「解体なくして再建なし」——世界トップレベルの技術でインフラ設備を支える日本コンクリートカッティングの〝創業の原点〟(代表取締役・村田啓輔)

本記事は月刊『致知』2024年9月号掲載記事を一部編集したものです~

先代の後ろ姿から掴んだ創業の原点

〈村田〉
当社は、世界トップレベルのカッティング技術を駆使して、騒音、粉塵、振動を最小限に抑えたビル解体工事など、都市部を中心とするインフラ再構築に貢献しています。

先代社長の藤本昭博が大阪で当社を創業したのは1976年。前身となる会社が解散した際、在籍していた藤本が業務を引き継ぎ、独立したのです。当初から仕事の引き合いは多く、藤本の遠縁に当たる私は大学在学中から仕事を手伝い、そのまま入社したのです。1994年のことでした。

入社して程なく遭遇したのが阪神・淡路大震災でした。壊滅した街を一日も早く復旧すべく、余震リスクがある中で鉄道の橋桁の修復作業等に身を挺して取り組んだ経験が、この仕事の価値と己の使命を自覚する転機となったのです。

社長に就任したのは2009年、36歳の時。先代からは教訓めいたことは何も言われませんでしたが、常にヒト、モノ、カネに余裕を持って経営する姿勢に私も倣ってきました。特に人の定着に苦労した経験から、労働環境の改善と技術指導に力を注ぐことで大卒採用を実現し、私の入社時に4人だった社員は24人に拡大しています。

加えて、徹底してニッチな技術力で勝負する先代の姿勢こそは、継承すべき創業の原点として何より大切にしてきました。当該業務に関わる世界の最新情報を常にウォッチし、最新機材を技術力の高い社員が運用することで、当社にしかできない難易度の高い工事を受注しているのです。

「コンクリートから人へ」を謳う民主党政権時代は仕事が激減しましたが、当社の技術を金属素材の切断にも生かし、営業先を従来の建設業界から製造業界にも広げたことで活路が開けました。スピードと確実性を武器に受注を拡大し、現在では製造業界の業務比率が7割に達して経営も安定。直近では売上高11億7,000万円を計上しています。

損得ではなく、善悪を判断基準に

〈村田〉
私がこうした経営人生の中で貫いてきたのは、損得ではなく、善悪を判断の基準にすることです。

転機になったのは、入社して10年経った頃に悪性リンパ腫を患い、約1年の療養生活を余儀なくされたことでした。結婚して数か月だったので妻に迷惑をかけまいと離婚を申し出ましたが、それを拒否して私を献身的に支えてくれた彼女の姿に、金儲けを仕事の目的にしていた私の価値観は大きく揺さぶられました。運よく復帰を果たしてからは、少し損をして生きること、感謝と寛容と謙虚の3Kを心懸けてきました。

この信条と共に、愛読する『致知』から学んだ人間学に基づいて、社員には常々お客様のことを徹底して考える情熱や、挨拶、5S等々、作業伝票に書くことができない業務姿勢の重要性を説いています。一人ひとりが上質な仕事を追求することで、お客様から選ばれる会社になるのです。

インフラ設備は、社会の変化や老朽化に伴い常にリニューアルを求められますが、解体なくして再建はなく、そこに私どもの使命があります。当社はこれからも社会の縁の下の力持ちとして尽力すると共に、この技術を世界にも展開していく考えです。


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