熊本大地震を予知した猫と、予知能力を失った現代人

2016(平成28)年、2度にわたって震度7を観測し、熊本県を中心に甚大な被害をもたらした熊本地震。発生から早くも6年が経ちました。カー用品大手イエローハットの創業者である鍵山秀三郎さんは、当時知人から聞いたという「地震を予知した猫」の話に関連して、現代人がいま取り戻すべき根本的な〝予知能力〟について語っています。
[写真:地震で大きく傷ついた熊本城]

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「1円でも安く」それでいいのか

〈鍵山〉
熊本に住む知人から、先般の熊本地震が発生する直前、抱いていた猫がいきなり腕から飛び出して逃げて行ったという話をお聞きしました。

おそらく、人間には察知できない微妙な音や振動から地震を予知したのでしょう。昔は人間にもそういう予知能力が備わっていたはずですが、世の中の文明が進化し便利になるにつれ、どんどん退化していきました。

それと関係して、いまの人は因果関係というものが分からなくなりました。よい行いにはよい結果がもたらされますが、悪いことをすれば当然その報いを受けることになります。

昔の人はそのことをよく弁(わきま)え、自分自身を戒(いまし)めていましたし、間違ったことをすると人から注意を受けたものです。

ところが、いまの人はそうした予知能力を失い、先々の結果を考えればとてもできないようなことを平気でやるようになりました。

先日、有名なコメンテーターが「私は1円でも安く売っている店に買いに行く」とテレビで自慢気に話していましたが、それによって製造している人の給料が下がり、日本経済停滞の遠因にもなることは予知できない浅はかな人間であると思いました。

一人ひとりが相手のことをもっと配慮するようになれば、より適切な行動をとれるようになり、世の中もよくなるはずです。

例えば私は、タクシーで近場に行く時に、「お釣りは結構ですから」と少しだけ多めに支払うのですが、そうすると、横柄で心ない客を乗せて沈んでいた運転手さんの気分も幾分かでもよくなります。

郵便物のテープは綺麗に剥(は)がし、書類のホチキスは外し、瓶についているプラスチックや金属の類いは取って洗ってから廃棄するのも、それらを処理する人の手間を少しでも省いて差し上げたいからです。

こうしたことを自慢気に綴ることは本意ではありませんし、私一人がそれをやったからといって、高が知れているでしょう。しかし、次の工程の負担を軽減するため、たとえ自分一人でも徹底しようと実践していることをご理解いただきたいのです。

もし日本中の人が同じことをすれば、テープやホチキスを取り除いたり、瓶を綺麗にしたりするための膨大な設備投資も不要になるでしょう。

しかしいまの日本は、煙草の吸い殻の入った一本の瓶を見逃さないために、すべての瓶を洗浄するという膨大な無駄なことが行われています。

自分の行いによってもたらされる結果を予知し、日々自覚を持って行動する人が増え、日本が少しでも穏やかで循環型の住みよい社会になることを願って止みません。


(本記事は月刊『致知』2016年8月号「巻頭の言葉」より一部を抜粋・編集したものです)

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◇鍵山秀三郎(かぎやま・ひでさぶろう)
昭和8年東京都生まれ。27年疎開先の岐阜県立東濃高等学校卒業。28年デトロイト商会入社。36年ローヤルを創業し社長に就任。平成9年社名をイエローハットに変更。10年同社相談役となり、22年退職。創業以来続けている掃除に多くの人が共鳴し、近年は掃除運動が国内外に広がっている。著書に『凡事徹底』『鍵山秀三郎 人生をひらく100の金言』『【DVD】日本人の美徳―この国を甦らせるために』(いずれも致知出版社)など多数。

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