「人のためになる何かをしよう」——22年間外国人実習生を受け入れ続ける理由(北陸国際協同組合理事長・砂子阪和夫)

富山県で外国人実習生の仲介に注力して22年。これまでベトナム、中国、インドネシア、カンボジアから計5,000人を超える実習生の仲介に携わってきたのが、北陸国際協同組合です。いかにして外国人の受け入れを成功に導いてきたのか。理事長の砂子阪和夫さんに組合立ち上げの経緯やご活動に懸ける想いを語っていただきました。

人材不足で悩む企業の力になりたい

〈砂子阪〉
「受け入れてよかった」「彼らに感謝したい」

当組合が、外国人実習生受け入れのお手伝いをした企業様からいただいた喜びの声です。

建設関連の会社を営んでいた私が、ある企業で初めて外国人労働者を目にしたのは1990年頃。当時は日本の職場で外国人の方々を見かけることはまだ稀で、その企業でいち早く登用されていたことは強く印象に残りました。

元より建設業界は慢性的な人手不足に悩まされてきました。何とか雇用にこぎ着けてもなかなか定着せず、引き止めれば足元を見られてさらに勤務態度が悪化する。程なく外国人技能実習制度が創設されることを知った私は、人の問題で困っている企業のために何か力になりたいと考え、地元富山で当組合を立ち上げ、外国人材の仲介を始めたのです。2001年、55歳の時でした。

営業や宣伝にはほとんど力を割いてきませんでしたが、それでも問い合わせは絶えず、22年間でベトナム、中国、インドネシア、カンボジアから累計5,000人以上の実習生を紹介。彼らは機械加工から食品製造まで、様々な分野で活躍し、そこで得た技術・知識を元に本国で活躍しています。

できることはすべてやる 実習生受け入れを成功させるために

〈砂子阪〉
文化も習慣も異なる外国人を雇用することは簡単ではありません。せっかく外国人を受け入れても、職場にうまく溶け込めなかったり、トラブルが生じてしまったりしては本末転倒です。

私どもはそうした不安を解消するために、まずお申し込みをいただいた企業様の要望を十分確認した上で、共に現地へ赴いて面接に立ち会います。あらかじめ基礎的な学力テストを実施して応募者を絞り、例えば溶接工を募集する場合は実際に溶接をやってもらい、技術レベルを確認します。

面接では様々な質問をしますが、私がまず重視するのは、明るい人柄です。受け入れ先にしっかり溶け込むためには人間性がとても大事であり、私は面接中にトイレへ行くふりをして、外で順番待ちをしている他の応募者たちの様子を見て本性を見極めたりもします。

採用が決まった実習生に対しては、来日するまで現地学校へ複数回赴いて指導を重ね、また来日後は着任までに組合が保有する2か所の研修所でそれぞれひと月ほど寝泊まりを共にしながら、日本語教育の他、教養(モラル・マナー)教育、職場にスムーズに順応するための規則・グループワークの研修、さらに日本文化・風習・日本人の考え方を教えて、日本社会への適応力を養います。

身寄りのない異国の地で働くのは心細いものです。私どもはそんな実習生たちに新しい布団や自転車を支給したり、息抜きを兼ねての日本語教室を毎月開催するなどして、彼らの生活を応援しています。利益を第一に考えるなら、私どもがやっているのは無駄なことばかりかもしれません。しかし、受け入れを成功させるには、その無駄に思われることこそが大事だと考え、限られた組合費の中で、できることはすべて実施しているのです。

日本でいかに過ごすかが十年後、二十年後の未来を左右する

〈砂子阪〉
外国人の受け入れに成功するには、企業側の姿勢も極めて重要です。実習生がよく溶け込んでいる職場では、彼らを大切な仲間として尊重し、十分なコミュニケーションが図られています。そうした企業では実習生に対し、

「とにかく可愛い。自分の子供ができたみたい。実習生が帰る日、泣くと思います」

「偉そうに日本語を教える社員が、時には彼らから教わることもある。会社が一段と団結してきたと思えた瞬間だ。彼らに感謝したい」

といった喜びの声が上がると共に、実習生と共に成長を果たそうという高い志も伝わってきます。

実習生が心を開ける職場環境を整えることが大切であり、ただ賃金が安いという理由だけで外国人材を求める企業はお断りしています。

とはいえ、現実はなかなか理想通りには運ばず、創業時から苦労の絶えない22年間だったともいえます。当初は異国へ来た自覚に乏しく、深夜に大声で騒いだり、暑い日に下着一枚で外を歩いたりする者もおり、苦情をいただいて通訳と共に現場へ急行することも度々ありました。

特に辛いのが、親身に世話をしていた実習生が失踪してしまうことです。「もっといい仕事がある」などと外国人を騙して連れ出す詐欺は後を断ちません。居場所が分かり名古屋や長野まで連れ戻しに行ったこともありますが、一度消息を絶つと戻ってくることは稀です。企業様や私宛の丁重な置き手紙を読んで、胸が締め付けられそうな思いをしたこともあります。私どもが先述した手厚い研修体制を敷いているのは、こうしたトラブルを防ぐためなのです。

実習生たちにいつも話して聞かせるのは、日本にいる間にいかに過ごすかが、10年後、20年後の自分の未来を大きく左右するということです。親が悲しむことは絶対にしないこと。地元へ帰ってから始まる人生の本番に備えて、しっかり勉強してほしい。それが私どもの願いなのです。

彼らが実習を無事に終え、家族が自慢できる人になり、地元で会社を起こして成功した、結婚して立派な家庭を築いた。そんな話を聞くと、我が事のように嬉しいものです。

世界をリードできるのは日本人以外にない

〈砂子阪〉
こうして今日まで組合活動を続けてこられたのは、『致知』と出逢えたからです。

学んだことを挙げれば切りがありませんが、とりわけ「一隅を照らす」という言葉、そして坂村真民先生の『何かをしよう』という詩は、創業時の思いと重なるものがあり、心に迷いが生じる度に原点へ引き戻してくれます。

「何かをしよう/みんなの人のためになる/何かをしよう/よく考えたら自分の体に合った/何かがある筈だ/弱い人には弱いなりに/老いた人には老いた人なりに/何かがある筈だ/生かされて生きているご恩返しに/小さいことでもいい/自分にできるものをさがして/何かをしよう/一年草でも/あんなに美しい花をつけて/終わってゆくではないか」

立派な志を抱いて日本へやってくる実習生たちと接していると、若者に覇気がなく、家庭や学校から徳育が失われ、国にビジョンのない日本の将来がとても気がかりです。人口減少が急速に進む中、深刻な人手不足に悩む企業が外国人材の力を借りるのは当面やむを得ないことではありますが、日本はもっと歴史や先人に学び、この難局を乗り越える生き筋を見出さなければなりません。これからの世界をリードできるのは日本人以外にない。そう私は信じています。

このことを踏まえ、私どもはこれからも「何かをしよう」という創業の原点を貫き、いささかなりとも国や企業の将来に貢献してまいりたいと願っています。


(本記事は月刊『致知』2023年10月号掲載記事を一部編集したものです)

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