日本電産(現ニデック)創業者・永守重信氏が語る、成功を分ける6つの「S」(『一生学べる仕事力大全』)

1978(昭和53)年に創刊された月刊誌『致知』の45周年を記念し刊行された、『一生学べる仕事力大全』。同誌では1万人以上の人物取材の中から「後世に残したい」54本のインタビューや対談記事を選び抜き、1冊にまとめました。
本書の中から、『致知』19907月号に掲載された、当時の日本電産(現・ニデック株式会社)社長・永守重信氏の、結果を生み出す6つの秘訣をご紹介します。

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能力の差は5倍意識の差は100倍

――年中無休ということですが、1日のサイクルはどういうふうな日課ですか。

<永守>
だいたい朝は550分に起きます。そしてすぐにシャワーを浴びて、6時から15分間ビジネスニュースを見ます。それから食事をして、服を着て、640分に迎えの車が来ます。朝早いですからラッシュアワーにかからないので655分には会社に着きます。もう20分遅いと会社まで450分かかりますよ。

世の中、何故ラッシュアワーが起こるかというと、9割の人が普通のことをしているからです。わずか10分か15分普通より早く行動することで、全然違う世界があるんです。ところが人間ほとんどが一緒のことをするんですね。

――それがわかるか、わからないかの差であると。

<永守>
そうです。だからうちの社員にはよそよりも10分早く来いと言います。その10分を早く来られる人間は世の中の10パーセントなんですね。それが意識の差なんです。

人間の能力の差なんていうのは、最大5倍くらいしかないですよ。知能とか知識とか経験とかはね。しかし意識の差は100倍あると私は言うんです。それさえ頭に入れておけば、どんな人間でも成功できる。

――ああ、能力の差は5倍だが、意識の差は100倍だと。

<永守>
ええ。東京に出張したときのことです。取引先の担当者に、繁盛しているというラーメン屋に連れていってもらったことがあります

外観はごく普通のラーメン屋でしたが、私たちが店の前に立った途端、中にいた若い店員がぱーっと入り口まで走ってきてドアを開け、「いらっしゃいませ」と大きな声で挨拶をするんです。そして席まで誘導してくれて、私たちがラーメンを注文すると、大きな声で調理場にオーダーを伝えてから、人なつっこい顔で「お客さんは関西から来られたのですか」なんて話しかけてくる。私たちと話している間も入り口に気を配って、客が店の前に立つと飛んでいく。ラーメンはごく普通で、味で繁盛しているというわけではないんですね。

つまり、他店と同程度の料金で5倍おいしいラーメンを作ったり、5分の1のスピードでラーメンを出すことはまず不可能です。しかし店員の意識を変えることによって、お客の気分を100倍よくすることはそれほど難しいことではない。この店が繁盛しているのは、ズバリ店員の意識の高さ、すなわち経営者の意識の高さなんです。おそらくこのラーメン屋の経営者は、ラーメンの味にこだわる以上に店員の意識改革にこだわっているのだと思います。

私の人材に対する考え方もこれとまったく同じです。能力の高い人を採用するというよりも、人並みの能力を持つ人材を採用して、彼らの意識を高めることに全力を傾注します。

結果を生み出す6つ秘訣

――社員の意識改革が成長、成功の要因であると。

<永守>
そうです。人より歩だけ進歩しなさいと言います。歩だけで全然違う世界を経験できる。性能でも、ベストを追求してはいかんと言うんです。ベストを追求すると、ものすごいコストと時間がかかります。ちょっとでいいんです。競争相手よりちょっとだけ早い、ちょっとだけいい、ちょっとだけ安い、それで十分だと。それで世界一になれる。ちょっと歩。だから10分早くする。それでいいんですよ。それを30分も1時間も早くしようと思うから続かないんです。

――そのちょっとの差を追求してこられて今日があるということでしょうか。

<永守>
成功の秘訣なんてないんです。だれでも出来るほんの歩。しかしだれでも出来るけれど、9割の人がやっていない。1割しかやっていないんです。いま、企業の中で勝ち組というのは1割でね、負け組9割。10社のうち1社。そんなふうに考えたら東大へ入るよりうんと楽です。

会社の社員の意識が一番出てくるのは出勤時間と職場の整理整頓です。それに電話の応対とかね。私はそれを6Sと言っているんですが、整理、整頓、清潔、清掃、躾、作法。これがすべてです。

――その6つをきちっと押さえておけばいいと。

<永守>
電話の応対はむちゃくちゃ、社員は遅刻、工場は汚い、それで収益が上がった会社があったら教えてもらいたいですよ。

――だれもが出来ることですね。

<永守>
全部出来ることです。博士号とれとか、文化勲章とれ、ノーベル賞とれって言われたら出来ませんけどね、職場をきれいに掃除する、人に会ったらおはようございますと言う、そんなものだれでも出来ます。しかし私が再建に行っている会社の社員のほとんどが最初は出来ません。それが出来てくるようになると収益が上がってきます。

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◇永守重信(ながもり・しげのぶ)
昭和19年京都府生まれ。職業訓練大学校(現・職業能力開発総合大学校)電気科卒業。487月、28歳で日本電産(株)を設立。63年、創業15年にして大阪証券取引所二部並びに京都証券取引所に上場。積極的なMAを進め、平成93月に日産自動車系列のトーソク(株)、102月に富士通系列の(株)コパルなどこの十数年で16社を傘下にする一方、同年10月には(株)東芝と(株)芝浦製作所との合弁で芝浦電産(株)を設立するなど業容を拡大。さらに同年9月には東京証券取引所一部上場および、大阪証券取引所一部に昇格を果たした。
※日本電産株式会社は、202341日に「ニデック株式会社」に社名を変更し、現在はニデック株式会社代表取締役会長 最高経営責任者。

 

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