人間としての4つの規範を守り通す——令和の時代に響く稲盛和夫のリーダー論

平成14年に新聞紙上をにぎわせた企業不祥事の数々。それを受けて「新・経営の神様」との呼び声の高い稲盛和夫氏が弊誌上で語ったのが、「才覚」の上に「人格」を置くリーダー論でした。「人格」は実際にはどのようにして養うことが出来るのか。「人間としての正しい生き方」とは何なのか――。先のみえにくいいまこそ立ち返りたいプリミティブな教え、稲盛哲学の原点に触れられる名文をお届けいたします。

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才覚よりも大切なもの

近年、日本の社会では、リーダーの資質として「才覚」が重んじられてきました。たとえば経済界では、才能にあふれ、顕著な功績をあげた者が、社長など経営トップに任命され、高く遇されています。しかし私は、昨今の不祥事を観るにつけ、それだけで評価してはならないと思うのです。

「才子、才に溺れる」といわれるように、才能をもって成功を収めたリーダーが自分の力をかすぃんして失敗してしまうケースがあまりに多いからです。優れた「才覚」の持ち主であればあるほど、その力をコントロールするものが必要となってきます。それが、いわゆる「人格」と言われるものであり、その「人格」を高めるためには、哲学や宗教など聖賢の教えを通じて、「人間としての正しい生き方」を繰り返し学ばなければなりません。

「才覚」あふれるリーダーも、この「人格」の大切さは十分知っており、哲学や宗教についての知識も持っています。しかし、知っていることと実践できることは違うのです。多くのリーダーが、「人間としての正しい生き方」などは一度学べば十分と思い、自分の血肉になるまで繰り返し学ぼうとしません。そのために、才に溺れるリーダーが続出するのです。スポーツマンが毎日鍛錬しなければ、素晴らしい肉体を維持できないように、人間は少しでも心の手入れを怠るとすぐに堕落してしまいます。

プリミティブな教えを徹底して守り通す

では、「人間としての正しい生き方」とは、どのようなものでしょうか。それは、高邁な哲学や宗教からだけ学べるというものではありません。われわれは、すでに子どもの頃に、両親や教師から「欲張るな」、「騙してはいけない」、「嘘を言うな」、「正直であれ」というような、最も基本的な規範を教えられています。そのなかに、「人間としての正しい生き方」じゃすでに示されています。まずは、そのような単純な教えの意味を改めて考え直し、それを徹底して守り通すことが大切です。

いま、社会倫理の回復を図るために、法制度などの厳格化を求める意見もありますが、私はそれよりも、この「欲張るな」、「騙してはいけない」、「嘘を言うな」、「正直であれ」というような、「人間としての正しい生き方」を示した、単純でプリミティブな教えを、まずは社会のリーダー自身が徹底して守り、また周囲に守らせるほうがはるかに有効であると考えています。

最近発覚した企業不祥事は、氷山の一角に過ぎず、日本の社会にはまだまだ多くの不正が隠されているのではないでしょうか。そうであれば、私はリーダーを筆頭にわれわれ日本人のすべてが、先に述べたように、心の手入れを怠らず、プリミティブな教えを頑なに守り通そうとする、生真面目な社会をつくることが、一見迂遠に思えるものの、日本を再生するための最善の策であろうと思います。

日本は現在、危機的な状況にありますが、私は日本人が本来持っている、このような高い倫理観や勤勉性を取り戻すことにより、必ずや復活できると信じています。

(この記事は、月刊『致知』2003年1月号の「巻頭の言葉」を再編集したものです。

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◇稲盛和夫(いなもり・かずお)
昭和7年鹿児島県生まれ。鹿児島大学工学部卒業。34年京都セラミック(現・京セラ)を設立。社長、会長を経て、平成9年より名誉会長。昭和59年には第二電電(現・KDDI)を設立、会長に就任、平成13年より最高顧問。22年には日本航空会長に就任し、27年より名誉顧問。昭和59年に稲盛財団を設立し、「京都賞」を創設。毎年、人類社会の進歩発展に功績のあった方々を顕彰している。また、若手経営者のための経営塾「盛和塾」の塾長として、後進の育成に心血を注ぐ。著書に『人生と経営』『「成功」と「失敗」の法則』『成功の要諦』(いずれも致知出版社)など。

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