河村勇輝を育てた福岡第一高校・井手口孝監督が語る〝伸びる選手の3つの共通項〟

24歳にして、男子バスケットボール日本代表の司令塔を担う河村勇輝選手。世界最高のプロバスケットボールリーグNBA(ナショナル・バスケットボール・アソシエーション)でもめざましい活躍を見せています。そんな河村選手が高校時代を過ごした福岡第一高校バスケ部は、10度の日本一を成し遂げてきた強豪校です。この強豪を創部し、河村選手を育てた井手口孝監督に、常勝チームの条件・伸びる選手の共通項を伺いました。
(本記事は月刊『致知』2023年4月号特集「人生の四季をどう生きるか」より一部抜粋・編集したものです)

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常勝チームの条件 伸びる選手の共通項

——2004年、インターハイでの初優勝後は毎年全国大会に出場する強豪校の仲間入りを果たされますが、毎年選手が変わる中で強さを維持する秘訣はどこにあるのでしょうか?

〈井手口〉
練習環境、寮の設備、選手のリクルーティングなど細部にまで気を配っていますが、最後はやはり監督の指導力に尽きます。

若い頃の僕は、チームのことを1番よく知っている自分が指導するのがいいに決まっていると思い、他の人から教えを請うことを嫌っていました。しかしデイブさんはじめ力のある方から見ると、僕が100日経ってようやく気づけるようなことでも、1日練習を見ればすぐ分かるんですね。意地を張らずにそうした教えを素直に受け入れ、実践していくことで、選手たちは日に日によくなっていきました。

僕はバスケを通じて「人」と「選手」の両側面を成長させてあげたいのです。

選手としてスキルを伸ばすと同時に、人として正しい生き方ができる大人になってほしい。それは一朝一夕にできるものではなく、手間隙がかかります。植物を育てるが如く、常に様子を観察しながら、日が照ってきたら水をやり、害虫がついていたら取り除いてやるように、その時の選手の状況に応じて必要な言葉を掛けるように苦心してきました。

——福岡第一からは並里成選手(群馬クレインサンダーズ)や鵤誠司選手(宇都宮ブレックス)、河村勇輝選手(横浜ビー・コルセアーズ)など、日本を代表する選手を多数輩出していますが、伸びる選手の共通項は何かありますか?

〈井手口〉
第1に、ひたむきに頑張れる選手です。今年でいうと、平岡倖汰という選手は、スキル自体は高いほうでなくとも、とにかく何事もひたむきに打ち込める才能があります。試合で活躍するしないに拘らず、チームのために頑張れる子は伸びていきますね。

第2は感謝の気持ちを忘れない選手。素直にすべてを受け入れる心の広さとでもいうのでしょうか、このチームに入れてよかったと心から思いコートに立っている選手は強いですね。

Bリーグ(ジャパン・プロフェッショナル・バスケットボールリーグ)で大活躍をしている河村は、身長がさほど高くないこともあって、中学時代はそれほど注目された選手ではありませんでした。高校在学中に芽が出始めたのですが、ご両親はいまだに謙虚です。お世辞もあるでしょうが、お会いする度に「先生に育ててもらったおかげです」と感謝の言葉をかけていただきます。その姿勢は河村自身にも影響を与えているのがよく分かります。

第3は自分に厳しい選手。河村は負けん気が強いのですが、それは人に対してではなく、自分自身に対して。1日にシュートを何100本決めると掲げたら、必ず遂行しないと自分を許せない。なりたい目標が明確だから、ご飯を食べなくても、寝なくても自分との約束は守り抜きますよ。まさに自分自身との闘いに勝てるかどうか。

この域にはなかなか辿り着けないと思いますが、これら3つを兼ね備えた人物が一流の選手になっていくのだと感じています。


◉本記事には、「バスケ部監督としての素地を培った青春期」「壮年期に学んだチームを日本一に導く監督の条件」等、29年前の創部から9度の日本一に導いてきた井手口さんの歩みをお話しいただきました。井手口さんの足跡には、苦境を乗り越え、道を切りひらくヒントが詰まっています。

 

 

〈致知電子版 〉では全文お読みいただけます

◇井手口 孝(いでぐち・たかし)
昭和38年福岡県生まれ。西南学院高校から日本体育大学へ進学。大学時代からバスケットボールのコーチを務め、大学卒業後は地元・福岡県の中村学園女子高校に赴任。平成6年福岡第一高校に就任し、男子バスケットボール部を創部。創部5年目にインターハイ初出場。16年インターハイ優勝。過去インターハイ優勝5回(平成16年、21年、28年、令和元年、4年)、ウインターカップ優勝4回(平成17年、28年、30年、令和元年)。著書に『走らんか!福岡第一高校・男子バスケットボール部の流儀』(竹書房)がある。

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