「動機善なりや、 私心なかりしか」を信念に、高性能マスク事業で世の中に貢献する——株式会社アイ・ビー・アール 代表取締役・豊田力生

中国で生まれ育った豊田力生さんは、着るものも満足に得られない貧しい幼少期を経て25歳で来日。そこから「家族を幸せにしたい」との一心で努力を重ね、34歳で株式会社アイ・ビー・アールを創業。貿易・アパレル・マスクという3本の事業で会社を今日まで牽引、発展させてきました。これまでの歩みの中で経営者として貫いてきた信念、事業に懸ける思いを伺いました。

「家族を幸せにしたい」 その想いに突き動かされて

〈豊田〉
私が34歳の時に創業したアイ・ビー・アールは、今年7月に創業25年の節目を迎えます。貿易事業、婦人服に関するOEM(他社ブランド製品の製造)事業、そしてコロナ禍の2020年からスタートしたマスク事業の3つを柱に、今日まで歩みを積み重ねてきました。

その経営者としての原点は、幼少期の苦しい体験にあります。私は1963年に中国で生まれ、文化大革命の真っ只中に育ちました。国全体が貧しい時代で、我が家の生活も非常に厳しく、小学校の入学式には母に補修してもらった背中の破れたTシャツを着て登校したことを昨日のことのように覚えています。

そうした生活の中、いつしか「自分が働いて家族を幸せにしたい」という想いを強く抱くようになり、中国の大学を卒業して勤めていた国営企業を退職。25歳の時に遠い親戚を頼って来日しました。それからは大阪で日本語を学びながら、地下鉄駅の清掃や飲食店の皿洗いなど、多い日には1日3つのアルバイトを掛け持ちし、大学院を卒業。縁あって貿易会社に就職したのでした。

修業時代は、5年で独立することを目標にしていました。そのため、会社の忘年会でも二次会に向かう同僚を背に社に戻り、一人黙々と仕事をしたものです。お客様や周りの方々にも応援いただき、入社から5年4か月、34歳で独立。3人の子供のイニシャルから一字ずつ取って名づけた「アイ・ビー・アール」を妻と二人でスタートさせたのです。

どん底の日々で出逢った稲盛和夫氏の経営哲学

〈豊田〉
創業当初は、前職の経験を活かして、アパレルのOEM事業を中心に展開。約3年間は順風満帆の日々を過ごしました。しかし、天狗になってしまった私は小売り事業にも手を広げ、無謀な出店計画を敢行し、損失を出すなど数々の失敗を経験しました。

そんな苦しい時代に、私の経営人生を大きく変えてくれたのが、京セラ創業者である稲盛和夫さんの教えでした。稲盛さんの経営哲学を学ぶ勉強会「盛和塾」で「動機善なりや、私心なかりしか」という判断基準を知り、鳥肌が立つほど感動したのです。

私はそれまで「自分の家族を幸せにしたい」という、ある意味利己的な発想で経営に向き合っていました。しかし、盛和塾に入ったことで、いかに経営者としての器が小さかったか気づかされたのでした。

そして、自分だけでなく共に働く社員の幸せを実現できなければ、本当の経営、幸せとは言えないという思いから「全従業員の物心両面の幸福を追求し、社会の進歩発展に貢献する為に自社の企業価値を高め続ける」という事業理念を策定。

この事業理念を愚直に追求することによって、社内の雰囲気や社員との関係性もがらっと変わり、業績も少しずつ上向いていったのです。

「利他の心」でスタートしたマスク事業に想いを込めて

〈豊田〉
この学びを基に3年前に挑戦したのが、高性能マスク事業でした。新型コロナの感染拡大によってマスクが品薄になり、世界中が不安と混乱に包まれる中、付き合いのあった中国の企業から、「マスクを輸入しないか」と提案がありました。「動機善なりや、私心なかりしか」の基準に照らし、自分たちだけが儲けることはできないと、最初は何度も断りました。

しかし、「困っている人の助けになる」という盛和塾の先輩からの後押しもあって、マスク事業に着手することを決めたのです。

当初は不織布マスクを中国から輸入販売するだけでしたが、社会のため、お客様のためにこのままでよいのか自問自答した末、マスクの自社企画製造に乗り出しました。そうして開発に至ったのが、五層フィルターの立体構造で、かつ「KN95」基準をクリアした肌にも優しい快適設計の高性能マスクです。

開発は試行錯誤の連続でしたが、スタッフと共にお客様、医療現場の声を地道にヒアリングを実施。肌がかぶれにくい素材を使ったり、両手が塞がる医療現場でもマスクがずれない独自の設計を考案するなど、徹底して品質にこだわる姿勢を貫きました。

それを評価していただいたのか、この2年間で856万枚以上が活用され、現在では全国4000の医療系施設をはじめ、多くの企業法人からご注文をいただくなど、非常に喜ばれると共に、当社の売り上げにも大きく貢献してくれています。

また、ご縁のあった作家さんと共に売り上げの一部を保護猫・保護犬支援団体に寄付する絵柄つきマスクを企画し、社会貢献にも取り組んでおります。

マスク事業の目的は高性能マスクを通じて人々の健康を守り、幸せなライフスタイルを実現することにあります。これこそ稲盛さんに教えていただいた「世のため人のためになる」事業だとの信念で、ここまで取り組んできました。コロナ禍で経験した困難や挑戦を通じて、改めて使命感と利他の心が経営を真に発展させてくれるのだと実感しています。

いまの目標は社員は皆大家族と捉え、仕入れ先やお客様、自分の関わる人たちを物心両面で幸せにすることです。その「三方よし」の経営を追求しながら、高性能マスクをはじめ様々な形でお役に立てる事業を展開していく。それが私たちの挑戦であり、これからも決して変わらない当社の理念なのです。


(本記事は月刊『致知』2023年4月号掲載記事を一部編集したものです)

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◇豊田力生(とよた・りきお)
1963年、中国・廣東省生まれ。1989年日本に留学、関西大学大学院を卒業後、貿易会社に就職。1998年に独立して株式会社アイ・ビー・アールを創業、日本国籍取得。貿易事業、レディースアパレルのOEM事業を中心に事業を展開。2020年にマスク事業に参入した。「全従業員の物心両面の幸福を追求し、社会の進歩発展に貢献する為に、自社の企業価値を高め続ける」を企業理念に成長を続けている。

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