天孫降臨における3つのご神勅【後藤俊彦×山谷えり子】

「この民族は絶対滅びない」

これは、第二次世界大戦前後を代表するフランスの文学者、政治家でもあるアンドレ・マルローが日本に来るたびに言ったとされる言葉です。
『致知』2022年1月号では、神社界最高位の称号「長老」を授与された、高千穂神社宮司・後藤俊彦氏、日本の歴史や伝統文化に精通している自由民主党の参議院議員・山谷えり子氏にご登場いただき、日本人の精神・生き方の源流を語り合っていただきました。
冒頭のマルローの言葉は対談の中で後藤氏が紹介された言葉です。マルローはなぜ、来日する度にこの言葉を口にしたのか。そこには日本人が古来、大切にしてきた神話やそこに宿る精神が関係していました。

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神代がいまも続いている

〈後藤〉
アンドレ・マルローというフランスの文学者、政治家でもありましたけれども、その方に関する本を読んでいましたら、彼は日本に来るたびに、「この民族は絶対滅びない」と言ったそうです。

それはなぜかというと、天岩戸が塞がって、天照大御神様がお隠れになる。でも、最終的には皆の祈りでその岩戸が開き、再び明るい世界が蘇った。こういう神話を持っている民族は滅びないと。

確かに日本人はどのような逆境に遭っても、人々が信頼し合って力を合わせ、復興してきました。

〈山谷〉
最近では、東日本大震災の時もそうでしたね。

〈後藤〉
天照大御神様の孫の瓊瓊杵尊(ににぎのみこと)様が、実り豊かな国を創り整えるために高千穂の峰に降臨なさる。これが日本の国の始まりですね。そして降臨に当たって、天照大御神様は瓊瓊杵尊様に三つのご神勅を授けるんです。
まず一つは「宝鏡奉斎(ほうきょうほうさい)の神勅」。

吾が児、此の宝鏡を視まさむこと、当に吾れを視るがごとくすべし。与に床を同じくし、殿を共にして、斎鏡となすべし

天照大御神様の化身とも言うべき鏡、八咫鏡(やたのかがみ)をお渡しになって、 この鏡を見たら、私が映っていると思いなさい。そして鏡を奉安した御殿で私の魂と共に過ごしなさいと。これは形を変えて言えば、先祖を忘れてはいけない、先祖崇拝の大切さを説いています。

二番目には「天壌無窮(てんじょうむきゅう)の神勅」。

豊葦原千五百秋瑞穂國は、是、吾が子孫の王たる可き地なり。宜しく爾皇孫、就きて治らせ。行矣、宝祚の隆えまさむこと、当に天壌と窮り無かるべし

豊葦原瑞穂国は私の子孫が王となって治めていく国である。瓊瓊杵尊、あなたがまず降りていって人々を幸せにしなさい。そうすれば天地と同じように窮まりなく栄えていくだろう。そういう祝福をお与えになるんですね。

そして最後に「斎庭稲穂(ゆにわのいなほ)の神勅」。

吾が高天原にきこしめす斎庭の穂を以て、亦吾が児に御せまつるべし

天照大御神様は高天原でお米をつくったり、蚕を飼ったり、衣食住の道を自ら実践なさっているわけですが、その稲を地上に植え、たくさんの人々を養いなさいと。

〈山谷〉
この三大神勅の通り、皇紀2681年を迎えるいまも日本という国が続いているわけですから、素晴らしいですよね。

〈後藤〉
瓊瓊杵尊様はその稲をお預かりして、三種の神器[八咫鏡、草薙剣(くさなぎのつるぎ)、八尺瓊勾玉(やさかにのまがたま)]を携えて天上を離れ、幾重にも重なる八重雲を押し分けて降臨していく。この時、地上の世界は真っ暗闇だったために、稲穂を抜いて籾種を四方にパァーッとお蒔きになったら、たちまち日月光り輝いて光明の世界が開けていったわけですね。

ちょうど昨年(2020年)は『日本書紀』編纂1300年でしたが、当時と同じように今年も日本のあちこちで田んぼに稲が実り、瓊瓊杵尊様がお蒔きになった籾種が品種改良を重ねながら、いまも国民の重要な食物として存在している。

まさに神代がいまも脈々と続いているわけです。


(本記事は月刊『致知』2022年1月号 特集「人生、一誠に帰す」から一部抜粋・編集したものです)

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◇後藤俊彦(ごとう・としひこ)
昭和20年宮崎県高千穂町生まれ。43年九州産業大学商学部卒業後、参議院議員秘書となる。國學院大學神道学専攻科並びに日本大学今泉研究所を卒業し、56年高千穂神社禰宜を経て宮司に就任。同神社に伝わる国指定重要無形民俗文化財「高千穂夜神楽」のヨーロッパ公演を二度にわたって実現。62年神道文化奨励賞受賞。神道政治連盟副会長、高千穂町観光協会会長などを歴任。令和3年神社本庁より神社界最高位の「長老」を授与される。著書に『神と神楽の森に生きる』(春秋社)など。

◇山谷えり子(やまたに・えりこ)
昭和25年東京都生まれ。48年聖心女子大学卒業後、新聞記者、テレビキャスター、コラムニストとして活躍。平成12年衆議院議員初当選。16年参議院議員(全国比例区)当選。第一次安倍内閣では総理大臣補佐官(教育再生担当)として60年ぶりの教育基本法改正に尽力。第二次・第三次安倍内閣では、国家公安委員会委員長、拉致問題担当大臣、海洋政策・領土問題担当大臣、国土強靱化担当大臣、内閣府特命担当大臣(防災)として入閣。著書に『新しい「日本の歩き方」』(扶桑社)など。

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