間の発展は内面の問題です。それは、仕事に取り組む己の姿勢が問われるということです。


『致知』人気連載 「仕事と人生に生かすドラッカーの教え」

人と組織をどう成長させ、成果をあげるか。古来、人の上に立つ者を悩ませてきたこの問いに「マネジメント」という指針を打ち出したドラッカー。時代は移っても社会の本質は変わることなく、その思想と著作はいまなおビジネスマンの行く道を照らしてくれています。
本連載では公認会計士として活躍する傍ら、ドラッカー本人をして日本における〝分身〟と言わしめた上田惇生氏とも交流を持ち、現在はドラッカー公認の唯一の学術団体であるドラッカー学会の共同代表理事を務める佐藤等氏が執筆。
コロナ禍やウクライナ危機で混迷を深める現代社会の問題も踏まえ、その教えをどう生かすか、マネジメントの要諦を読み解いていただきます。

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◇佐藤 等(さとう・ひとし)
昭和36年北海道生まれ。59年小樽商科大学商学部商業学科卒業。平成2年公認会計士試験合格。佐藤等公認会計士事務所開設。14年同大学大学院商学研究科修士課程修了。ドラッカー学会共同代表理事。編著に『実践するドラッカー』シリーズ(ダイヤモンド社)、著書に『ドラッカーに学ぶ人間学』(致知出版社)がある。

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