顔の化粧ではなく、心の化粧を——渡辺和子さんに学ぶ美しく生きる秘訣

『置かれた場所で咲きなさい』の著者で、ノートルダム清心学園理事長の渡辺和子さん。シスターとして、また教育者として、長年多くの人々に寄り添いながら、マザー・テレサ来日の際には通訳を務めるなど多方面で活躍してこられました。そんな渡辺さんが静かに語る、人間の温かさ、強さ、本当の美しさ——。

美しさは自分と闘わないと得られない

〈渡辺〉
人間の進むべき道というようなことは、難しくてよくわかりませんけれども、とにかくまずは自信を取り戻すことですね。

しかもそれは正しい意味での、人間しか持たないぬくもり、優しさ、強さであり、自分と闘うことができ、自分の欲望にブレーキをかけることができるということへの信頼です。

例えば、私はいま学生たちに、「面倒だからしましょうね」っていうことを言ってるんです。面倒だからする。そういう心を学生たちはちゃんと持っています。それは強さだと思うんです。

そういう、人間にだけ神様がくださった、神の似姿としてつくられた、人間にのみ授けられた人間の優しさと強さ。かけがえのない、常に神様に愛されている自分としての自信。そういうものを取り戻して生きていかないと、科学技術の発達するままのこれからの時代に、人間の本当の姿が失われてしまうのではないかと思います。

いまの学生たちは、ポーチの中にお化粧道具をいっぱい持っています。だから彼女たちには、お金をかけてエステに通ったり、整形手術を受ければ綺麗にはなるけれど、美しくなるためには、面倒なことをしないとだめなのよ、と言っているのです。自分が座った椅子は元どおりに入れて立ちましょうね。落ちている紙屑(かみくず)は拾いましょう。洗面台で自分が落とした髪の毛は取って出ましょう。

お礼状はすぐに書きましょう……というように、なるべく具体的な行動の形で示しています。「ああ、面倒くさい、よそう」と思わないで、「ああ、面倒くさいと思ったらしましょうね」と言うと、学生も、何か変な標語のようだなと思いながらも、覚えていってくれるみたいです。

「人はある程度の年を取ったら、それ以上綺麗にはならないけれど、より美しくなることはできます。その美しさというのは、中から輝いて出るものだから、自分と闘わないと得られません。お金では買えないのよ」

ということを言うと、

「ああ、シスター、顔の化粧ではなくて、心の化粧なんですね」と言ってくれます。


(本記事は月刊『致知』2002年3月号 特集「この道を行く」より一部を抜粋・編集したものです)

◇渡辺和子(わたなべ・かずこ)
昭和2年教育総監・渡辺錠太郎の次女として生まれる。31年ナミュール・ノートルダム修道女会入会。37年アメリカ、ボストンカレッジからPh.D.の学位を取得。帰国後、ノートルダム清心女子大学学長を経て、現在同学園理事長。著書は『愛をこめて生きる』『目に見えないけれど大切なもの』など多数。

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