2025年03月21日
~本記事は月刊誌『致知』2025年4月号 特集「人間における運の研究」掲載、鼎談の取材手記です~
人間の永遠のテーマに正面から挑む
誰にとっても関心が高い「運」。しかし、その運を呼び寄せる法則を掴むのは、人間にとっての永遠のテーマと言えるかもしれません。『致知』4月号(最新号)は「人間における運の研究」は、その運について正面から取り上げた特集です。
巻頭の座談会に登場されたのは、『致知』の連載でお馴染みの3人の先生方です。
一人目は「人生を照らす言葉」を執筆いただいている鈴木秀子さん。鈴木さんは長年、聖心女子大学で文学を講義した文学博士である一方、カトリックのシスターとして93歳の現在も講演活動を続け、人生に悩む数多くの人たちの声に耳を傾けておられます。
二人目は「巻頭の言葉」を執筆いただいている數土文夫さん。數土さんは日本を代表する鉄鋼メーカー・JFEスチールの 社長やJFEホールディングスの社長、東京電力会長、NHK経営委員会委員長を歴任するなど経済界の重鎮として活躍された方です。
三人目は「禅語に学ぶ」を執筆いただいている横田南嶺さん。横田さんは少年期に仏教に目覚め、大学を卒業後は禅の修行一筋に歩まれ、現在、名刹・鎌倉円覚寺を擁する臨済宗円覚寺派管長を務めておられます。
それぞれにお仕事や歩みは異なるものの、共通して言えるのは、長年、人間の生き方や経営のあり方について真剣に探究してこられたことです。「人間学の達人」とも言える先生方が語られる運に関するお話には説得力があり、実に滋味深いものがあります。
運はどこから来るのか、運を高める習慣とは
今回の座談会では、まず先生方に最近の出来事を振り返っていただくことからスタートしました。その上で「運とは何か」「運はどこから来るのか」 「運と人生との関係」など運の本質に迫る内容へと展開していきました。
とても興味深かったのが横田南峰さんの若かりし頃の話です。
「運がどこから来るのかという話でございますが、そこで思い出したのが私が20代の頃、京都の建仁寺で修行をしている時のことでした。朝、竹箒で庭を掃いておりますと、周りの僧が掃除の手を止めて私をジーッと見ているんです。何だろうと思ったのですが、ふと気づくと私の頭に鳩が止まっている(笑)。そういえば何だか重たいと感じていたんです。
それで、あっ、鳩がいたのかと気づいた瞬間に鳩は逃げていった。私は運もそんなものではなかろうかと思うんです。つまり、その場でひたむきに一所懸命にやっていると運がやって来るけれども、運が来たなと思った瞬間に遠ざかっていく」
経営の第一線で活躍してこられた數土さんは、運を高めるには、何よりもよき習慣を身につけることだと語られました。
「ではよい習慣とは何かといったら、一つは志を常に持っておくことだと私は考えています。人生の中では志が挫けるようなこともあるでしょう。その時は、新しい志を掲げて前進しなくてはいけない。志を変えることに逡巡してはいけないんです。次に読書をすることです。特に歴史書などを紐解くと、世の中には想像を絶するほど不幸な人たちがたくさんいることが分かる。そういう歴史を知るほど、自分の悩みの小ささが分かって穏やかになれる。この古きを知ってエネルギーに変えていく力を持つのが読書なのだと思います」
また、カトリックのシスターでもある鈴木さんは、宇宙の法則という視点から、運を高める方法を説かれました。
「私が考える運を高める習慣の一つは、宇宙の法則に意識を向けることだと思います。宇宙はすべてバランスで成り立っているように、人生もまた順境と逆境とのバランスを取りながら歩いていくものなのではないでしょうか。人間の目から見れば、順境がよくて逆境が悪いと、つい自分がよい方向、楽な方法へと考えがちなのですが、『致知』を読むと人生を実らせていった方々は皆、逆境を感謝で受け止め、乗り越えていった方ばかりだということが分かります」
運は勝手に舞い込むものではない
「運をよくする人、悪くする人の違いはどこにあるのか」「運をよくするために知っておきたい先人の教えとは」……先生方のお話は、さらに続きます。それぞれの体験をもとにした運談義に興味は尽きません。
今回の座談会を通して強く感じたのは、運は決して勝手に舞い込んでくるものではなく、私たちの意識や行動によって呼び寄せられるものだということです。數土さんが「誰かが何とかしてくれるという考えではなく、自分の意識と行動を変えてこそ運は開かれる」と独立自尊の大切さについて述べられていますが、まさに至言といえるでしょう。
私たちの『致知』もまた、読者の皆さまに幸せなよき人生を生きていただきたいという思いから、47年間、様々な登場者のご体験談を通して生き方のヒントを提供してきました。毎号の特集や連載を通して何かを掴み取っていただけたら幸いです。
◎鈴木秀子さん、數土文夫さん、横田南嶺さんも、弊誌『致知』をご愛読いただいています。創刊47周年を祝しお寄せいただいた推薦コメントはこちら↓↓◎
四十七年にわたり、『致知』は物質中心の価値観を超えて、自然環境、社会的公正を重視しながら、人間の真の幸せ、人間の魂のあり方を追求する生き方を、読者と共に求め続けてきました。これからも激変する今の時代に、最も必要とされる叡智を伝え続けてくれるのが、『致知』であると確信しております。
今日、世に一番求められている人間の思考のあり方、即ち「人間学」について考察し、その重要さを四十七年間訴え続けてきたのが『致知』です。読者は年齢、職業、性別等、多様ですが、これら幅広い読者層が一体となって編集方針の「人間学」に収斂し、育ててきた点も評価すべきです。希有の月刊誌であります。『致知』の存在は際だって重みを増してくるはずです。
人間として生まれてきたことは、尊いことであります。しかし人間らしく生きることは容易ではありません。常にすぐれた方の生き方に学び、その素晴らしさに感動する心が大切であります。それには『致知』が最適です。私も毎号拝読し、読むたびにその熱量に感動しています。
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