2023年03月22日
全世界の生命保険営業のトップクラスメンバーで構成されるMDRT。その会員資格を11年連続でクリアし、さらにその6倍の基準といわれるTOTを達成した元プルデンシャル生命保険・伝説の営業マン、小林一光さん。長年越えられなかったという、営業の壁を突破した原点とは。
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人間は自分が話すほうが好き
〈小林〉
一番困難に直面したのは(5年目で目標のエグゼクティブライフプランナーになることができた)その次の年でした。
5年間は成功したい、トップになりたい、この会社に勝ちに来たという自分の欲だけでも何とか上手くいったんです。だけど、6年目に急に売れなくなってしまった。
ある時、訪問先の社長に「経営にとってはこういう保険が必要なんです」と熱弁を振るっていたら、「おまえに経営の何が分かるんだ!」と怒鳴られて、社長室から叩き出されたことがありました。お客様から叱られたり、出入り禁止になったり、そういう失敗が続いたんです。
結局、驕りですよね。エグゼクティブになったことで勘違いしていたんだと思います。変なプライドを持ってしまったために、周りにも自分を曝け出せない。本当にあがいてあがいた1年間でした。
――そこをいかにして乗り越えられたのでしょうか。
〈小林〉
ある時、尊敬する先輩からこう言われたんです。
「売ることをやめて、とにかくお客様のためだけにやりなさい」
どん底にいた私にとっては本当に衝撃的な言葉でした。その時に、自分の商売とは全く関係ないことでも全部、何でもいいからお客様のお役に立とうと決意したんです。
例えば、車を買いたいって人がいたらより安く買えるディーラーを紹介する、人材を求めている経営者には若い人を紹介する、息子さんがサッカーをやっていると聞いたら好きなプロ選手のサインをもらってくる。プライベートなことも含めて、とにかく目の前にいる人に貢献していきました。
――相手の悩みや期待に徹底的に応えていかれたのですね。
〈小林〉
ただ、最初はどうやって役に立てばいいのか分かりませんでした。そこでまずはお客様の情報を集めようと。
それまでは営業というのは喋る仕事だと思っていたのでマシンガントークをしていました。それでも昔は決まっていたんです。ところが、売れなくなった時に参加した経営セミナーで学んだのは「とにかく人の話を聴く」ということでした。人間は話すのと聞くのと、どっちが好きかっていったら話すことが好きな人のほうが圧倒的に多いと。
そこで初めて聴くことの大切さに気づかされ、それからは何を聴くか、何を質問するかを考えるようになりました。
――質問して情報を引き出すと。
〈小林〉
出身地や出身大学、趣味、家族構成、いろんなことを聴いて、その情報を「見込み客発見ノート」に書き留めていきました。その上でお客様が何に困っているのか、何に関心があるのかを探して役に立つ。
それを実践していったら、やっぱりお客様から返ってくるわけですよ。「どうせ保険に入るんだったら、君は信頼できそうだから、じゃあお願いしようか」って。どんどん人の役に立つうちに、向こうからどんどん声が掛かるようになって、ストレスもなくなっていったんです。
5年目までは常にストレスとの闘いでした。言わば、狩猟型です。お客様を追い求めて、追い求めて、捕まえて契約をもらう。だとすれば、7年目以降は完全な農耕型。種を蒔いて、お客様を育てて、最終的には向こうから声が掛かる。だから、売るのを一切やめたんですね。そうしたら売れるようになった。
7年目から復活してきて、9年目で全国トップになり、翌年には全世界の生命保険のトップクラスで構成されるMDRTのTOT会員資格を得ることができたんです。2003年、37歳の時でした。
そして、11年目にマネジャーになり、翌年にはチームの業績を日本一にすることができました。
――入社時に掲げた目標をすべて達成されたのですね。
〈小林〉
軸足をすべてお客様のために移した時に初めて、それまでずっと越えられなかった壁を越えることができた。それがトップに立てた要因であり、私の原点でもあるんです。だから、いまはそういう指導をしています。売るのをやめたら売れるようになる。お客様から選ばれなさいって。
(本記事は月刊『致知』2014年5月号 特集「焦点を定めて生きる」から一部抜粋・編集したものです) ◎各界一流プロフェッショナルの珠玉の体験談を多数掲載、定期購読者数No.1(約11万8,000人)の総合月刊誌『致知』。あなたの人間力を高める、学び続ける習慣をお届けします。 たった3分で手続き完了、1年12冊の『致知』ご購読・詳細はこちら。
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昭和40年東京都生まれ。63年早稲田大学卒業後、JTB入社。平成6年プルデンシャル生命保険に転職。入社初年度よりMDRT会員、以後11年連続でクリア。14年営業マンとして売上成績日本一。15年TOT会員。17年営業マネジャーとしてチームを業績日本一に導く。22年アイ・タッグを設立。