2024年01月06日
いま日本は様々な内憂外患を抱えています。かつて吉田松陰は「天下の大患は其の大患たる所以を知らざるにあり」との言葉を残しました。私たちが直面している問題の本質とは何か。どこにその根本原因があり、いかなる手を打っていけばよいのでしょうか。保守論壇の重鎮である藤原正彦さんと櫻井よしこさんに、豊かで徳の溢れる国づくりへの道筋を大所高所から論じていただきました。 ◎各界一流プロフェッショナルの体験談を多数掲載、定期購読者数No.1(約11万8,000人)の総合月刊誌『致知』。人間力を高め、学び続ける習慣をお届けします。
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活字文化の復興を
〈藤原〉
ただ、政治家やマスコミの質が悪いと言っても、結局は国民の鏡ですからね。20年前、電車に乗ると半分の人が本を読んでいて、半分の人が新聞を読んでいました。
ところが、最近はほとんど全員がスマホを見ている。何をやっているのかチラッと覗いたら、ゲームです。中高年の人までゲームしているんですよ。正直言ってぶん殴りたくなっちゃった(笑)。責任ある大人としてもっと真面目に生きてほしい。
〈櫻井〉
本当にその通りですね。
〈藤原〉
だから私は、少なくとも中学校まではスマホを禁止にして、読書文化、それも活字文化を取り戻す。これがいま最も重要な第一歩で、強制的にやらなければならないと思います。
そうすると人権だ、自由だって言う人がいるんですけど、そんなものは関係ありません。スマホを取り上げるとか、小学生のうちに九九と漢字を教えるとか、本を読ませるとか、それは家庭や学校で叩き込まないとダメなんですね。
日本人としての教養や情緒や道徳を学ばせるために、やはり小学校のうちに童話だとか詩だとか偉人伝だとかを読んで、夢を膨らませて、涙を充分に湛えた子供に育てる。
そしてそれを妨害するスマホは中学校まで禁止にする。こういうことを力ずくでしない限り、日本を再生することはできない。しかし岸田さんにはやれそうもないですね。
〈櫻井〉
絶対にできない。岸田さんは人の意見を聞くばかりで、自らの強い信念が感じられませんから。
〈藤原〉
だから、私がやらなきゃいけないと思うんですけど、女房に「家も治められない人がどうして国を治められるのよ」って言われてしまって(笑)。
〈櫻井〉
私は藤原さんに日本国の総理大臣になってほしいけれども、残念ながら選挙で通らないでしょうね(笑)。
冗談はさておき、マイクロソフトの創業者ビル・ゲイツは自分の子供にスマホを1日1時間以上させないそうです。
〈藤原〉
ああ、やっぱり。
〈櫻井〉
彼はスマホの弊害をよく分かっているわけですね。親が強制的にスマホを子供から
取り上げるとおっしゃったけれども、日本にそこまで子供を厳しく指導できる大人が少なくなっています。
〈藤原〉
大人自身が夢中にやっているわけですからね。
〈櫻井〉
そうなんです。以前、新幹線で新潟へ行った時、若い夫婦と小学生の子供2人、親子4人が乗ってきて、座るとすぐにそれぞれのお弁当を食べながら、皆スマホを始めました。互いに互いの世界に没頭していて家族の間に会話がない。この家庭は将来どうなるんだろうと思いました。
〈藤原〉
スマホは民族を根絶するようなものですから、本当に力ずくで禁止して活字文化の復興をしなくてはいけません。
〈櫻井〉
情報収集の手段も新聞を読む人が少なくなっていますよね。若い人はスマホでニュースを見ますし、高齢者はテレビのワイドショーを見るんですよね。テレビの内容がこれまた、何と言いますか、お粗末です。日本の未来がすごく心配になります。
〈藤原〉
いや、もう本当に……。私の女房の祖父は旧制中学の校長を長く務めていましたが、一日一頁も本を読まない人間は獣であるといつも言っていました。だから、一頁でも本を読まないと寝かしてくれなかったと。こういう強制力を持ってやれば、最初は嫌々だったとしても子供のうちは自然と本が好きになっていくものです。
(本記事は月刊『致知』2023年2月号 特集「積善の家に余慶あり」より一部抜粋・編集したものです)
◉『致知』最新2月号 対談「日本の底力を発揮するときが来た」に櫻井さんがご登場!!
日本が抱える内憂外患は深刻さを増す一方で、混迷窮まれりの感は否めません。そのような時代を生きる私たちにとって大切なことは何なのでしょうか。
保守論壇の重鎮である櫻井よしこ氏と中西輝政氏が口を揃えるのは、世界最古を誇る我が国の歴史を学び、志を立て、未来への希望を抱いて前進することだといいます。
国民一人ひとりの立志なくして立国はなし。いまこそ日本人の覚醒、精神の甦りが問われています。
◇藤原正彦(ふじわら・まさひこ)
昭和18年旧満州新京生まれ。東京大学理学部数学科大学院修士課程修了。理学博士。コロラド大学助教授などを経て、お茶の水女子大学教授。現在は同大学名誉教授。53年に数学者の視点から眺めた清新な留学記『若き数学者のアメリカ』(新潮文庫)で日本エッセイスト・クラブ賞受賞。ユーモアと知性に根ざした独自の随筆スタイルを確立する。280万部の大ベストセラー『国家の品格』(新潮新書)をはじめ著書多数。最新刊に『日本人の真価』(文春新書)。
◇櫻井よしこ(さくらい・よしこ) ◎各界一流プロフェッショナルの珠玉の体験談を多数掲載、定期購読者数No.1(約11万8,000人)の総合月刊誌『致知』。あなたの人間力を高める、学び続ける習慣をお届けします。 たった3分で手続き完了、1年12冊の『致知』ご購読・詳細はこちら。
ベトナム生まれ。ハワイ州立大学歴史学部卒業後、「クリスチャン・サイエンス・モニター」紙東京支局勤務。日本テレビニュースキャスターなどを経て、現在はフリージャーナリスト。平成19年に国家基本問題研究所を設立し、理事長に就任。23年第26回正論大賞受賞。24年インターネット配信の「言論テレビ」創設、若い世代への情報発信に取り組む。著書多数。最新刊に『わが国に迫る地政学的危機 憲法を今すぐ改正せよ』(ケント・ギルバート氏との共著/ビジネス社)。
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