苦しい時は、本を開く——第6代東京電力社長・平岩外四氏を支えた言葉とは


「経営自体が、すでに逆境との戦い」——そう語るのは、第6代東京電力社長の平岩外四氏です。平岩氏はいかにして迫りくる逆境に処してこられたのか。平岩氏を支えたという言葉をご紹介します。対談のお相手は、作家の小島直記氏です。(本文は1983年掲載当時のものです)

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経営自体が逆境との戦い

<小島>
ところで、私は人間というのは大小を問わず、いろんな苦境を切り抜けていくうちに自覚し、発奮し、努力して自己改造をなしとげていくと思いますが、平岩さんの場合、そういう逆境というのは……。

<平岩>
私は、常に逆境だと思ってましたね。

<小島>
ああ、なるほど。

<平岩>
逆境というのは、要するに経営自体が、すでに逆境との戦いだと思うんです。

自分が権力をどうして行使していくかということじゃなしに、経営の中で、問題点を
どう解決していくかということ。それが逆境だと私は思っています。

<小島>
ちゃらんぽらんにやれば、これは簡単でしょうけど、これを真剣に考えたら、毎日が地獄でしょうね。

<平岩>
そうですね。だから、社長というのはいい仕事じゃないと思いますね。しかし、苦しいときはやはり、本を開きますね。

例えば、小島先生がお書きになっている先人の生きざまの軌跡みたいなもの、その人がこういうときにどういう態度をとったとか、そういう文章が、ぱっと自分の気持ちの中に入ってきて、それが自分を鼓舞してくれることがありますよ。

<小島>
いや、だから、平岩さんのような達人に読まれるというのは、こわいです。私はわかっていて書いているのではなくて、こういうことであろうと信じて書いているわけです。

それを達人の目で評価していただく。これはわれわれ、物書きの冥利です。しかし、実際、私自身、そういう大達人の生涯を考えると、仕事の励みになります。

<平岩>
それはひとつの支えになりますね。

私が社長に就任したとき、安岡正篤先生が書いてくださいましたのは、

「冷に耐え、苦に耐え、煩に耐え、閑に耐え、激せず、躁がず、競わず、随わず、もって大事をなすべし」

という言葉です。

<小島>
王陽明の言葉ですね。

<平岩>
はい。社長に就任した頃は、そういうことを一生懸命、繰り返しながら、自分を持ちこたえてきたような感じがしますよね。


(本記事は月刊『致知』1983年1月号 特集「苦境の脱出」より記事の一部を抜粋・編集したものです)

 

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◇平岩外四(ひらいわ・がいし)
大正3 年生まれ。昭和14 年東大法学部法律学科卒業、同年東京電灯入社。同17 年関東配電、同26 年東京電力に引継入社。同43 年取締役、同51 年社長。

◇小島直記(こじま・なおき)
大正8 年福岡県八女市生まれ。昭和18 年、東大経済学部卒。経済人などの伝記小説で知られる。

 

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