ウイルスと闘うよりも私たちの反省を……エッセイスト・鮫島純子さんの伝言

『なにがあっても、ありがとう』『毎日が、いきいき、すこやか』など、人の心に寄り添い、豊かに生きる術を綴り続けたエッセイスト・鮫島純子さんが令和5年1月19日、100歳でご逝去されました。渋沢栄一翁の令孫として、その貴重な証言にも努められた鮫島さんには弊誌『致知』で幾度もお話を伺いましたが、コロナ禍が世の中を覆った際には、私たちの生き方に教えを残してくださっていました。

世界は一つ

〈鮫島〉
私は98歳(掲載時)のいまも毎月数回は講演のご依頼をいただいております。ところが、新型コロナウイルスによって次々に延期、中止となりました。

講演は自分を空っぽにして神様に委(ゆだ)ねるつもりでさせていただきますが、飛行機や新幹線の時間にきちんと間に合うように、忘れ物がないように、という注意が必要ですから、そういう思いから解放されたことが嬉しく、自由に使える日々を感謝しながら毎日を過ごしております。

私が暇にしていると思われるのか、あるいは私を元気づけようとしてくださるのか、自粛期間中は多くの方からご自分がお書きになった本や心の籠もったお手紙をたくさん頂戴します。「コロナでご自宅には伺えないから、電話で……」といって連絡をくださる方も多く「何か一つでもお役に立つエピソードをおみやげに」と思うのでつい長電話になってしまいます。

そのような方々の本やお手紙にじっくりと目を通してお返事を書いたり、お話を伺ったりしているうちにアッと言う間に一日が終わり、コロナの自粛期間中は却って忙しく感じることもあります。私の返信に大喜びで「宝にします」とおっしゃる方が多く、この年で誰方かのお役に立てることに、大きな喜びを感じております。

さて、大型豪華客船で始まった新型コロナウイルスのニュースを初めのうち他人ごとのように聞いているうちに、あの国この国の情報が入り、「世界は一つ」を思い知らされました。

コロナとは闘い、撲滅すべき敵ではない

私は若い頃(39歳)から、霊覚者・五井昌久(ごい・まさひさ)先生にご指導をいただいてまいりましたが、地球人類はいままでに何回もやり直し、例えばノアの函舟のような経験を経て、現段階は七劫目のやり直しの進行中と伺っておりました。

私たち人間は神様の分霊として、物質地球という星に生まれ、「み心の天にある如く地にならせる」、つまり「平和な世界をつくる使命」を与えられています。

ところが、肉体を纏(まと)ったために、人間は本来美しい魂の存在であることや平和な世界をつくるという使命を忘れ、衣、食、住の必要から物質欲が湧き、横取りが始まり、地上に神の国建設は容易ではありません。失敗を繰り返し今回七回目のテスト、伸(の)るか反(そ)るかの瀬戸際なのかしらと思っております。

私は「コロナと闘う」「撲滅」という闘争的姿勢で恐怖不安を煽るのを冷静に踏みとどまり「反省」が先ではないかと考えております。

目先の便利さ、肉体的欲望の満足のために一所懸命走って競争を続けてきた。そのことで随分恩恵を受けた私たち。「もっともっと」の欲望はエスカレートして空気を汚し大地、海、川、太陽への感謝を忘れ、我が物顔に木を伐り山を削り、豊かな経済成長をよしとしてきました。いまそのことへの反省を促されている気がしてなりません。

戦前に成人していた私はコロナ騒ぎの中で、「神様から使わせていただいている地球」や「肉体」への感謝を忘れ「使い捨て」「汚し放題」の最近の人間の生き方を反省するばかりです。

自分の欲にとらわれる世界から、魂のレベルをもう一段階上げることが、いま私たち人間には求められているように思います。


(本記事は月刊『致知』2020年9月号 連載「コロナの時代を生きる」より抜粋・編集したものです)

生前に賜ったご恩に深謝し、故人のご冥福を心よりお祈りいたします。

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本記事を含め、鮫島純子さんにご登場いただいた以下4つの記事全文をご覧いただけます。

・2022年3月号 特集「渋沢栄一に学ぶ人間学」
 我が心の渋沢栄一①〝世界の平和を願って活動を続けた祖父〟

・2020年9月号 特集「人間を磨く」
 連載「コロナの時代を生きる」①〝ウイルスと闘うよりも私たちの反省を〟

・2019年8月号 特集「後世に伝えたいこと」
 対談〝人生を幸せに生きる知恵――この世は愛の練習所〟(&鈴木秀子)

・2018年11月号 特集「自己を丹誠する」
 エッセイ〝感謝するところにある真の喜び〟

※「致知電子版」のレイアウトはこちらの実際の記事誌面とは異なります

◇鮫島純子(さめじま・すみこ)
大正11年東京生まれ。昭和17年結婚。祖父は渋沢栄一、父は栄一の四男で実業家の渋沢正雄。著書に『なにがあっても、ありがとう』(あさ出版)『毎日が、いきいき、すこやか』(小学館)『祖父・渋沢栄一に学んだこと』(文藝春秋)など。

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