「演技は〝そう思って、そう演ずること〟」——俳優・榎木孝明が浅利慶太に学んだ演技の極意

時代劇から現代劇まで、俳優として幅広い作品に出演してきた榎木孝明氏。俳優業の傍ら、アジアへの旅や絵画、古武術、不食と、新しい世界に果敢に挑戦し、自らの可能性を追求し続けています。そんな氏が演技の基礎を培ったのは、「劇団四季」でした。無我夢中で駆け抜けたという20代の下積み時代を振り返っていただき、劇団四季創立者・浅利慶太さんから学んだ演技の極意に迫ります。

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劇団四季で学んだこと

〈榎木〉
入団当初は朝7時からレッスンを受け、午後は大学に通う。夕方から深夜までバイトして、夜中に家に着く。そして早朝に再び出掛けるという生活が続きました。その反動でレッスン中にしょっちゅう居眠りをしては、先輩から笑い者にされたものです。

それでも何とか学業との両立を図ったものの、あまりの忙しさに限界を感じていきました。どちらか一方の道を選ばざるを得ない。自問自答の末、大学3年生の時に中退を決断しました。

母親にその旨を伝えると、「何のために大学に入れたんだ」と涙ながらに止められましたが、「二兎を追う者は一兎をも得ず」という諺があるように、どっちつかずになるのは嫌だと自ら選択した以上、私の意志が揺らぐことはありませんでした。

四季での最初の3年間は研究生として呼吸法や発声訓練、ダンスに至る様々なレッスンを受けます。また実践の学びに重きを置き、研究生時代から昼間は子供ミュージカル、夜は劇団の本公演にエキストラ出演することも日常茶飯事でした。

何より厳しかったのは、3か月に1度行われる進級試験です。試験ではレッスンで学んだ歌や演技の習得度を見られ、基準に満たなかった場合はロッカーの荷物をまとめ、翌日には退団を余儀なくされます。ですから中退後もレッスンと舞台にバイトと、文字通り寝る暇もない日々の連続でした。

いま振り返るとあんなに精力的な時代があったのかと懐かしく思いますが、芝居が好きだからこそ、一切苦痛に感じませんでした。むしろ忙しかったおかげで、考え込まなかったことがよかったのかもしれません。バイトの休憩中に駐車場で振り付けを覚えるなど、僅かな時間も自主稽古に充てました。

不器用なりに根気強く、地道な努力が実を結んだのでしょうか。55人の同期が6人に絞り込まれる中、3年間の研修生生活を終え、劇団員になることが叶ったのです。

この経験から置かれた環境に不平不満を零したり、将来への不安に苛まれるのではなく、目の前の一瞬に全力を注ぐことが最高の生き方であると学びました。

また、創立者の浅利慶太さんより、芝居の基礎を徹底的に叩きこまれたことは感謝してもし切れません。一挙一動、ひと言発するごとに叱咤が飛んでくる。演技指導は厳しいものでしたが、この世界で生きていくためには欠かせないメンタルを鍛えていただきました。

「演技は〝そう思って、そう演ずること〟がすべての基本だ」

そこに嘘があったら、嘘の表現にしかならない。単純明快ながらも浅利さんが口癖のように繰り返していたこの言葉は、自分の中に刷り込まれています。


(本記事は月刊『致知』20245月号 連載「二十代をどう生きるか」より一部抜粋・編集したものです)

本記事では他にも、「1枚の広告が導いた芝居への道」「自分探しの旅で見つけたもの」「自我を捨て去る」等、芝居の道一筋に歩んできた榎木氏の20代の足跡には、あらゆる年代に通ずる仕事・人生の要諦が凝縮されています。全文は本誌をご覧ください!【詳細・購読は下記バナーをクリック↓】

 

◇ 榎木孝明(えのき・たかあき)
昭和31年鹿児島県生まれ。武蔵野美術大学デザイン科に学び、劇団四季入団。59年NHK朝の連続テレビ小説『ロマンス』でテレビ主演デビュー。その後俳優として映画『天と地と』、制作・主演『半次郎』『みとりし』、テレビ『浅見光彦シリーズ』、NHK大河ドラマ、舞台など多方面で活躍。その傍らアジアを中心に世界各地を旅し、世界の風景を描き続ける。著書に『エターナル・トラベラー』(でくのぼう出版)など多数。

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