利益やノルマは一切考えない「利他の心」——どんな商品でも売ってしまう〝カリスマ販売員〟が語る販売の極意

どんな商品でもたちまち売ってしまう〝カリスマ販売員〟として、全国の企業や販売員の指導、セミナーや講演活動に当たっている「売れる売れる研究所」代表・橋本和恵さん。当初は全く売れない販売員だったという橋本さんが、試行錯誤の末に掴んだ販売、営業の要諦には、様々な仕事に通ずる考え方のヒントが詰まっています。

商品ではなく未来を売っている

〈橋本〉
私はどんな商品であっても、常に「未来を売っている」と思っているんですね。お店に並んでいる商品を見ると、「ああ、未来がいっぱいだ」って思うんです。

——未来を売っている。

〈橋本〉
例えば、お茶を買いたいとコンビニに入った人は、まだお茶を飲んでいません。ということは、お客様にとって買い物とは、いまではなく未来のことなんです。

具体的には、時計を売るとなった場合、普通の販売員であれば価格がどうとか、デザインや機能がどうとかいうところから接客していきます。

でも私は、「いま、何か気になることはございますか?」というところから入り、そのお客様が時計を買うことでどのような未来を描いていらっしゃるのか、時計を買うことでお客様の未来がどう変わっていくのかに視点を置いてお話を進めていくんです。

そうすると、お客様も最後は納得して商品を買ってくださるんですよ。

——まさに接客の極意ですね。

〈橋本〉
それは景気がよかろうが悪かろうが同じです。お客様の未来はなくならない。変わるのは伝え方だけです。

いまのコロナ禍でも、お客様と直接接することができない、店頭での試食ができなくなって困っているという相談をたくさんいただきますけれど、例えば、甘海老のお煎餅だったら、「皆さんがお刺身で食べている甘海老の甘い、甘いおいしさがこのお煎餅に詰まっています!」というように、写真や映像を見せながら、お客様のイメージ力を使って商品の魅力をお伝えすると、売り上げが全然違ってきます。

どんな状況でもお客様の未来に視点を置けば、必ず販売の策はあるし、希望が見出せるんですね。

心の波動はお客様に伝わる

〈橋本〉
それから、ご依頼いただいた企業様のスタッフ、販売員の接客指導にも取り組んでいるのですが、その際によく伝えているのが「利他の心」の大切さなんです。

利他の心、利他の経営を大事にされている京セラ創業者の稲盛和夫さんが、科学、技術、思想、芸術の分野に大きく貢献した方々に「京都賞」を贈っておられますね。

私もそれにちなみ、利他の心で周りの模範になるような接客をした販売員には、ポケットマネーで「橋本賞」を差し上げています(笑)。

というのは、私のこれまでの経験からしても、販売員は自分のノルマや利益を考えないで接客したほうが逆にうまくいくんですね。

——自分の利益やノルマを考えずに販売するほうが逆にうまくいく。

〈橋本〉
例えば、多くの企業が年度末になると決算セールをしていますが、目先の売り上げ、ノルマを追うと、どうしても自分たちの都合を優先し、先ほどのお客様の未来が見えなくなってしまうんですね。

それに自分さえノルマを達成すればいいんだというように、会社の仲間と協力していこうという雰囲気もなくなっていきます。

ですから、接客する時には、「お客様の利益が十、こちらの利益はゼロでいい」と私はお伝えしています。

極端に思われるかもしれませんが、少しでも自分の欲が出ると、商品単価を上げようとか、誤魔化して売ってしまおうという強引な販売になってしまい、結果的にはお客様が離れてしまうんです。

——そういう販売姿勢はお客様にも伝わってしまうのでしょうね。

〈橋本〉
ええ、伝わります。人間も動物なので、相手がどういう気持ちで自分に商品を売ろうとしているか、意識的にせよ、無意識的にせよ、波動を感じるものですよ。

無理なノルマは歪みを生みます。長い目でみると利他の心、博愛の精神でやっているところが、やはり成長しています。


(本記事は月刊『致知』2022年9月号 特集「実行するは我にあり」から一部抜粋・編集したものです)

本記事では他にも

・偶然入った販売の世界
・試行錯誤の中から掴んだ販売の極意
・商品を「もの」ではなく「人だと思って売る
・自分に指を向けることそこから実行が始まる

など、橋本さんが試行錯誤の実体験から掴んだ販売・営業の極意が余すところなく語られています。「販売、営業でなかなか結果が出ない」そんなお悩みをお持ちの方は、必見です【詳細・購読はこちら「致知電子版」でも全文をお読みいただけます)】

◇橋本和恵(はしもと・かずえ)
兵庫県生まれ。平成9年佐賀県立有田窯業大学校陶磁器科卒業。陶芸家として作品を制作する傍ら、アルバイトで始めた販売員の仕事に目覚め、プロ販売員に転身。500回を超える独自の消費者研究を重ね、どんな商品でも売れるカリスマ販売員として驚異的な売り上げを記録。19年独立し「売れる売れる研究所」を設立。全国から講演・研修の依頼が絶えない。著書に『誰でもアッという間に不思議なくらい商品が売れる販売員の法則』(大和書房)など。ライフワークとして、採卵鶏のケージフリー飼育を進める動物福祉ボランティア活動に参加、優しい心を持った子供たちを育てたいと活動の輪を広げている。

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