「笑顔と感謝だけあったら乗り越えていける」——絶望の中で見た希望の光 (山﨑理恵×岩朝しのぶ) 

重度の障碍を抱える音十愛さんの母として、また特定非営利活動法人「みらい予想図」の理事長として、支援が必要な子供たちのために日々奮闘する山崎理恵さん。幾多の困難、試練に見舞われながらも、乗り越えられてきたのはなぜか。対談のお相手は、山崎さんと同じく子供たちの支援に日々邁進するNPO法人「日本こども支援協会」代表理事の岩朝しのぶさんです。

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笑顔と感謝だけあったら乗り越えていける

<岩朝>
音十愛ちゃんはどのように成長していったのですか。

<山﨑>
私の頭の中はいつも音十愛のことでいっぱいでした。

自傷行為もものすごいですし、人の髪を引っ張ったり掻きむしったり大変な強度行動障碍があったんですね。

いろいろな障碍がデパートのように入っていて、目を離せばチューブは抜く、便は食べる、血みどろになる。

自分だけであれば育児放棄、虐待しかねない状態でした。

それを止めてくれたのが上の2人の子だったんですけど。

どん底にある時、光は見えないですよ。光があるとしたら諦めない気持ちだけです。

自傷行為の激しい子を朝まで抱っこしながら、一日生活するのが精いっぱいでした。

そうなると自分がどんどん卑屈になっていき、周囲の人と比較しながら「何で自分だけが」と思うようになるんです。

だけど、そんな絶望の中でもふと笑顔の自分がいることに気づきました。

その時、思ったんですね。

笑顔と感謝で乗り越えていこうと。

もちろん、現状は何一つ変わらないし、どん底なんだけれども、笑顔と感謝だけあったら乗り越えていけると思ったし、本当に乗り越えていけたんですよ。

<岩朝>
何かいい出会いに恵まれたのですね。

<山﨑>
ええ。音十愛が3歳になる前だったと思いますが、ある方が「高知県母親大会で思いを伝えなさい」と薦めてくださったんです。

そこはいろいろな悩みを抱えるお母さんたちの会で、支援者の方も行政の方もたくさん集まっておられました。

その頃、私は「医療ケアが必要な重い障碍児でも、早期に教育を受ける機会を与えてほしい」と県立盲学校幼稚部への入学を希望していました。

しかし前例がないというので門前払いされていたんです。

それなら自分の思いを発表したらどうかというアドバイスを受けて、私のこれまでの人生や思いを話させていただきました。

すると思わぬ共感の輪が広がり、社会的な運動へと発展していったんです。

「お母さん、言っただけでは駄目。実際に動かなければ」と言われて、街頭演説とかどんどん仕事が増えるわけですよ(笑)。

<岩朝>
そんなこと最初は考えていなかったのに、みたいな。

<山﨑>
そうなんです。そのうち新聞に投書しなさいという話になり、400字にまとめて出したところ、さらに連鎖の輪が広がり、団体がタッグを組んで2万筆を超える署名もいただきました。

そして、結果として高知県で初めて医療的ケア児の盲学校幼稚部への入学が認められたんです。


(本記事は月刊『致知』20248月号 特集「さらに前進」より一部抜粋・編集したものです)

【本記事の内容】
◆子どもたちの幸せを願って
◆「お母さん、この子には目がありません」
◆小児病棟で知った人間の生と死
◆ハンバーグを知らなかった5歳の女の子
◆笑顔と感謝だけあったら乗り越えていける
◆どん底からの逆転人生
◆愛着形成は家庭でしか育まれない
◆真実の愛が子どもたちを変える
◆重い障碍の子にも必ず役割がある

これまで多くの逆境を乗り越えながら前進を続けてきたお二人の歩みからは、真実の愛の力が、立ちはだかる人生の壁を乗り越えさせることを教えられます。【詳細・購読は下記バナーをクリック↓】。

 

 

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◇山﨑理恵(やまさき・りえ)
昭和42年香川県生まれ。高知市内の病院で看護師、ケアマネジャーとして勤務した後、平成17年重度の重複障碍児である音十愛さんを出産。29年特定非営利活動法人みらい予想図を設立し、理事長に就任。

◇岩朝しのぶ(いわさ・しのぶ)
昭和48年宮城県生まれ。企業経営を経て、平成22年特定非営利活動法人日本こども支援協会設立。自身も里親として女児を養育する傍ら、児童養育施設や里親の支援を通じて、社会養護の現状や里親制度の啓発に取り組む。

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