【編集長取材手記】櫻井よしこ×中西輝政 未曽有の国難を乗り越えていく心構え


吉田松陰が遺した箴言

かつて吉田松陰はこう述べました。

「天下の大患は、其の大患たる所以(ゆえん)を知らざるに在り。苟(いやしく)も大患の大患たる所以を知らば、寧(いずく)んぞ之が計を為さざるを得んや」

いまの天下国家における大きな心配事は、その心配事、深い憂いの理由を知らないところにある。そもそも大きな憂い事の真の理由を知ったなら、どうしてそれに対処する計画を立てないでいられようか、という意味です。

約170年前、吉田松陰が発したこの言葉は、現代を生きる私たち日本人こそ真正面から受け止めるべき箴言に他なりません。

少子高齢化、人口減少、地方の活力衰退、外交安全保障、台湾有事、食料・エネルギーの依存、メディアの偏向報道……現在、我が国は様々な内憂外患を抱えていますが、そのことを正しく認識し、危機感を持って事に処している人たちが一体どれだけいるでしょうか。

日本を取り巻く状況は深刻さを増すばかりで、混迷窮まれりの感は否めません。どこに問題の根本原因があり、いかなる手を打っていけばよいか。いまの時代を生きる私たちにとって大切なことは何か。

保守論壇の重鎮である櫻井よしこ先生(国家基本問題研究所理事長)と中西輝政先生(京都大学名誉教授)が口を揃えるのは、世界最古を誇る我が国の歴史を学び、志を立て、未来への希望を抱いて前進することだといいます。国民一人ひとりの立志なくして立国なし。いまこそ日本人の覚醒、精神の甦りが問われているのです。

『致知』2024年2月号(1月1日発行)特集「立志立国」のトップ対談で、お二人には「日本の底力を発揮する時が来た」をテーマに大所高所から語り合っていただきました。

本質を突いた見識に学ぶ

2時間に及ぶ白熱の対談は、次の4点を軸に展開されました。

①日本の現状と課題
・国内で起こる諸問題で最も憂慮すべきこと

②世界の現状と課題
・ウクライナ、パレスチナ、台湾……
それぞれの情勢にまつわる対立の原因や問題の本質

③内憂外患に対処する道筋
・日本が直面する内憂外患に対してどのような手を打つべきか

④いま日本が果たすべき責任と使命
・国民一人ひとりに求められるあり方

そこで語り合った内容を凝縮して誌面11ページ、約13,000字の記事にまとめました。主な小見出しは下記の通りです。

・イスラエルとパレスチナ 争いの本質
・日本のメディアを覆う「対米ルサンチマン」
・事を成す上で大事な心のあり方「短期の悲観 長期の楽観」
・「国のために自分は何ができるのかを問う」ケネディ大統領の教え
・一番急がれるのは日本人の心、精神の復興
・国際情勢を捉える上で大切な三つの視点
・米英関係に学ぶ日本の生きる道筋
・対中政策の核心は毅然たる姿勢
・歴史を学ぶことで志が生まれる

櫻井よしこさんと中西輝政さんはこれまで幾度も弊誌で対談を組んできましたが、直近3回はコロナ禍のためオンライン取材となり、今回5年ぶりに対面を果たしました。

お二人とも久方ぶりの再会を喜ぶと共に、お互いの意見に共感し合う姿が印象的でした。日本及び世界の現状と課題、内憂外患に対処する方策、いま国民一人ひとりに求められるあり方について、その本質を突いた見識に学びます。

「人間学」に基づいた日本興国への道筋

本対談で刮目すべきは、単に時事問題や国際情勢についての解説に留まらず、人間いかに生くべきか、人種や時代を超えて求められる原理原則、つまり「人間学」に基づいた日本興国への道筋を論じている点です。

一例を挙げましょう。中西先生はこうおっしゃっています。

国民一人ひとりがこの国をどうしていくのかを真剣に考える精神風土を取り戻さなければいけません。

私が子供だった昭和20~30年代、まだ高度成長前のテレビやクーラーのない時代、大阪の下町でしたが、夏の暑い夜なんか軒先に涼み台を出して団扇で扇いでいるんですよ。お隣さんやお向かいさんも出てきて、大人同士が雑談していると、そのうちに「いまの池田勇人内閣はけしからん」とかいった政談が始まるわけです。

別に教育水準が高い町でもないし、インテリでもない。普通の職工さんたちが政治を滔々と論じ、真剣に国のあり方を考えていることが子供心に伝わってきました。

1961年にアメリカ大統領のジョン・F・ケネディが就任演説で述べた有名な言葉がありますね。

「国があなたのために何をしてくれるかを求めるのではなく、国のためにあなたは何ができるのかを問うてほしい」

これこそいまの日本人に必要不可欠な言葉であり、日本の政治家が勇気を持ってそれを語り続ければ、日本人が立ち直る大きなきっかけになると思います。

これに対して、櫻井先生も次のように応じられています。

これは今回のテーマ、志を立てるというところに繋がっていくと思いますが、やっぱり日本の国柄がどのようにつくられてきたかをよりよく理解することが基本です。

聖徳太子の「十七条憲法」まで遡って、『古事記』『日本書紀』に書かれている日本建国の物語を学ぶことによって、日中の彼我の差を認識すべきだと思います。

先ほど中西先生が「五箇条の御誓文」を取り上げられましたが、その第一条は「広く会議を興し万機公論に決すべし」、要するに民の声を聞きなさいと。これは「十七条憲法」の第十七条にも「夫(そ)れ事は独り断(さだ)むべからず。必ず衆と与(とも)に宜しく論ずべし」と書いてあるんです。

「十七条憲法」の制定は604年ですので、西洋に民主主義が誕生するずっと前から、日本では1400年以上にわたってこの思想が繋がっている。こんな国は他にないです。

こういうことを含め、世界最古である日本の歴史を多方面に学ぶことが一人ひとりの国民にとって決定的に大事です。歴史を知っているか否かで、その人の中から湧き出てくる日本人としての力が桁違いになるんです。

そのために歴史を学んでほしいですね。すべては歴史、自分の拠って立つ日本国とは何かをきちんと理解することで前向きに生きる力が湧き、志が生まれてくると思います。

お二人の先生からいただいたメッセージを糧に

このように「人間学」に重点を置かれている言論人だからこそ、日本で唯一の人間学を学ぶ月刊誌として45年の歴史を有する弊誌『致知』を応援してくださっているのでしょう。お二人から寄せていただいたメッセージをご紹介します。

まずは櫻井先生です。

〝『致知』創刊45周年おめでとうございます。
今ほど日本に雑誌『致知』が必要な時はありません。戦後の日本はGHQの価値観で半ば以上洗脳されてきました。その知的混沌の中で『致知』はいつも日本と日本の国柄を追求してきました。日本人らしく働き暮らし、志を完うし、社会・国家に奉じることを教えてきました。内外で混乱の深まる今、『致知』の存在感は重みを増すばかりです。これからも国家、国民の行く道を照らす灯であってほしいと思います。〟

続いて中西先生です。

〝『致知』が創刊45周年を迎えられたとのこと、まずは心よりお祝いの言葉をお届けしたいと思います。と同時に、『致知』のような雑誌が、わけても浮沈の激しい月刊誌の世界で、間もなく創刊後、半世紀を迎えてますます多くの読者を獲得し続けていることに、私は日本の将来に光明を見る思いが致します。
「人間は考える葦」という言葉があります。では、このか細く劣った存在としての人間は、何について考えるべきなのでしょうか。私は国際政治を考える立場の人間ですから、どうしても目先・足元の話に関心が向かいがちです。立場こそ違え、世の多くの人も同じでしょう。しかし、人が自らに与えられたその考える力は本来、何に向けるべきなのでしょうか。それはまず人間自身について、そして人生の意義やあるべき目標について、ではないかと思うのです。
この45年間、高度成長やバブル崩壊などこの国は多く浮沈を経験してきました。その中で、つねに変わらずこの人間と人生について学び続けることの大切さを多くの日本人に伝えてきた、『致知』の役割は今後も一層大きなものになってゆくことでしょう。〟

有り難いお二人の言葉を糧に、次なる50周年に向けて今後も人間学の一道を邁進し続けていく決意を新たにした正月となりました。

新年早々、能登半島地震や航空機衝突事故など、予期せぬ悲しい出来事が続いていますが、『致知』2月号に掲載されている櫻井先生と中西先生の対談記事「日本の底力を発揮する時が来た」を通して、未曽有の国難を乗り越えていく心構えを学んでいただければ幸いです。


◇櫻井よしこ(さくらい・よしこ)
ベトナム生まれ。ハワイ州立大学歴史学部卒業後、「クリスチャン・サイエンス・モニター」紙東京支局勤務。日本テレビニュースキャスターなどを経て、現在はフリージャーナリスト。平成19年に国家基本問題研究所を設立し、理事長に就任。23年第26回正論大賞受賞。24年インターネット配信の「言論テレビ」創設、若い世代への情報発信に取り組む。著書多数。近刊に『異形の敵 中国』(新潮社)『安倍晋三が生きた日本史』(産経新聞出版)。

◇中西輝政(なかにし・てるまさ)
昭和22年大阪府生まれ。京都大学法学部卒業。英国ケンブリッジ大学歴史学部大学院修了。京都大学助手、三重大学助教授、米国スタンフォード大学客員研究員、静岡県立大学教授を経て、京都大学大学院教授。平成24年退官。専攻は国際政治学、国際関係史、文明史。著書に『国民の覚悟』『賢国への道』(共に致知出版社)『大英帝国衰亡史』(PHP研究所)『アメリカ外交の魂』(文藝春秋)『帝国としての中国』(東洋経済新報社)など多数。近刊に『偽りの夜明けを超えて』(PHP研究所)。

▼『致知』2024年2月号 特集「立志立国」
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