【何を読めばよいか、悩めるお母さんへ】 東大理Ⅲの四兄妹はこうして生まれた――佐藤亮子さんが語る「読み聞かせのすごい力」

4人の兄妹全員を東大理Ⅲ合格へ導き、現在は進学塾のアドバイザーとして活躍中の佐藤亮子さん。わが子が生まれた時、「人間として豊かな人生を送ってほしい」と願い、始めたのが「絵本の読み聞かせ」だったといいます。その数は、3歳までにそれぞれ1万冊以上にものぼります。『子どもの脳がグングン育つ読み聞かせのすごい力』では、佐藤さんが“これだけは絶対に読んでほしい”と考える絵本ベスト50冊を厳選。「本の読み聞かせが子どもの脳や心の成長に とてもよいとは聞いているけれど、何を読めばいいか分からない……」というお母さんたちの悩みに回答を示すとともに、読み聞かせが子どもの脳に良い理由や、その効能、実践する上での心得などについても詳しく解説しています。本日は、本書より「はじめに」の全文を公開いたします。

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ネット社会で子どもを育てるということ

21世紀は、人類にとって一体どのような時代になるのでしょうか。 私たちが住んでいる地球は、陸海空とどこを見ても心配なことだらけで人間の知恵でなんとかしないとならない一刻の猶予もままならない状態になっています。新型コロナウイルスについても、すでに3年以上も予防に努める生活をしいられて社会や家庭、学校などあらゆるところに軋みが生じています。また、ウクライナとロシアの戦争もまだまだ先が見えない状況で、世界の国々に広い分野で深刻な影響を及ぼして、私たちは毎日の生活を根本から考え直す必要に迫られている日々から抜け出せずにいます。そのような毎日は、子どもも大人も気持ちが暗くなるばかりです。

誰もが生きていくのが大変な状況の中、小さな子どもを育てるのは、これまで以上に非常に大変なことは想像に難くありません。しかし、周りがどんな状況であろうとも、子どもは毎日大きくなるし、確実に成長して大人に一歩一歩近づいているわけですから、世の中が落ち着くのを待ってから、なんとかしようということはできないわけです。今、目の前の子どもをなんとかして、育て上げなければならないと考えれば考えるほど、途方に暮れている保護者の方は多いのではないでしょうか? 

今までの、教育の考え方ややり方でいいの? と心配になっていると思います。しかも、身近にはインターネット社会が入り込んで、お母さんやお父さんが育った時代とは大きく変わっていますから、AIをはじめとしたネット情報、IT機器関係の扱いには頭を悩ますところです。最近は、その弊害が深刻になり子どもたちの心身の健康をむしばんでいるというニュースを目にすることも多くなりました。どうしたらいいのかと本当に心配でしょうがないと途方に暮れるのが現実です。

コロナ禍の下、人と人が会うことができなかったため、会議や仕事や授業などもオンラインになりました。今は、少しずつ戻ってきてはいるものの、人間同士のコミュニケーションは、どうするのがいいのかなど、人間関係の構築に関して根本的に考える機会になりました。人は決して一人では生きていくことはできず、他の人間との意思の疎通は人生の最重要事項だということは再確認したという感じです。

コミュニケーションというのは、なかなか習得するのに難しい技術で一朝一夕では身につけることはできません。今の時代は、直接会って話すより、携帯電話で連絡を取るほうが圧倒的に多いので、人間同士が面と向かって話し合うというのが苦手な若者も多いということです。いまや、インターネットは空気のようになっているし、こちらの部屋の空気は吸ってもいいけれど、隣の部屋の空気は吸ってはいけないとは言えないように、ネットの使用を都合よく制限することはできません。

しかし、子どもに関しては、生まれてから18歳まで、何も知らない子どもが大人になる大切な成長期なので、子どもを守るために気楽に新しいものはなんでもOKという対応ではダメなのです。今こそ、大人は子どもの成長に関して、より慎重になるべきだと思います。

「たくましく生きていく力」を育む読み聞かせ

人間は、精神的に非常に複雑な生き物で、思ったことをすべて言葉にはしません。時には思っていることと反対のことを言ったり、本心を隠したりもするので得てして相手を誤解したりする場合もあります。お互いに、目の動きや仕草で本音を探り合うこともあります。んといっても、まずコミュニケーションとは、とても複雑で難しいということをまず理解することから始める必要があります。子どもたちがこのような大変な時代を生きていくのに、今までよりよりしっかりしたコミュニケーション力や思考力をつけるにはどうしたらいいのでしょうか。思考力のもとは、いわば言葉の塊であり、子どもはその言葉を操りながら思考力を高めていきます。世の中は激変したように思われますが、人間そのものは何も変わらないので育て方は今までとはほとんど変わりません。子どもの体の中に、たくさんの言葉を入れて育てることから始めるという地道に育てることなのです。

言葉もいきなり生まれたばかりの子どもに難しい言葉を聞かせても体の中には入りません。子どもが楽しいと思う言葉から始めるべきでしょう。つまり、昔からの変わらない「絵本の読み聞かせ」は鉄板の方法といえます。「親の声で読み聞かせる」これにまさる方法はありません。それには、多少のコツがあり、より効果的な方法でできるだけたくさんの絵本を読むことが大切なのです。この本ではまず絶対に読んでほしい絵本とその読み方を中心に説明しました。内容を参考にしていただいて、ぜひお子さんと楽しくてためになり、心に残る絵本生活を送っていただきたいと思っております。

なお、第二章の「読み聞かせにおすすめの絵本」にはそれぞれ対象年齢を添えましたが、これはあくまでも目安です。絵本に綴られる美しい日本語には、できるだけ早めに触れるほうがよいですし、お母さんのお腹の中にいる時から、ぜひ読み聞かせをしてあげてほしいと願います。

子どもたちは大きくなって人生の荒波にもまれたとき、ふと読んでもらった絵本の一ページや一言を思い出すことがあるでしょう。その絵本を読んでもらったお母さんの膝の温かさ、柔らかな声、窓から差してくる日差しの明るさなどがふっと思い出され、そのことが子どもたちに生きる力を与えてくれるのは間違いありません。

絵本の読み聞かせで、子どもたちに、読解力・想像力・表現力・人間力などを育み、そして何より、「たくましく生きていく力」をつけてあげてほしいと願ってやみません。

本記事の内容は、『子どもの脳がグングン育つ読み聞かせのすごい力』(佐藤亮子・著)より抜粋しています。
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◇佐藤亮子(さとう・りょうこ)
大分県生まれ。津田塾大学卒業後、大分県内の私立高校で英語教師を務める。結婚後は専業主婦として長男、二男、三男、長女の四人の子を育て、全員東京大学理科三類に進学。現在、長男、二男、三男、長女は医師として活躍している。その育児法、教育法に注目が集まり、進学塾のアドバイザーを務めながら、子育てや勉強、受験をテーマに全国で講演を行う。著書に『「灘→東大理Ⅲ」の3兄弟を育てた母の秀才の育て方』(角川書店)『我が家はこうして読解力をつけました』(くもん出版)など多数。

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