私は虫であり、虫は私である——虫への愛が溢れる生物画家・熊田千佳慕


この地球上に発見されている昆虫は約100万種で確認されている生物種の半分以上を占めると言われています。地球上でもっとも繁栄している昆虫ですが、じっくりと観察する機会がある方は少ないのではないでしょうか。虫への愛情と飽くなき探求心を持ち、絵本画家として活躍された熊田千佳慕さん。熊田さんの「私は虫であり、虫は私である」という想いを伺うと、新しい視点で物事を考えられるようになるかもしれません。

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僕の絵は生きている

僕の虫の絵を見た多くの人が、「生きている」って言ってくださるんです。なぜだろうと、長い間いろいろと考えていました。

よく皆さんは虫を見てスケッチするけれど、動いているものをよく描けますよね。僕は虫を見ている時、自分も虫になって、一緒に遊んでいる。だから何時間もずっと見ているんです。

いまはあまりやりませんが、少し前までは、道端や草むらに何時間も寝そべっているから、よく行き倒れと勘違いされた(笑)。見ているうちに、「いい格好だな。いい所だな」と思うと、頭に絵が入ってくる。細部の線や色までが、ちゃんと焼きついてくるんです。

私は虫であり、虫は私である

僕は七十歳の時、夢で「私は虫であり、虫は私である」という声を聞きました。

ああ、そうか。僕は虫の姿を借りて自分を描いているから、自分の目も心も命も、すべてがそこへ映って、生きているものが描けるんだなって。神様が教えてくれたのです。

僕は、人生で八十代が一番輝いていたと思っているんです。新しい仕事が増えて、それまで溜めてきたものを、どんどん発散することができたし、周りに輪をつくってくれる人もできた。

すると、自分の中の「自己」を強く感じるようになったんです。

虫や自然と接している時は、すごくピュアで、無心になれる。だから人生でも、小川を流れる枯れ葉のように、もうなすがまま。ぶつかりぶつかり大海へ出よう。これが自分の姿だ、と。
 
皆さん「生きる」というと、大変なことのように考えるけれど、僕は簡単なことだと思うんですよね。毎日一膳のご飯がいただける、これが「生きる」ことだと思うんです。これを積み重ねていけばいいだけで、何も難しいことはない。

一種の悟りではないですけれど、そういう気持ちになった。僕にとって絵は生きがいだし、自己そのものなんです。

土門拳という写真家がいるでしょう。奥手な彼の恋愛の指南はいつも僕がしていたくらい、彼とは仲良しだった。

その土門が晩年、展覧会に来て、僕の手を握ってボロボロ泣くんです。「ゴローちゃん負けたよ。これが本当のリアリズムだ」って。「君の絵には心がある。絵を通して心を表現した」と言ってくれましたね。


(本記事は月刊『致知』2005年4月号 特集「極める」より一部を抜粋・編集したものです)

◇熊田千佳慕(くまだ・ちかぼ)=生物画家

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