100歳の日野原重明医師が遺した〈人生と運命〉の教え

明治44(1911)年に生まれ、最晩年まで現役医師として多くの患者と向き合い、全国の講演会場や被災地にも足を運んだ日野原重明さん。弊誌『致知』にも幾度となくご登場いただきましたが、亡くなる5年前に行われた対談では「運命は自らデザインしていくもの」と、ご自身の100年に及ぶ人生を通して掴まれた人間学を語ってくださいました。※お相手は日野原さんと同じくクリスチャンであり、ご家族を介して親交を持っていた都倉亮さん(社団法人スウェーデン社会研究所理事)です。

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運命は自らデザインしていくもの

〈日野原〉
自分の人生に起こることを「運命だ」と受け身的に捉える人が多いようですが、私はいつも「あなたの運命をデザインしなさい」と言うのです。人生はよいことばかりではありませんが、誰かとの出会いを契機によい方向に変えていくこともできる。

運命は与えられるものではなく、自分から動いてデザインしていくものだというのが私の考え方です。そうやってあなたの生きる道を選び取り、つくり上げていきなさいというのが、いまの私から伝えたいことですね。

〈都倉〉
素晴らしいお話ですね。

カトリックの祈りに「いまと臨終の時を祈りたまえ」という一節があります。人間にとって確実なことは、いまという瞬間と、いつか訪れる臨終しかないということで、その時を祈ってくださいという意味です。大切なのはいま自分のできることを一所懸命やること、一途に、一心に、自分の力を尽くしていくことなのだと思います。

〈日野原〉
同感です。

人間という存在や命には必ず終わりがある。その終わりまでの与えられた時間を、どうすればギリギリまで有効に使えるかということを私はいつも考えています。例えば私はいま2011年から2020年まで使える十年手帳を使ってそこにスケジュールを書き込んでいるんですが、2020年を迎える時には私は数えの110歳ですよ。〈都倉〉
いやぁ、これは凄いですね。既に予定がびっしり書き込まれている(笑)。

〈日野原〉
統計によると、私の人生はあと1年足らずしかないそうなんですよ。だから自分には死の足音が確かに聞こえてくるように思うんです。にもかかわらず、私は常に「上を向いて歩こう」という気持ちを持っている。

とにかく私の命は神様から与えられたものです。その与えられたものに対して自分自身がどこまでも充実して、感謝して生きていきたいと願い、全力疾走を続けているところです。

〈都倉〉
そういう姿勢でこれからも歩み続けていかれるわけですね。

〈日野原〉
はい。人生、これからが本番ですよ。これから本当の人生が始まる。都倉さんの人生もこれから本番が始まる。私は百歳を機に、新たに人生のスタートラインに立つ覚悟を持っています。

先日(取材当時)、サッカーのなでしこジャパンがアメリカにリードされていたものの、後半戦の終盤で追いつき、延長戦でも食らいついた末、PK戦で勝利して遂に世界一になりました。人生もまた同様に、延長戦の中に本当の学びと実りを持つような、一途一心に歩まんとする姿勢が大切なのだと思いますね。


(本記事は月刊『致知』2012年2月号 特集「一途一心」より一部を抜粋・編集したものです)

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◇日野原重明(ひのはら・しげあき)
明治44年山口県生まれ。昭和12年京都帝国大学医学部卒業。同年、循環器内科に2年間入局。14年、京都帝国大学大学院で心臓病学を専攻。16年聖路加国際病院内科に赴任。63年聖路加看護大学に国内初の大学院博士課程を設置。平成4年聖路加国際病院院長就任。12年、75歳以上の元気な老人を集めて「新老人の会」結成、会長就任。現在、聖路加国際病院理事長・名誉院長。著書に『生き方上手』(ユーリーグ)など多数。近著に『日野原重明 一〇〇歳』(NHK出版)『〈CD〉生き方上手は死に方上手 』(致知出版社)など。29年逝去。

◇都倉 亮(とくら・りょう)
昭和28年東京都生まれ。51年慶應義塾大学経済学部卒業。同年、三井物産入社、化学プラント部に配属。63年くも膜下出血を患い、手術後、静養に入る。平成元年三井物産を退職し、都倉インターナショナルを設立、社長に就任。ヨーロッパ家具のデザイン、生産、輸入、販売を手掛ける。20年中咽頭がんが左首リンパ節に転移した状態で見つかる。22年やむなく会社を清算。25年逝去。

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