【第16回】佐藤勝人 快刀乱麻を断つ 仕事と人生に役立つ実践的問答 ——「失敗を叱るな、怠慢を叱れ」

栃木県内に商圏を絞り、「地域一番化戦略」で圧倒的シェアを誇るサトーカメラ。同社副社長の佐藤勝人さんはビジネス書作家として12作目を出し、商業経営コンサルタント、Youtube公式チャンネル「サトーカメラch」「佐藤勝人」と情報発信を含め、全国各地の商工会議所で講演やセミナー、さらに企業や商店の現場へ出向いて個別支援をし、経営者育成塾「勝人塾」も主宰されています。

本連載ではそんな佐藤さんに、現代ビジネスマンから寄せられた悩みや胸の内の葛藤、さらには社会情勢までも「勝人節」でズバッと答えていただきます。

各界一流プロフェッショナルの体験談を多数掲載、定期購読者数No.1(約11万8,000人)の総合月刊誌『致知』。人間力を高め、学び続ける習慣をお届けします。
1年12冊の『致知』ご購読・詳細はこちら※動機詳細は「③HP・WEB chichiを見て」を選択ください

失敗とは挑戦の痕跡であり、成長の入口

支援先での会議の最中、若手社員の大きな失敗が報告された。その瞬間、会議室の空気が変わった。重く沈み、言葉が消えた。やがてA部長が口を開いた。

「何でこんなことを繰り返している!そんな部門、もういい。辞めちまえ!」

鋭い言葉が、場を切り裂いた。若手はうつむいたまま動かない。言い返すことも、弁明することもできない。

だが、私は知っていた。彼は手を抜いたわけではない。怠けていたわけでもない。むしろ、挑戦していた。だからこそ失敗した。そして今回の失敗は、前回と同じように見えて、実は違う。挑戦の中身が変わっていた。 その光景を見ながら、私は思った。「ああ、ここで組織は分かれる」と。

多くの組織は、この場面で結果だけを見て叱る。確かに、それは正しい。責任を問うことも、再発防止を求めることも、経営として必要なことだ。しかし、それだけでは足りない。

そもそも、失敗とは何か。挑戦しなければ、失敗は起きない。何もやらなければ、失敗はゼロだ。そう考えると、失敗とは挑戦の痕跡であり、成長の入口である。ここを取り違えると、人は変わる。叱られないために仕事をするようになる。

評価を落とさないことが目的になる。やらない理由を探すことが上手くなる。そして組織は、音もなく衰えていく。誰も手を挙げない。誰も責任を取りに行かない。誰も未来をつくろうとしない。一見、失敗は減る。だがそれは、挑戦が消えただけである。私はこれを何度も見てきた。静かに弱っていく組織を。

一方で、本当に向き合うべきものがある。それが、怠慢である。準備をしない。考えない。やるべきことをやらない。だが怠慢とは、単なる手抜きではない。自分の甘さに気づかないこと。曖昧なまま進めてしまうこと。「これくらいでいい」と、自分を許してしまうこと。人は弱い。だからこそ、自分をごまかす。やったつもりになる。考えたつもりになる。挑戦したつもりになる。だが、その中に積み上がるものはない。

挑戦しての失敗には、必ず何かが残る。経験が残り、やがて再現性となる。しかし怠慢には、何も残らない。ただ時間だけが過ぎていく。だから怖いのは、失敗ではない。怠慢である。ここを見逃したとき、組織は静かに歪み始める。失敗を叱る組織では、挑戦が消えていく。怠慢を見過ごす組織では、成長が止まっていく。

実は、私自身もかつて同じ過ちを犯した。結果ばかりを見て、部下を叱ったことがある。だが後になって気づいた。私は失敗に怒っていたのではない。自分の期待が裏切られたことに、感情をぶつけていただけだった。それでは人は育たない。見るべきは結果ではなく、過程であり、行動である。

今回の若手も同じだった。私は会議に割って入り、彼と向き合い、失敗を一つひとつ分解していった。どこで判断が甘かったのか。どこで準備が曖昧だったのか。どこで行動計画がぼやけていたのか。その過程を辿る中で、彼の表情が変わった。初めて、自分の問題に気づいたのだ。 失敗ではない。怠慢、すなわち、自分の曖昧さに。

同時に彼は理解した。A部長は結果に怒っていたのではない。自分の姿勢に対して叱っていたのだと。この瞬間、場が変わった。失敗の意味が変わり、叱る意味が変わり、学びの質が変わる。人は、環境によって変わる。挑戦が許される場では、人は前に出る。怠慢が許される場では、人はすぐに甘える。

経営とは、何を許し、何を許さないか。その線を引き続ける営みである。人を育てるとは、優しさでも厳しさでもない。すべては順番である。「失敗には寛容であれ、怠慢には厳しくあれ。」その順番を守れているかどうか。ふと立ち止まり、自分自身に問い直してみたい。I’ll try my best.


◇佐藤勝人(さとう・かつひと)
サトーカメラ代表取締役副社長。日本販売促進研究所.商業経営コンサルタント。想道美留(上海)有限公司チーフコンサルタント。作新学院大学客員教授。宇都宮メディア.アーツ専門学校特別講師。商業経営者育成「勝人塾」塾長。(公式サイト)
栃木県宇都宮市生まれ。1988年、23歳で家業のカメラ店を地域密着型のカメラ写真専門店に業態転換し社員ゼロから兄弟でスタート。「想い出をキレイに一生残すために」という企業理念のもと、栃木県エリアに絞り込み専門分野に集中特化することで独自の経営スタイルを確立しながら自身4度目となるビジネスモデルの変革に挑戦中。栃木県民のカメラ・レンズ年間消費量を全国平均の3倍以上に押し上げ圧倒的1位を獲得(総務省調べ)。2015年キヤノン中国と業務提携しサトーカメラ宇都宮本店をモデルにしたアジア№1の上海ショールームを開設。中国のカメラ業界のコンサルティングにも携わっている。また商業経営コンサルタントとしても全国15ヶ所で経営者育成塾「勝人塾」を主宰。実務家歴39年目にして商業経営コンサルタント歴22年目と二足の草鞋を履き続ける実践的育成法で唯一無二の指導者となる。年商1000万〜1兆円企業と支援先は広がり、規模・業態・業種・業界を問わず、あらゆる企業から評価を得ている。最新刊に『地域密着店がリアル×ネットで全国繁盛店になる方法』(同文館出版)がある。Youtube公式チャンネル「サトーカメラch」「佐藤勝人」でも情報発信中。 

各界一流プロフェッショナルの体験談を多数掲載、定期購読者数No.1(約11万8,000人)の総合月刊誌『致知』。人間力を高め、学び続ける習慣をお届けします。※動機詳細は「③HP・WEB chichiを見て」を選択ください

1年間(全12冊)

定価14,400円

11,500

(税込/送料無料)

1冊あたり
約958円

(税込/送料無料)

人間力・仕事力を高める
記事をメルマガで受け取る

その他のメルマガご案内はこちら

『致知』には毎号、あなたの人間力を高める記事が掲載されています。
まだお読みでない方は、こちらからお申し込みください。

※お気軽に1年購読 11,500円(1冊あたり958円/税・送料込み)
※おトクな3年購読 31,000円(1冊あたり861円/税・送料込み)

人間学の月刊誌 致知とは

閉じる