「感動するとは何かをクリエイトすること」——龍村仁氏が『地球交響曲』に込めた願い

左が小林氏、右が龍村氏

ドキュメンタリー映画「地球交響曲」(全9作)を制作した龍村仁さんが2023年1月2日老衰のためにお亡くなりになりました。82歳でした。龍村さんには、筑波大学名誉教授の故・村上和雄先生や指揮者の小林研一郎さんとの対談など、弊誌にもたびたびご登場いただきました。

「地球交響曲」を通じて、地球と大自然の尊さ、人間がこの限られた資源の中でよりよく生きるための知恵を発信し続けた龍村さんのメッセージは、これからの私たちを導く羅針盤となって輝き続けることでしょう。龍村さんのご冥福を心から祈り、弊誌掲載記事の一部を配信させていただきます。※対談のお相手は小林研一郎さんです。

見る側が主人公となり何かをクリエイトする

〈小林〉 

『地球交響曲』は有志の自主上映によって広まってきた映画ですから、軌道に乗せる上では、何かとご苦労も多かったのではありませんか。

〈龍村〉 

それはあまり感じたことがなかったですね。第一番を上映した時に、京セラを創業された稲盛和夫さんに「京都の小さな劇場で上映会を開きますが、よかったらお越しください」とお手紙を書いたんです。

稲盛さんはお忙しい中、劇場に足を運んでくださり「素晴らしい映画だった。これからも応援します。本当にいい作品であれば必ず世の中に循環していくことでしょう。その仕組みを一緒に考えていきましょう」と約束してくださいました。

実際、稲盛さんや京セラさんにはその後も何かとご支援いただきましたが、そういう多くの皆様のお力添えにより、ここまで30年間『地球交響曲』一筋に歩いてくることができました。

もちろん映画制作には資金づくりなど苦労はつきものなのですが、ご支援いただいた方のことを思うと、「ここで打ち切りにしよう」という発想は僕の中にはありませんでしたね。

〈小林〉

多くの支えによっていまがあるという監督のお話、僕も大いに共感します。一本一本の映画には、どのような思いを込めてこられたのですか。

〈龍村〉 

僕は監督として「一人でも多くの人に映画を観てほしい」という気持ちは当然あるわけですが、それと同時に観てくださった方に映像や音楽を通して何かをクリエイトしてほしいという思いがとても強いんです。

〈小林〉 

何かをクリエイトしていく?

〈龍村〉 

はい。僕の映画を観て感動したという声をたくさんいただくわけですけど、感動するというのは言葉を変えれば自分自身が何かをクリエイトしているということと同じなんですね。いわば自分が主人公になって映画を観ていただきたい、自分の中にあるクリエーションの感覚を活性化していただきたい、という言い方もできると思います。

だから、僕はこの映画を通して「このように感じ取ってください」「ここで感動してください」というメッセージを発しようとは思いません。

観てくださった方が、それぞれの立場でクリエーターになっていただけたら、それが一番の喜びですね。そのことが正しいのか、正しくないのか、それは僕が考えるのではなく、いわば観る側に委ねるということですね。

 


(本記事は月刊『致知』2020年6月号「鞠躬尽力」」より一部抜粋・編集したものです)

◇龍村仁(たつむら・じん)

昭和15年兵庫県生まれ。38年京都大学文学部美学科卒業。同年NHK入局。49年映画『キャロル』を制作、監督したのをきっかけにNHKを退職、独立。以後、ドキュメンタリー、ドラマ、コマーシャル等の制作に邁進。平成4年より『地球交響曲』の公開を始め、現在『地球交響曲 第九番』を制作中。著書に『地球(ガイア)のささやき』(角川ソフィア文庫)などがある。

◇小林研一郎(こばやし・けんいちろう)

昭和15年福島県生まれ。東京藝術大学作曲科、指揮科の両科を卒業。49年第1回ブダペスト国際指揮者コンクール第1位、特別賞を受賞。その後、多くの音楽祭に出演するほか、ヨーロッパの一流オーケストラを多数指揮。平成14年の「プラハの春音楽祭」では、東洋人として初めてチェコ・フィルを指揮。ハンガリー国立フィル桂冠指揮者、名古屋フィル桂冠指揮者、日本フィル音楽監督、東京藝術大学教授、東京音楽大学客員教授などを歴任。

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