「当たり前のことを徹底してやる」——イエローハット創業者・鍵山秀三郎さんに学んだもの

去る1月2日、弊誌でもお馴染みのイエローハット創業者・鍵山秀三郎氏が91歳でお亡くなりました。一代で国内有数の自動車用品チェーンへと育て上げたばかりでなく、トイレ掃除を社会運動にまで高め、「掃除の神様」の異名を取ったことはつとに有名です。その破格の人生が示唆するものは何か。鍵山氏と親交の深かった上甲 晃氏と田中義人氏、そして鍵山氏のご子息である鍵山幸一郎氏に在りし日を振り返っていただき、鍵山氏が我われに遺してくれたものについて語り合っていただきました。(本記事は月刊『致知』2025年5月号 特集「磨すれども磷がず」より一部抜粋・編集したものです)

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知識のエリートではなく知恵のエリート

〈田中〉
相談役は、私ども外の人間には申し訳ないくらいに気を使ってくださいましたよ。とにかく相手が喜ぶこと、相手に負荷をかけないことに人一倍気を遣われた凡事徹底の人でしたね。

例えば、書類を処分する時は必ずホッチキスの針を取ること。高速道路を走る時には、料金所が近づく前に必ず現金を用意しておいて、集金する方や後ろの車を待たせないこと。そういう非常に細々したところまで徹底されていて、すごく勉強になりました。

日本を美しくする会の活動でルーマニアへご一緒した時も、鍵山ご夫妻がチェックアウトした部屋があまりにもきれいだったものだから、ホテルの方が「本当にお泊まりになったんですか?」って驚いていました(笑)。

〈上甲〉
地に足の着いた生き方をなさっていた方だと思うんです。

松下政経塾の塾生は、自分たちはエリートだという意識があるわけですよ。そしてエリートとして、何か特別で高度なことをしなければならないという意識が非常に強い。それと対極なのが鍵山さんで、人が軽視しがちな平凡で当たり前のことを徹底してやる。そういう生き方を貫かれていたわけです。

そういう鍵山さんですから、松下政経塾のパンフレットに塾生が掃除をしている写真を大きく載せていたのを見て、「これではダメです」とおっしゃったんです。「えっ、いけませんか? どうしてですか」とお聞きすると、「これは命じられて嫌々やっている掃除です。身が入っていません」と(笑)。

私は鍵山さんを、知恵のエリートだと思っています。知識のエリートではなく知恵のエリートだと。松下幸之助も同じです。お二人とも、体験、実践を通じて自分の心を磨き、人間性を高めていくことを大切にされていましたね。

〈鍵山〉
親父はとにかくすべて尊敬に値する存在なんですけど、ひと言でいえば、陰徳の人でしょうか。

自分でハガキを書けなくなってからは、私が代わりにお便りに目を通していましたが、そこでハッとしました。名もない一個人の方にたくさんの励ましの便りを出し続けているんです。生涯に200枚ぐらい出した相手もいたようですが、それをすることで、その人も親父も何か得をするわけでもなし。それでもやり続けてきたというのは、まさに陰徳だと思うんです。


~本記事の内容~
◇91年の人生で抱いた2つの悔い
◇受けた教えをいかに実践して生きるか
◇塾生の指導に行き詰まった末に
◇一人黙々と続けたトイレ掃除
◇「トイレ掃除で人生も会社も変わりました」
◇全国に広がった掃除の運動
◇社員、家族、そして自分自身に厳しかった父
◇当たり前のことを徹底してやる
◇過去相も現代相も決定相ではない
◇人生で最後に残るのは継続したことだけ
◇すべては1人から始まる
◇人間として最も意義ある生き方とは

本記事では全9ページにわたって近しいお三方ならではの逸話と、各々が受けた学びを語り合っていただきました。

〈致知電子版〉では全文お読みいただけます。詳細は下記バナーをクリック↓】

◎鍵山秀三郎さんには弊誌『致知』をご愛読いただいていました。創刊46周年を祝しお寄せいただいた推薦コメントはこちら↓↓◎


世に出版される雑誌のほとんどが人のスキャンダルや欠点、失敗を取り上げて嘲笑う内容の中で、『致知』はその人が失敗をもとにいかにして立ち上がってきたかという歩みに焦点を当てており、読む人に勇気と感動を与え続けてくれています。

日々ニュースで報道される忌まわしい事件を見ると、憂慮に堪えませんが、この悪しき風潮に歯止めをかける役目を持っているのが『致知』であると私は信じております。

◇上甲 晃(じょうこう・あきら)
昭和16年大阪市生まれ。40年京都大学教育学部卒業と同時に、松下電器産業(現・パナソニック)入社。56年松下政経塾に出向。理事・塾頭、常務理事・副塾長を歴任。平成8年松下電器産業を退職、志ネットワーク社を設立。翌年青年塾を創設。著書に『志のみ持参』『松下幸之助に学んだ人生で大事なこと』『人生の合い言葉』など。最新刊に『松下幸之助の教訓』(いずれも致知出版社)。

◇田中義人(たなか・よしひと)
昭和22年岐阜県生まれ。44年日本大学卒業。プリント基板製造の東海神栄電子工業を創業。平成3年鍵山秀三郎氏との出逢いによって掃除を開始。5年鍵山氏と共に「掃除に学ぶ会」を立ち上げる。「日本を美しくする会」会長として国内外への掃除道の普及に尽力。現在は同会相談役。

◇鍵山幸一郎(かぎやま・こういちろう)
昭和35年東京都生まれ。59年米国ミネソタ大学経営学部卒業。60年グローリー工業入社。米国駐在員として勤務。平成2年ローヤル(現・イエローハット)入社。取締役、常務取締役を経て、16年社長に就任。20年退任。特別顧問を経て、同年より幸栄企画社長及び朴の森代表。

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