【取材手記】〝心の野球〟で子供の生きる力を育む〈本間一平/年中夢球〉


~本記事は月刊『致知』20252月号 致知随想「心の野球」の取材手記です~

野球講演家・年中夢球

野球を通じて子供たちの人間力を育成したい——。

そんな思いで少年野球の指導に取り組む本間一平さん。普段は、「野球講演家・年中夢球」として活動しています。

「野球講演家」。聞き馴染みのない肩書ですが、一体どんな活動をされているのでしょうか。

取り組まれているのは、主に野球チームの指導と親子を対象とした講演。聞けば、全国各地から指導・講演の依頼が絶えないといい、インスタグラムのフォロワーはなんと6.5万人を数えます。全国の野球関係者を惹きつけるその魅力とは何か。

本間さんが一躍有名になった背景には、2018年に出版された『球育』の存在があります。

この本に書かれているのは、技術論ではなく、心のあり方。その内容は、「人生で大切な事柄を野球を通して育む」というスタンスで貫かれています。

技術偏重の時代にあって、まさにこの「心のあり方」を重視した内容が、球児の保護者や指導者の心を掴んだのです。

 

〈写真提供:本間一平様〉

心の野球とは

心のあり方を重視した野球、すなわち「心の野球」とは具体的にどういったものなのでしょうか。実際にあった子供たちとのやり取りを本誌から抜粋して紹介します。

かつて私が指導した子供の中に、グローブを磨かない子がいました。

その子に対して私はひと言、「きょう使った水筒を明日までにピカピカに磨いてきて」と伝えました。相当時間をかけて磨いてきたのでしょう。翌日彼が持ってきた水筒は、新品のように綺麗になっていました。

「水筒一つ磨くことがこんなに大変なことだとは思いませんでした」

毎日野球ができているということの裏に、どれだけの人の苦労があるか。道具一つにどれだけ親の愛情が込められているかを、彼は野球を通じて学んだことでしょう。

これはほんの些細な例ですが、本人はその時野球をしているつもりでも、そこにおける一挙手一投足はすべて人生に繋がっています。

スパイクのかかとを踏んでいる、スパイクの紐を一回一回結び直さない、鞄の中が汚い。野球の時に出てしまうこういった人間性が、社会に出た後、ここぞという局面で表れるのです。

普段何となくやり過ごしている細かい事柄は、全て自分の心の発露であり、良くも悪くも心のあり方が人間をつくっていく、というのが本間さんの考えです。心のあり方の重要性を教えられます。

本間さんは言います。

著書や講演、日々の練習の中で子供たちに伝えているのは、最後までやり切ること、周りに感謝すること、相手を思いやることなど、どれも人として当たり前の事柄です。

野球の技術は選手生命を終えれば手放すことになりますが、野球を通して培ったそのような普遍的な力は、社会に出てから豊かに生きることに直結していきます。

指導者の人間力が問われる中、心のあり方を第一義に置いた本間さんの指導に、子供たちの未来に希望を見る思いがします。

心を育てることが野球の実力にも比例してくる

注目すべきは、記事の中で、心の力を育てることが野球の実力にも比例してくると仰っていることです。

本間さんが熱を入れて指導してきた神奈川県の「横浜旭リトルリーグ」は、一昨年、見事全国3位に輝きました。その他にも、出場人数ギリギリのチームを県大会優勝、関東大会準優勝に導くなど、「心の野球」は数々のチームの発展を支えてきました。

私自身の指導において、勝つことは目的ではありません。子供たちが勝利を目指す以上勝敗は重要ですが、生きていく上で大切な力を野球というツールを通して身につけてもらうことが何よりも大切です。

そしてむしろその「生きる力」が、昨年も横浜旭リトルリーグが全国3位に輝いたように、野球の実力にも比例してくることを実感しています。

心を育てることが野球の実力にも比例してくる——打ち立ててきた数々の実績が、その証左と言えるでしょう。

人生のどん底から

いまや野球指導者や保護者の間でカリスマ的存在となった本間さん。しかし意外にも、過去には想像を絶する苦労がありました。

私は7年前、人生のどん底にいました。経営していた学習塾が倒産したのです。

翌年に娘の大学受験、息子の高校受験を控える中でしたが、48歳にして多額の借金を負い、入学金を払う余裕もないほど生活は困窮しました。以降、学習塾、倉庫管理、清掃のアルバイトを掛け持ちし、明け方まで働きました。

睡眠3時間、一袋6個入りのパンを朝昼晩と分けて食べるような生活に限界を感じ、真剣に死を考えていたその時でした。どうせならば、最後に自分のやりたいことをやって終わろう。そう思い立ち、野球指導に関するブログを書き始めたのです。

現在の姿からは想像もできないようなどん底で、本間さんはいかに再起し、現在の活動に至ったのか。

本誌ではその過程を辿り、挫折から這い上がってきた立場ゆえに伝えたいメッセージ、心の野球に懸ける思いを紹介しています。

ぜひ本誌をご覧ください。
                

〈写真提供:本間一平様〉

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