「世のため人のため」を考えた人だけが開けられる〝蔵〟がある——稲盛和夫

京セラ、第二電電(現KDDI)創業者であり、一代で一兆円企業を築き上げた稲盛和夫氏。近年では経営破綻した日本航空を2年でスピード再生させ、その経営手腕に対する評価を揺るがぬものにしました。そんな稲盛氏が、度重なる困難の真っ只中で気づいたもの――真摯に生きるすべての人にひらかれているという、ある「蔵」についての逸話を通じ、その経営哲学の真髄に迫ります。

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純粋な心、情熱、そして努力

〈稲盛〉
「知恵の蔵」の扉をひらき、その叡知を得るにはどうしたらよいのでしょうか。

それには、一点の曇りや邪心もない純粋な心を持って、燃えるような情熱を傾け、真摯に努力を重ねていくことしかないと考えています。美しい心を持ち、夢を抱き、懸命に誰にも負けない努力を重ねている人に、神はあたかも行く先を照らす松明を与えるかのように、「知恵の蔵」から一筋の光明を授けてくれるのではないでしょうか。

私は、自分自身の経験から、強くそう思うのです。そうでも考えなければ、どこにでもいそうな青年でしかなかった私が、京セラやKDDIといった企業を設立して、今日のように発展させることができた、その理由を説明することができないからです。

京セラの創業にしろKDDIの創業にしろ、私は寝ても覚めても仕事に没頭し、それこそ「狂」がつくほど、凄まじい勢いで働いていました。「世のため人のため、この事業をなんとしても成功させたい」と強く願い、必死の思いでひたむきに仕事に取り組んでいました。その努力の報酬として、「知恵の蔵」に蓄積されている叡知の一部を与えていただいたのではないかと思うのです。

この「知恵の蔵」の恩恵を受けることができるのは、新規事業の立ち上げや新製品開発など、創造的な仕事に取り組んでいる人だけではありません。美しい心を持って、一心不乱に何かに取り組んでいる人は等しく、その恵みを受けることができると私は考えています。

「他に良かれかし」と願い、一所懸命必死に生きている人が、何か困難に直面して、悩みに悩み、苦しみもがき抜いているとき、一筋の光明が差すように、天は必ず障害を克服するヒントを指し示してくれるはずです。これも、「知恵の蔵」によるものではないでしょうか。

「知恵の蔵」とは、真摯に生きるすべての人にひらかれている、私はそう信じています。

《反響》月刊『致知』2022年12月号 特集「追悼 稲盛和夫」

片言隻句に学ぶ、稲盛経営哲学

●成功に対して、謙虚にして驕らない

●人格は「性格+哲学」という式で表せる

●心に善き思いを持ったとき、それは善き力となって出ていき、善き結果を連れて戻ってくる

●「他に善かれかし」と願う。美しい「思い」には、周囲はもちろん天も味方し、成功へと導かれる

●努力して、煩悩を抑える。そうすれば、人間の心の奥底にある、美しく優しい心が必ず出てくる

●自分に才能が与えられているなら、それは従業員のため、お客様のため、そして社会のために使わなくてはならない

●どのような厳しい状況にあっても、それを正面から受け止め、誠をつくす

利己にとらわれない正しい判断基準、価値観を持つ

●誰にも負けない努力を重ね、夢中になって働くことで、運命は大きく開けていく

●ひたむきに仕事に打ち込み、人格を高め続ける

人間として正しいことを追求する

美しい心を持ち、夢を抱く

(本記事は致知出版社刊『「成功」と「失敗」の法則』(稲盛和夫・著)より一部を抜粋・編集したものです)


◇稲盛和夫さんから月刊『致知』へメッセージをいただきました

月刊『致知』創刊40周年、おめでとうございます。日本人の精神的拠り所として、長きにわたり多大な役割を果たしてこられたことに、心から敬意を表します。

『致知』は、創刊以来、人間の善き心、美しき心をテーマとする編集方針を貫いてこられました。近年、その真摯な姿勢に共鳴する読者が次第に増えてきたとお聞きしています。それは、私が取り組んでまいりました日本航空の再生にも似て、まさに心の面からの社会改革といえようかと思います。

今後もぜひ良書の刊行を通じ、人々の良心に火を灯し、社会の健全な発展に資するという、出版界の王道を歩み続けていただきますよう祈念申し上げます。

――京セラ名誉会長・日本航空名誉顧問 稲盛和夫

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