【編集長取材手記】成功している一流経営者はなぜ運がいいのか ——東急・野本弘文×GMO・熊谷正寿

~本記事は月刊『致知』2025年4月号 特集「人間における運の研究」掲載対談の取材手記です~

特集「人間における運の研究」に込めた思い

日本で唯一の人間学を学ぶ月刊誌『致知』は毎号、独自の特集テーマを立て、それに相応しい方々に光を当てることで、そのテーマを掘り下げていく編集方針を創刊以来47年貫いてまいりました。

最新号(2025年4月号)の特集テーマは「人間における運の研究」です。

弊誌ではこれまでも「運」に関するテーマを折に触れて組んできました。経営者、アスリート、料理人、医者、作家、科学者……職業のジャンルを問わず、各界の第一線で活躍されている一流の方々にお会いし、質問を発するたび、「私は運がいいんです」と口を揃える。「私は運が悪いんです」と答えた人は誰一人としていません。これは驚くべき事実です。

交通、不動産、生活サービス、ホテル・リゾートを事業の柱にまちづくりを手掛け、216社7法人で構成する東急グループを統括する野本弘文さんと、27歳の時に徒手空拳で創業した会社を34年後の現在上場企業10社を含む2800億円規模のGMOインターネットグループへと導いてきた熊谷正寿さん。このお二方もまた然りです。

果たして、企業経営と運に相関関係はあるのでしょうか――。

『致知』2025年4月号特集「人間における運の研究」の締め括りに野本弘文さんと熊谷正寿さんの対談記事が掲載されています。タイトルは「運を高める生き方」。

出逢いが実を結ぶために大切なこと

この対談企画が生まれたのは、昨年4月に弊誌連載「20代をどう生きるか」で熊谷さんを取材させていただいた時のことです。

熊谷さんは「実は御誌が創刊間もない頃、私が22歳の時からその存在を知っていました。20年前にご取材いただいたことはもちろん、直接手に触れる機会も多くあり、本当に素晴らしい雑誌だなと思っていたんです。ですから、今回ご取材のお話をいただいた際はすぐにお受けいたしました」とおっしゃり、タイトなスケジュールにも拘らず、私たちのために時間を捻出してくださいました。

創業期の歩みといまの若い世代へのメッセージについて素晴らしいお話を賜りましたが、取材終了後の雑談の中で東急の野本会長を大変尊敬していると伺い、お二方を組み合わせることに思い至ったのです。

お二方の出逢いに関しては、本誌に掲載されていますが、紙幅の関係で割愛せざるを得なかったエピソードをご紹介します。

〈熊谷〉
初めてじっくりお話しさせていただいたのは、大和証券の鈴木茂晴会長(現・名誉顧問)がランチ会をセッティングしてくださった時でしたね。実はその前にご依頼事をいただいたんです。

というのも、東急さんと大和証券さんが指揮者の西本智実さんを応援しておられて、西本さんは年一回、自費でオーケストラを連れてヴァチカン市国に行かれていました。

莫大な費用がかかるので、西本さんがヴァチカンの枢機卿に相談したところ、お金の工面はできないけど、ワインをつくったらヴァチカン公認のシールをあげる。そのワインの収益でヴァチカンに来なさいと。

その話を西本さんが野本会長と鈴木会長に持ちかけられ、頭を悩ませていた時、ちょうど目の前にワイン好きな私が現れた(笑)。

〈野本〉
そうでしたね(笑)。

〈熊谷〉
当然ワインをつくったことはなかったんですけど、ワインの会社に出資していたこともあり、それ以上に、これは天から降って湧いたチャンスだと。

一所懸命やってちゃんと実績を出す姿を二人の先輩に見ていただこうと思い、実際にワインをつくったんです。

〈野本〉
口約束で終わらせず、何気ない縁を掴んで実を結ばせるところが素晴らしいですよ。

〈熊谷〉
当社はもちろん、東急さんと大和証券さんでも売っていただいて、その資金で西本さんはヴァチカンに行かれていると。このプロジェクトを完成させたことで、そこから一層親しくさせていただいています。

人との何気ないご縁を生かし、真の出逢いとして実を結ばせるためには何が大事か。そのことを熊谷さんの実践から教えられます。

誌面に収まり切らないほど濃密な人間学談義に

この対談取材は1月21日(火)、渋谷をはじめ東京の街並みを一望できるセルリアンタワー東急ホテル40階のタワーズバー「ベロビスト」にて行われました。

多忙を極める経営者同士だけに取材は1時間半に満たない時間でしたが、10ページ約1万4000字の紙幅では到底収まり切らないほど濃密な人間学談義になりました。お二方が体験を通じて掴んだ「運を高める生き方」は必読と言えるでしょう。
主な見出しは下記の通りです。

◇素晴らしい人との出逢いがすべての始まり
◇まちづくりを手掛ける上で大切にしていること
◇AIを使えるか否かで人間とサルの差になる
◇東急グループに伝わる五島慶太翁の創業精神
◇全パートナーが共有する「GMOイズム」
◇「夢・人生ピラミッド」でどん底から這い上がった
◇エリートコースではない人間が社長に就いた要因
◇コロナ禍での開業という試練を乗り越えた閃き
◇400億円赤字の逆境でも誰一人辞めなかった理由
◇強い組織をつくるリーダーの心得
◇努力なくして運は掴めず 感謝なくして運は続かず

「お二人の出逢い」や「企業を取り巻く環境の変化、それを受けていま注力している取り組み」に始まり、「入社や起業のきっかけ、飛躍への転機」「特に影響を受けた人や本」「振り返って、運がよかったと感じる出来事」「最大の逆境や試練──それをどう乗り越えてきたか、それを通じて練り上げられた経営哲学や人生信条」、さらには「組織を強くするために大切なこと」「日頃、社員さんによく伝えているメッセージ」「運をよくする人と悪くする人の差」「成功している経営者の共通点」など、一冊の書籍になるほどの内容がギュッと凝縮されています。

名経営者が語る「運のいい人の共通点」

「運を高める生き方」に関するお二方の言葉が忘れられません。

「努力なくして運は掴めず 感謝なくして運は続かず」人生は絶えず努力、感謝、謙虚、これが一番大事だと心の底から実感しています――熊谷正寿

運のいい人はいつも明るくポジティブで前向き。何があっても揺らぐことのない信念を持っていて、失敗を恐れずにチャレンジする――野本弘文

まさに人生の真理を突いた金言です。最後に、ここだけの取材秘話として、「日々欠かさない習慣はありますか」と質問を投げかけた際の本誌未収録エピソードをお伝えします。

〈熊谷〉
精神的な部分はもちろん、身体的には運動することも大事ですよね。運動は運を動かすと書きますから。実際、運動しているとポジティブになれますし、運動しないと体が弱ってきてネガティブになっていく。

〈野本〉
健康であることが根本ですよね。

〈熊谷〉
そうそう。いつもセルリアンタワーのジムにお世話になっています(笑)。自宅にもオフィスにもプライベートジェットの中にもトレーニング器具を置いていて、いつでもどこでもできるようにしているんです。

〈野本〉
私は昨年喜寿を迎えましたが、いまもゴルフをやっていて、いつまで200ヤード飛ばせるかと。

〈熊谷〉
それは驚異的です。

〈野本〉
実は70歳くらいの時に飛距離が落ちてしまって、おかしいなと。脚の筋肉が衰えていることに気づき、それからスクワットを1日100回くらい、腕立て伏せを30回くらい。

私はジムに行くのが面倒なので、家でテレビを見ながらとか寝る前にちょっとやる程度ですけどね。もう7年やっています。わざわざ公言するのは、そうやって自分に負荷をかけないと怠けちゃうから(笑)。とにかく続けることが大事です。

野本さんと熊谷さんが体験を通して掴まれた「運を高める生き方」には、私たちの日常の仕事や人生に活かせるヒントが満載です。名経営者のお二方が初めて語り合う人間学談義、運の本質論、リーダーのあり方に興味は尽きません。


◇野本弘文(のもと・ひろふみ)
昭和22年福岡県生まれ。46年早稲田大学理工学部卒業後、東京急行電鉄(現・東急)入社。63年グループ会社である東急不動産に出向。平成13年事業戦略推進本部メディア事業室長、16年グループ会社でケーブルテレビ事業を行うイッツ・コミュニケーションズ取締役社長を経て、19年東京急行電鉄取締役。23年4月より取締役社長に就任。30年より取締役会長。東急グループ代表も務める。

◇熊谷正寿(くまがい・まさとし)
昭和38年長野県生まれ。平成3年ボイスメディア(現・GMOインターネットグループ)を設立。7年インターネット事業に進出し、11年には独立系ネットベンチャーとして日本で初めて店頭公開を果たす。現在は、上場企業10社を含むグループ114社を率いる。著書に『一冊の手帳で夢は必ずかなう』(かんき出版)『20代で始める「夢設計図」』(大和書房)など多数。

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