「事業は人なり」——総合設備業で山梨県トップシェアを誇る共信冷熱の〝創業の原点〟

山梨県を中心に冷凍・冷蔵設備をはじめ空調換気設備、厨房設備まで幅広く施工・メンテナンスを請け負う総合設備業を展開する共信冷熱。今年創業40周年の節目を迎えました。「お客様第一主義」を貫く同社はいかにして業界シェア県下トップを掴むに至ったのでしょうか。創業者であり、現会長の岸本務さんにこれまでの足跡と創業に込めた思いを語っていただきました。

染みついて離れぬ父母の言葉

手元には最低限の工具、中古のワゴン車一台のみ。昭和59年、少年時代からの念願だった独立創業は、自分の思い以外に確かなものは何もない、手探りの出発でした。

あれから40年――共信冷熱㈱は、地元山梨県を中心に冷凍・冷蔵設備をはじめ空調換気設備、厨房設備まで幅広く施工・メンテナンスを請け負う総合設備業を69名の社員と展開しています。創業以来、24時間365日、お困りがあれば駆けつける「お客様第一主義」を貫き、年商27億円、業界シェア県下トップを掴むまでになりました。

地味な業界と思われそうですが、例えばスーパーマーケットの冷凍ケースが少しの間でも故障すれば瞬く間に食品の鮮度は落ち、商品価値を失います。逆に緻密な管理を行えば、仕入れの2割は発生するといわれる不良在庫の抑止が可能になります。食の安全と小売店の経営にも資する、社会的意義の深い仕事なのです。

そのような当社の原点を思う時、脳裏には両親の姿が浮かびます。昭和26年、県南部の身延町に5人兄弟の4番目として生まれた私は、宮大工である父とは半年に1~2回しか会えずに育ちました。遠くの現場に通うため、土日もなく朝4時半に起きて出ていき、帰りは夜遅く。それでも僅かな時間を通じて「人の3倍働け」と諭されました。

また母は日頃、そんな働き者の父を「あの人はよう働く。親の姿をよく見ておくんだよ。頑張り屋だから」と褒め、人として正しい生き方を教えてくれました。これら父母の言葉が耳朶に残り、小学生の頃には自ずと独立願望を抱いていたように思います。

東京の工業大学を卒業後は独立を視野に、業務用冷凍機メーカーに就職。技術部で知識を蓄えて迎えた20代半ば、思わぬ形でチャンスは訪れました。結婚を機に山梨へ戻る旨を伝えると、甲府の特約代理店に後継者候補として入ることを打診されたのです。

ところがいざ帰郷すると、そこは高齢の社長と素人同然の従業員が居座る杜撰な代理店でした。社長の朝令暮改は日常茶飯事で、心労の絶えぬ中、これも反面教師と捉え営業と施工、修理に奔走。32歳の時、本社の元上司が動いてくださり、山梨地区を担う特約総代理店として独立できたのです。もっとも初めは自宅の物置が事務所代わりで、従業員は妻一人でした。冒頭に述べたのは当時の率直な心境です。

どんな仕事も「人」が決する
愚直に信頼を積み重ねよ

当初は前職の下請けのメンテナンス先が4社あるのみ、食い繋ぐのに必死でした。さらに社員を採用すれば指導にも時間を取られます。創業4年目、「このまま製品を売れなければ特約店を解約する」と迫られました。

しかし、もがく私を見かねた前職の担当者が県内の大型百貨店に同行訪問してくださり、希望が見えました。何と単価1000万円のショーケースの設計依頼をいただいたのです。

半ばお試しの採用でした。ただ私は施工後、メンテナンスを兼ね、他社が一度しか訪問しないところを二度、三度と足を運んでいました。その姿勢が先方の信頼を得たのかもしれません。以後、長年のお付き合いに発展させることができました。どんなに大きな仕事も、一人の姿勢如何で決まることを学びました。

機械の故障は時間を選びません。外出時は常にポケベルを服に忍ばせて留守番の妻から連絡を受け、夜は枕元に電話を置いて床に就く。小売店はお客様が来ない深夜早朝の依頼が多く、眠い目をこすりながら駆けつけたものです。同業者が嫌がる夜間や土日も真心を以て対応するうち、他社のお客様も取り込み、事業は徐々に拡大していきました。

一方、肌感覚で経営を続けることに危うさを感じ、指針を求めたのが京セラの創業者・稲盛和夫さんでした。会計の実務や経営理論に感銘を受け、長じて若手経営者が集う盛和塾の県下初の支部となる「盛和塾やまなし」を発足。稲盛塾長の掲げる京セラフィロソフィはまさに両親の教え、己の体験と合致して心の奥底に響き、当社の経営のベースとなりました。▲同社に飾られている稲盛和夫氏との写真

社員が誇りを持てる会社へ前進あるのみ

そうした中で、当社に大きな転機が訪れたのは、平成12年のことでした。お取引先のスーパーが倒産し、不当と思われる形で実に4500万円の不渡りを掴まされたのです。

当時、当社の経常利益は約800万円。重圧を感じつつ、中古の物件を購入して社屋を移転し、事業拡大による挽回に出ました。ところが不景気の煽りを受け、別の取引先が連続倒産し、計1億円の負債を抱えてしまいました。挙げ句の果てに、18名いた社員のうちベテランを含む5名が一斉に退職、戸惑いと失意に苛まれました。業績は落ち続け、流石に「倒産」の二文字がちらついたものです。

必死に模索を続けながら、ある時ハッとしました。深夜早朝に責任の重い作業が入る当社の仕事は、若手でも大変なもの。勤務体系の工夫や報酬には当然注力していたものの、忙しさにかまけて日報にも目を通さず、稲盛塾長が大切にした社員への愛情、本質的なコミュニケーションが全く足りていなかったと。

こうした痛みを伴う反省の下、挨拶や日報など社員への接し方を根本的に改めると共に、平成15年12月に全社会議を開き、経営状態を公開し、自らの給与を削って賞与を支給。全社員で前年並みの実績を出せるよう頑張ろうと、精いっぱい鼓舞しました。その甲斐あってか、年度末には例年実績に手が届くところまで回復させることができたのです。

こうした経験を踏まえ、当社では稲盛経営哲学を当社流に編み直した「共信フィロソフィ」を毎朝一項目ずつ唱和し、私自ら言葉の意味を解説。私も参加してコンパなどを開催し、若手を中心に社風創造に努めてまいりました。時を経て先年、別の会社にいた息子が発心して我が社に入り、令和4年に社長として立ってくれたのは大変喜ばしいことでした。

振り返って思うのは企業経営、経営者の努力に終わりはないこと。常に前進、これが原則なのです。

おかげさまで今年、創業40周年を迎えますが、常に正念場です。技術を以て真心を尽くす……当社のDNAとも言えるこの精神に共感する社員が多く育ってくれることを願わずにいられません。それが各人に物心両面の幸福をもたらし、当社が真にお客様にご満足いただける、つまり社員が心から誇りを持てるナンバーワン企業となる道だと信じています。


(本記事は月刊『致知』2024年4月号掲載記事を一部編集したものです

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