人格陶冶こそが剣の修行の核心。日本武徳院 殺活自在流剣法 創始師範・黒澤龍雲

6歳の頃から剣の道を志し、22歳から真剣による型や試斬の鍛錬、修行に入った黒澤龍雲さん。剣の修行に打ち込みながら、自らの道場を立ち上げ、門人の指導や国内外での演武、講演活動にも精力的に取り組まれてきました。「人格の陶冶こそ修行の核心である」と語る黒澤さんに、これまでの剣一筋の人生を語っていただきました。

剣の道を歩む

〈黒澤〉
剣の道を志したのは6歳の時でした。

母方の曽祖父が軍医として来日したアイルランド系アメリカ人だったことで、私は幼い頃から「自分には日本人以外の血が流れている」という自覚を抱いて育ちました。そして体が大きくなかったこともあり、武道をして強くなりたいと、直感的に選んだのが剣道だったのです。

スポーツは不得意だった私ですが、不思議と剣道は最初からよくでき、地元・横浜の町道場で稽古に夢中になって打ち込みました。とにかく相手を竹刀でビシッと打つ感覚、相手に勝つと先生に褒められるのが子供ながらに純粋に面白く、楽しかったのです。

しかし中高生時代には剣道よりもバンド活動に関心が向いたことで、稽古にあまり熱心になれない時期が続き、大学も日本大学芸術学部に進学して演劇に熱中しました。

そんな中、剣の道に戻っていく契機となったのは、アイデンティティーの問題に直面したことでした。特に海外に行く機会があった際、アイルランド人の血が入っていることに興味を持たれたり、日本の伝統文化について質問されたりしたことで、「自分とは何か」「日本とは何か」と考えるようになったのでした。

日本といえば日本刀だ、日本刀をつかう武道を学べば答えが見つかるかしれないとの思いが次第に強くなり、真剣での型や試斬を鍛錬する道場に入門したのです。1990年、22歳の時でした。

技は自分で習得するもの

ところが、その道場の師範は具体的なことは全く指導してくれません。それに人間的に尊敬できない部分も多く、随分辛い思いをしました。しかしいま振り返ると、それが逆によかったのだと思います。

何事も自分で試行錯誤する習慣が身につきましたし、人間的に未熟であれば、たとえ剣の才能や能力があってもマイナスになる。詰まるところ、人格の陶冶こそが修行の核心なのだと、反面教師として教わることができたからです。

そのため、剣の修行に励みながら、真言宗大覚寺派田谷山定泉寺(横浜市)の渡辺冝昭和尚に師事し、密教禅の修行にも打ち込みました。以後、渡辺和尚は私の人生を導いてくださる師となりました。

先の道場に通い8年経った頃、私は自分の信じる剣の道を求めて独立を決意し、30歳で道場「日本武徳院 試斬居合道」を創立。レンタルルームや寺院の道場を借りてのスタートでした。

独立する際には、渡辺和尚に「食えなかったら、そのまま野垂れ死にする覚悟でやれ!」と、背中を押していただきました。

独立して数年は門人が出たり入ったりで、思うようにならない苦しい日々が続きました。しかし、中途半端な思いで入門してきた人を相手にしていても仕方がないと、指導をどんどんストイックにしていったところ、真摯に剣の道、武道を学びたいという人が入門してくるようになり、門人も定着して道場の運営も次第に安定していったのです。

◇黒澤龍雲(くろさわ・りゅうん)―― 日本武徳院 殺活自在流剣法 創始師範


(本記事は月刊『致知』2022年8月号 連載「致知随想」掲載記事より抜粋・編集したものです)

◎この後も黒澤さんに
・「人生を変えた出会い」
・「俗名の雄太から剣名の龍雲に改めたいきさつ」
・「武士道の神髄」
など、剣の道から学んだよき人生を送る極意を語っていただいています。

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