自立学習と徳育で人の役に立つ〝人物〟を育てる——ショウイングループ会長・田中正徳

生徒が僅か3名しかいない無名塾からスタートして、校舎数300、生徒数8,000名を擁する大手塾へと躍進を遂げた松陰塾。同塾を運営するショウイングループ会長の田中正徳氏は、いかなる指導を実践してきたのでしょうか。社会の混迷が深まり、教育の重要性がますます高まる中、同塾の成長を支えるユニークな教育理念と学習法に迫りました。

吉田松陰の教えにもとづき人たる道を追求する徳育を実践

何のために勉強するのか──。この問いにハッキリ答えられる学習塾がどれほどあるでしょうか。

恥ずかしながら、1980年に兄と共に塾の経営を始めた私自身も、当初は明確な答えを持ち合わせていませんでした。もちろんお子様の成績を上げることは大前提ですが、教育を真剣に追求していくとどうしてもこの問題に突き当たるのです。

答えを示してくださったのが、幕末の志士を多数育て、明治維新の原動力となった吉田松陰先生でした。

「学は人たる所以を学ぶなり」

松陰先生は、勉強で一番学ぶべきことは、人間として大切なことは何か、人間はどのように生きていくべきかを知ることであると説かれています。

この教えに深く感動した私は、2008年に兄の元から独立し、松陰先生の名を冠した小中学生向けの学習塾「松陰塾」を立ち上げました。

松陰塾では、独自に開発した「ショウイン式自立学習法」を通じて、お子様が自ら進んで勉強に取り組むための支援をすると共に、松陰先生の教えにもとづく徳育を実践しています。

入塾いただいたお子様には、松陰先生の名言を掲載した「松陰塾門下生読本」を配布し、人への思いやり、親孝行、礼儀礼節などの大切さを、日々の学習の中で説いています。

各教室からは、成績が向上するだけでなく、しっかりした挨拶ができるようになった、自分の考えをきちんと伝えられるようになった等々、お子様の人間的成長が窺える報告が多数寄せられており、おかげさまで私どもショウイングループは、現在全国三百か所で松陰塾をFC展開し、約8000名のお子様に学んでいただいています。

折しも2015年には松陰先生の私塾・松下村塾が世界遺産に登録されました。私どもは松陰先生への感謝と、吉田松陰の名に恥じない教育を実践する証として、先生をご祭神とする山口県萩市の松陰神社境内に「顕彰碑」と、松陰先生の名言を刻んだ25基の句碑を配した「学びの道」を設置させていただきました。さらに昨年、同市中心街に建立した研修センター「交友館」の敷地内に、実測図から完全再現した松下村塾を模築するなど、松陰先生の顕彰活動にも力を注いでいます。

ありがたいことに、こうした活動を松陰神社の上田俊成名誉宮司に高く評価していただき、松陰塾は松下村塾を継承する塾としてお墨付きをいただきました。
松陰先生の教えにもとづき、人の役に立つ人物を育てたい。それこそが、私どもが松陰塾で追求する勉強の目的なのです。

子どもが自ら進んで勉強に取り組むショウイン式自立学習法

いまでこそ松陰塾は高い評価をいただいていますが、ここに至る道のりは決して平坦ではありませんでした。

学習塾を始めたのは、学生時代に携わった家庭教師のアルバイト経験を元に、世の中の役に立つ事業を立ち上げ、全国に展開していきたいという夢を抱いたことがきっかけでした。

最初の生徒は僅か3人。とにかく誰でもいいから入ってほしい、という状況からのスタートでした。そこから懸命に生徒を集め、少しずつ教室を増やしていったのです。教室が8校になった頃、教室を任せていた講師たちが生徒を連れて一斉に独立してしまったことがありました。

また、運営資金が尽きて塾の継続を断念しかけたこともありました。相次ぐ試練に、「なぜ自分ばかりがこんな苦労をしなければならないのか」と気持ちが塞ぐこともありましたが、多くの方々に支えていただいたおかげで初志を貫くことができました。

こうした中で独自に確立したのが、先述した「ショウイン式自立学習法」です。従来は、懇切丁寧に勉強を教えることが塾の役割と考えられてきました。しかし、そのやり方ではお子様の依存心を助長してしまい、自分から進んで勉強する習慣が身につきにくいのが難点です。

吉田松陰先生は松下村塾で、塾生を教えるというよりは、一人ひとりの個性を見抜いて課題を与え、自分で考える力を養う教育を行っていました。これに倣って私どもが実践しているのが自立学習であり、それを形にしたのが「ショウイン式自立学習法」なのです。

ショウイン式では、まず鉛筆の持ち方、ノートの書き方など、自立学習の前提となる勉強の基本を徹底指導した上で、自社開発のAI学習プログラム「AI─Showinシステム」を通じて教科に取り組みます。

長年の試行錯誤を通じて、学力向上の鍵は「わかるところから始める、わかるまで先に進まない、わかるまで繰り返す」ことであるというのが私どもの結論です。「AI─Showinシステム」では、この「わかるの三大法則」にもとづいて、一人ひとりの弱点を見出し、演習を繰り返し、弱点を確実に克服し、勉強の喜びを実感しながら次のステップへ進めるよう、パソコンの画面上でAIがお子様を導いていく仕組みになっています。同時に、学んだことをノートにまとめるアウトプット学習で学力の定着を図り、一人ひとりの成績向上を実現しています。

吉田松陰の生誕の地、山口県萩市の中心街に建立した研修センター「交友館」の外観

FCオーナー様を成功へ導く手厚いサポート体制

「ショウイン式自立学習法」は、塾長となるFCオーナー様にも様々なメリットをもたらします。

松陰塾では、教科指導は「AI─Showinシステム」が担い、塾長の皆様にはお子様のサポート役に徹していただきます。あえて逆説的に「教えない塾」と謳い、一人ひとりの自立学習を支え、徳育を通じて人間的成長を促していただいているのです。たとえ教職経験がなくても、社会経験を通じて人間力をしっかり養ってこられた方こそが適任といえます。

また、塾の経営負担を少しでも軽減してお子様の指導に専念していただくため、ロイヤリティはいただいておりません。教科指導は「AI─Showinシステム」が行うため、人件費を大幅に削減でき、省スペースでの塾運営も可能です。さらに開塾前のOJT研修、開塾後の生徒募集フォローなど、手厚いサポートによって多くのオーナー様を成功へ導いています。

私は一昨年、新型コロナウイルスの罹患から九死に一生を得ました。天からいま一度与えられたこの命をもって、これまで以上に世のため、人のために尽くしていきたいと心を燃やしております。

早ければ来春、萩を本校とする通信制の高等学校を開校する予定です。教育の対象を拡大して松陰先生の教えをさらに普及していくと共に、激増する不登校の子どもたちに人生を切り開くチャンスを提供したいという願いがあります。

吉田松陰先生は、後から来る者に志を託して世を去りました。私もこの令和の世に松陰先生の志を継ぐ者として、今後とも松陰塾を通じて人の役に立つ人物を一人でも多く育ててまいる所存です。


(本記事は月刊『致知』2023年7月号掲載記事を一部編集したものです)

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◇田中正徳(たなか・まさのり)
昭和31年福岡県生まれ。大学卒業後、学習塾の経営を始める。平成20年小中学生向けの「松陰塾」を立ち上げ、「ショウイン式自立学習システム」と吉田松陰の教えにもとづく徳育を柱にFC展開。校舎数300、生徒数8000名を擁する大手塾へと成長させた。著書に『AI時代の衝撃!「教えない学習塾」成功の秘密!!』(海鳥社)などがある。

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