【編集長取材手記】名将が語り合う「勝運を掴む法則」——岡田武史×小久保裕紀

~本記事は月刊『致知』2025年4月号 特集「人間における運の研究」掲載対談の取材手記です~

昨年転機を迎えた名将同士が相まみえる

サッカーと野球。活動のフィールドは異なるものの、共に日本代表監督として世界の大舞台で戦った岡田武史さんと小久保裕紀さん。

岡田さんは2度にわたってワールドカップで指揮を執り、2010年の南アフリカ大会でベスト16に導きました。小久保さんは監督未経験ながら侍ジャパンを率い、2017年のWBCでベスト4の成績を収めました。

得難い体験を糧にいま、それぞれFC今治と福岡ソフトバンクホークスで目覚ましい実績を上げているお二方は、いかにして己の運命と組織の可能性を切り拓いてきたのでしょうか。名将が語り合うチームづくり、そして勝運の掴み方とは――。

月刊『致知』最新号(2025年4月号)特集「人間における運の研究」に岡田武史さんと小久保裕紀さんの対談記事が掲載されています。タイトルは「勝運を掴む」。

昨年はお二方にとって、大きな転機だったといえます。

岡田さんがFC今治のオーナーとしてクラブチームの経営に乗り出してちょうど10年の節目で、J2昇格を決めました。一方、小久保さんは昨年、福岡ソフトバンクホークスの二軍監督から一軍監督に就任した初年度に、チーム4年ぶりとなるリーグ優勝を果たしました。

調べてみると、数年前にあるイベントでお二方がトークショーに登壇し、読書家として知られる小久保さんが岡田さんの本を読み、「勝利の女神は細部に宿る」との教えに強く影響を受けていることを知りました。

かねて交流もあり、共に結果を出してきた名将同士に対談していただくことで、素晴らしい化学反応が生まれ、「勝運を掴む」というテーマに関して学びと感動溢れるお話を賜れるのではないか。

そんな経緯で双方に依頼をし、シーズン開幕前の1月15日に都内ホテルで対談取材がセッティングされました。

取材当日のトラブルも「運」に助けられて

実は取材当日、トラブルのため岡田さんの到着時間が大幅に遅れてしまう事態に見舞われましたが、そういう非常時にどのように対処するかが「運」を左右するのだと、身をもって学ぶことができたのは僥倖でした。

まず小久保さんの単独インタビューを30~40分ほど行い、レジュメに沿ってひと通り質問項目を聞き出した上で、岡田さん到着後は、それまでの小久保さんのお話に紐づけながら、岡田さんに質問を発し、小久保さんにも聞き役、引き立て役になっていただく。

小久保さんは次の予定が入っていたものの、当初の時間を延長してギリギリまで取材に応じてくださり、小久保さんが先に退室された後、岡田さんに残っていただき、追加の単独インタビューを行う。こうして運よく事なきを得ることができました。

その内容を凝縮して誌面10ページ、約13,000字の記事にまとめました。主な見出しは下記の通りです。

◇自分で判断できる選手を育てるために
◇あの時に比べたら重圧をはね除けた開幕戦
◇支えてくれた人を喜ばせたい一念で
◇自分のチームという意識を持つ
◇理念を共有することの大切さ
◇強いチームに共通するもの
◇これからはエラー&ラーンの時代
◇主体性を育む指導法とは
◇運を掴むためには
◇感謝が持つ不思議な力
◇豊かな人生を築いていくには

「昨シーズンの戦いを振り返って、その勝因と感慨」「新シーズンに向けて選手やコーチに伝えていること」に始まり、「チームづくりの道のりにおいて日々意識してきたこと、実践してきたこと」「選手や生徒の主体性を引き出す秘訣」から「いかにして勝運を掴むか」「運をよくする人と悪くする人の差」「組織を強くするために大切なリーダーの条件」「勝つチームの共通点」に至るまで、一冊の書籍になるほどの内容がギュッと凝縮されています。

勝運を掴むか否かは、ちょっとした心の習慣の積み重ね

お二方のお話の中でとりわけ心に響いた言葉をここで紹介します。それぞれご自身が実感されている人生の法則ともいえる名言です。

まず小久保さん。

起きた事実は変えられません。でもそれをどう受け止め、どう生かしていくかで運は左右されると思うんです。マイナスなことがあっても、よかったところに目を向けていくほうが豊かな人生になっていく。

次に岡田さん。

「勝利の女神は細部に宿る」──運は誰にでも、どこにでも平等に流れていて、それを掴むか掴み損ねるかの差じゃないかと思っています。そして運は常に準備していないと見過ごしてしまうし、小さなところが分かれ目になるんです

お二方の言葉に通底しているのは、「勝運を掴むか否かは、ちょっとした心の習慣の積み重ねである」ということでしょう。

他にも仕事や人生の糧となる数々の金言に溢れており、それは本誌の対談記事にたっぷりと収録されています。

最後に、20年以上にわたり弊誌月刊『致知』をご愛読くださっている岡田さんからいただいた貴重なメッセージを紹介します。

「知人の紹介で初めて『致知』を読んだことを今でも良く覚えています。まだまだ駆け出しの監督として答えのない問いを繰り返し、非常の決断に苦しんでいた私を勇気づけ、背中を押してくれました。目から鱗が落ちるように道が見えたことが幾度となくありました。そこにはその問いの答えよりもっと深い本質が書かれていました。
それからも目の前の事で視野が狭くなっている自分に本質を思い出させてくれ、新しい気づきと成長を与えてくれ、そして今、経営者として同じように『致知』に出てくる先達の教えに助けられています。人生の道を教えてくれる大切な師、それが『致知』です。ありがとう」

岡田さんと小久保さんがその人生体験を通して掴まれた「勝運を掴む法則」には、私たちの日常の仕事や人生に活かせるヒントが満載です。チームビルディングの達人ともいえる名将お二方が初めて語り合う人間学談義、運の本質論に興味は尽きません。


◇岡田武史(おかだ・たけし)
昭和31年大阪府生まれ。55年早稲田大学政治経済学部を卒業後、古河電気工業サッカー部に入団し、日本代表に選出。引退後は日本代表監督として9年W杯フランス大会で日本初の本選出場、22年W杯南アフリカ大会でベスト16他にコンサドーレ札幌、横浜F・マリノス、中国スーパーリーグの杭州緑城で監督を歴任。26年FC今治オーナーに就任。著書に『岡田メソッド』(英治出版)、共著に『勝負哲学』(サンマーク出版)など。

◇小久保裕紀(こくぼ・ひろき)
昭和46年和歌山県生まれ。平成6年青山学院大学卒業後、福岡ダイエーホークスに入団。平成15年読売ジャイアンツにトレード。19年古巣の福岡ソフトバンクホークスに移籍。24年現役引退。25年侍ジャパン代表監督に就任。29年3月まで務め、WBCベスト4。令和2年指導者としてホークスに復帰。令和6年より一軍監督。著書に『開き直る権利』(朝日新聞出版)、共著に『結果を出す二軍の教え』(KADOKAWA)など。

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