2026年04月22日
かつて世界2位を誇ったGDP(国内総生産)はいまや中国、ドイツに抜かれるなど、様々な内憂外患に直面し、その活力を失いつつある日本。どうすればわが国は自立自尊した豊かな強い国として甦ることができるのでしょうか。憂国の士である元日本郵便副会長・稲村公望氏と第29代航空幕僚長・田母神俊雄氏の提言から、日本の明るい未来を拓く道筋を探ります。(本記事は月刊『致知』2025年 1 月号対談「自立自尊の国、日本へ拓き進め!」より一部抜粋・編集したものです)
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移民政策の見直しを!
【稲村】
郵政民営化に加えて、私が警鐘を鳴らしてきたのが移民問題なんです。2024年6月末時点の在留外国人数は、350万8956人と、前年末比17万7964人、5・2%増加し、過去最高を記録しています。日本で働く外国人労働者も200万人を超えており、先進国では4番目に多い水準です。これは異常な状況という他ありません。
【田母神】
由々しき問題ですね。
【稲村】
もちろん、私は外国人への差別や偏見を助長しようと言うわけではありません。むしろ人手不足を解消するなどという安易な理由で移民受け入れを進めれば、日本人・外国人双方にとって不幸な結果を招くと言いたいんです。
例えば、これは私が名古屋の飲食店で経験したことですが、注文はタッチパネルで省力化され、十人の従業員中、日本人はレジを担当する一人だけでした。あとは全員たどたどしい日本語を話す外国人です。そのうちの一人に声を掛けると、「日本人と会話する機会もなく、給料も安くて不満だ」と英語で私に訴えてきました。これでは、この飲食店がコスト面で独り勝ちするのは当然でしょう。
こうしたことが全国で行われていけば、日本人、外国人、いずれの賃金も低く抑えられ、デフレ圧力を生み、日本経済にとって決してプラスにならないはずです。
また、私は縁あって外国人労働者の処遇を改善しようとする団体の理事をしているのですが、外国人労働者をただ低賃金で使用するだけでは、皆「日本は立派な国だと思っていたけれども、搾取が酷い国だ」と憤慨して、反日になっていくんですよ。外国人たちの文化や言葉には全く関心がない、単なるコストの安い「労働力」とだけ見なしていると、こういうことになるんです。
最初の頃、「稲村さん、いらんことをしないで」と言われていましたが、最近では、その外国人労働者が働く企業にも変化が出て、処遇をなんとか改善したいと考える重役、経営者も出てきました。
【田母神】
そもそも日本が高度経済成長期の時も労働力が足りないと言われていましたが、移民を入れてはいないでしょう? いろんな工夫や投資をして生産性を上げ、経済成長を続けていったんです。
それがなぜいまできないのかというと、結局、日本に欧米型の株主資本主義、グローバル金融資本の勢力がどんどん入ってきて、企業が株主の配当を最大化しなければならなくなったからですよ。そのためには、なるべく従業員の賃金を低く抑えなくてはいけないということで、とにかく低賃金で働いてくれる外国人労働者を受け入れようと。私はいま日本にどんどん外国人労働者が入ってきているのは、経済界からの要求も大きいのではないかと思っています。
実際、この30年で日本企業の儲けは増えているにも拘らず、働く人の賃金はほとんど上がっていないんです。その儲けは一体どこにいっているんですか? 海外の投資家に流れていっているのではないですか? 全くおかしなことです。
【稲村】
同感ですね。移民政策には、労働者を低賃金で働かせ、儲けを増やしたいという、一部企業の思惑も関係していると思います。
それから安易な移民受け入れで懸念されるのは、治安・モラルの低下ですよ。例えば、業務を通じて身につけた技術や知識を母国に持ち帰ってもらうことを目的に創設された公的制度、「外国人技能実習生制度」では、いまでも年間数千名が職場から逃亡・失踪しており、2024年のデータではその数は9000名を超えて、過去最高となっています。この状況を放置すれば、いわば不法移民となった彼ら彼女らが、犯罪に手を染めないとも限りません。確実に日本の治安に影響してくるでしょう。
また、日本では外国人工作員の活動を取り締まる「スパイ防止法」が確立されていませんから、移民として来日した工作員が潜伏し、帰化や永住権を取得して堂々と活動していると言われます。
【田母神】
スパイ防止法は、早急に実現しなければなりませんね。
【稲村】
モラルにおいても、電車やバスの中で大声で騒ぐ、大勢で道端に座り込んで談笑する、周囲の目を気にすることなく男女の愛情表現をする、半裸の服装で刺青を隠そうとしないなど、日本社会では見られなかった光景が公共スペースで広がりつつあります。様々な価値観、文化的背景を持つ移民を安易に受け入れることで、日本社会のあり方が変質していく可能性があることを、私たちは十分に認識しておく必要があります。
そもそも移民政策は、ヨーロッパでは完全に失敗しているんですよ。グローバル化だ、多文化共生だなどと言って、ヨーロッパはたくさんの移民を受け入れてきましたけれども、いまや国民と移民との間に様々な摩擦が生じ、治安は悪化し、移民反対デモが頻発しています。この前も、イギリスのロンドンで移民政策に反対する百万人規模のデモがありましたね。
アメリカでも、移民・不法移民対策が大統領選挙の争点となり、トランプ大統領は不法移民に対して厳しい政策をとっています。
【田母神】
移民政策で成功した国はないんですよ。私たちは欧米の失敗を繰り返してはなりません。
【稲村】
ええ、移民や外国人労働者を受け入れるより前に、望まぬ失業をしたり、非正規雇用や低賃金に置かれたりしている多くの日本国民の雇用の安定に全力を尽くすべきです。
そして移民を受け入れるにしても、日本語教育を体系的に提供する制度の整備、日本文化を理解するプログラムの導入、低賃金労働の供給源として悪用されている技能実習生制度の抜本的な見直し、スパイ防止法の制定など、取り組むべきことがたくさんあります。
……(続きは本誌をご覧ください)
本対談記事の内容 ~全9ページ~
◇男同士の交わりは淡き水の如し
◇郵政民営化で日本国民が失ったもの
◇安易な移民政策は、社会の混乱と衰退を招く
◇アメリカによる日本経済弱体化政策
◇軍事の自立が日本の自立への道
◇日本経済復活へいまなすべきこと
◇正しい歴史観が祖国への誇りに繋がる
◇対等に付き合える真の親米を目指せ
◇平等で幸福な国、日本の未来を拓く
◇稲村公望(いなむら・こうぼう)
昭和22年奄美・徳之島生まれ。47年東京大学法学部政治学科卒業、同年郵政省入省。米国フレッチャー法律外交大学院修了。55年在タイ日本国大使館一等書記官。58年郵政省復帰。沖縄郵政管理事務所所長、総務省政策統括官(情報通信担当)などを歴任。平成15年日本郵政公社発足と同時に常務理事就任。「郵政民営化」に断固反対。24年新会社「日本郵便株式会社」副会長就任。26年日本郵便株式会社常任顧問を辞任。「月刊日本」客員編集委員。岡崎研究所特別研究員。令和元年春の叙勲で瑞宝中綬章受章。著書に『続々 黒潮文明論』(彩流社)など多数。
◇田母神俊雄(たもがみ・としお)
昭和23年福島県生まれ。防衛大学校卒業後、航空自衛隊入隊。航空幕僚監部装備部長、統合幕僚学校長、航空総隊司令官を経て、平成19年第29代航空幕僚長に就任。20年退官。現在は危機管理、政治、国際情勢分析の専門家として、講演、著述活動を行う。著書に『大東亜戦争を知らない日本人へ』(ワニブックス)『国家の本音』(徳間書店)『愛国者』(青林堂)『戦争の常識・非常識 戦争をしたがる文民、したくない軍人』(ビジネス社)など多数。
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